マスクどこに置く? ファッション心を刺激するケース
収束が見えない新型コロナウイルス感染症への対策としてマスクの着用は欠かせない。しかし実際の生活では、食事で外したマスクの置き場所や、予備マスクの持ち運びに困ることが多い。そんなニーズの高まりを受け、抗菌性や薄さ、軽さ、ファッション性をうたった商品が相次いで登場した。新たなエチケット商品として贈答用にまで人気が広がりつつある。
抗菌性や軽さ、薄さを打ち出したのは一心堂本舗(東京・千代田)の「わびさびファイル」(20.5センチ×11.5センチ、税込み693円)。札入れのような形状で、抗菌機能を持たせたポリプロピレン素材を使用。マスクをサイドポケットなどに収納できる。ホルダーやスリットにはチケットや名刺、ICカード、ポイントカード、レシートなども差し込める。
家紋をアレンジした和風文様のほか、スヌーピーやドラえもん、ミッフィーなど人気キャラクターをあしらったデザインも取りそろえた。「マスクが汚れたり、ポケットやカバンに入れてしわくちゃになったりするのを防げる。持ち運びの手軽さも来店客に受けている」と渋谷ロフト(東京・渋谷)の担当者は話す。
香港のブランド「PAPERY」のマスクケースも人気だ。大きさは大型(21センチ×11センチ、1320円)と小型(11.5センチ×11センチ、1210円)の2種類。素材は紙とポリプロピレンでファッション性、アート性が高く、種類も豊富なので自分の好みに合ったこだわりのマスクケースを選ぶことができる。
マスクの両サイドのひもを固定するタイプやマスク同士を接触させないタイプなどがあり、ポップ調のカラフルな色彩、メッセージ性のある英語のロゴ、動植物や風景の図柄がよく売れているという。「デザインTシャツのような自由な感覚でおしゃれが楽しめる」(20代女性)
松屋銀座(東京・中央)では6月にマスク売り場を新設し、マスクケースの販売を始めた。売れ筋はレース生地を使った女性向けの「マチューア」製(1650円)やティッシュ入れと組み合わせた「ランバン」製(2200円)、ショルダーポーチの肩ひものような持ち手が付いた「マノダマナ」製(メッシュ素材2200円、ビニール素材1980円)など各ブランドのマスクケース。このほかポーチをマスクケースとして購入する客も目立っているという。
アルミ製のマスクケースも登場している。「ALART」のマスクケース(2枚用1650円、1枚用1320円)は厚さ0.8ミリのアルミ素材を使用。収納したマスクが形崩れしにくく、約100グラムと軽いのが特徴だ。「贈答用として購入する客が目立つ」と阪急うめだ本店(大阪市)の担当者は言う。
同商品の製造元の丸信金属工業(栃木県足利市)は鍋、やかんなどのアルミ製品や建材の金属加工メーカー。「新型コロナウイルスの感染拡大防止のために何かできることはないかと考え、アルミ加工のノウハウを生かしたマスクケースを4月に開発した」(坂本智美専務)
これまでマスクケースは「花粉が飛散する時期に限られた客層にしか売れなかった」(大手百貨店)。だがコロナ禍に見舞われた今年は様変わり。デザイン、機能などで新製品が特徴を競い合い、関連市場が急速に膨らんでいる。
(編集委員 小林明)
[2020年8月22日付日本経済新聞夕刊]
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