体が硬い人ほど血管も硬い

まず、ストレッチをやらずに、筋肉の柔軟性が低下したままでいると、筋肉にどんな現象が起きるかを解説します。

柔軟性が低い人の筋肉は、短く、緊張しています。筋肉が緊張した状態でいると、リラックスしているときよりも余計にエネルギーを使うため、疲れやすくなります。また、血液の循環も悪くなり、酸素や栄養素が欠乏し、老廃物がたまりやすくなり、痛みを感じやすくなります。

体に痛みを感じると、緊張がさらに強くなるので、疲れや痛みもさらに感じやすくなります。こうして、痛みと緊張のスパイラルから抜け出せなくなると、体を動かすことが苦痛となり、身体活動量も減っていきます。その結果、ますます筋肉の柔軟性が低下してしまうのです。

また、最近よく言われているのは、筋肉の柔軟性と病気との関係です。

柔軟性が高い人は、血管も柔らかく、動脈硬化のリスクも低いといえます。逆に柔軟性の低い人は血管も硬く、血圧も上がりやすいのです。

中高年では体の柔軟性が高いほど血管も柔らかい

成人526人を対象に血管の硬さと体の柔らかさを調べたところ、若年者では相関関係は見られなかったが、中年以降では体が硬いほど血管も硬いという結果に。(Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2009; 297: 1314-1318.)

ですから、「最近、体のあちこちに痛みを感じるようになった」「血圧が上がりやすい」という方は、実は筋肉の柔軟性が低下しているのかもしれません。

さらに、柔軟性の低下は、姿勢の悪さや、ケガの原因にもなります。

体の表側と背側、左側と右側など、相対する筋肉の柔軟性がアンバランスだと、姿勢が悪くなり、老けて見えてしまいます。筋肉は硬くなると短く収縮し、硬いほうへと体が引っ張られるので、前に引っ張られると猫背に、後ろに引っ張られると反り腰になる、という具合です。

これは、キャンプでテントを立てるときに、さまざまな方向からそれぞれ均等の力で引っ張られないと、支柱が真っすぐに立たず、テントの形がゆがんでしまうのと一緒ですね。

そして、柔軟性の不足によって関節の可動範囲が狭くなると、歩いているときに十分に脚を上げられなかったり、足首の関節の曲げ伸ばしが足りず、転倒しやすくなります。

また、柔軟性が不足した筋肉は硬く収縮しているため、強い力で一気に引き伸ばされると切れてしまいます。信号を急いで渡ろうとしたときや、子どもの運動会などで急にダッシュをしたときに、肉離れを起こす原因はここにあります。

以上のことから、筋肉の柔軟性が向上すると、健康的で安全に動ける体になっていくことも分かっていただけたかと思います。繰り返しになりますが、運動不足を感じている相談者の方が「まずはストレッチから始めてみよう」と行動を起こしたことは、非常に良い選択なのです。

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筋肉は「長くなるほど」柔軟性が増す
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