奈緒 製造中止のネガフィルム3本、撮るのは大切な人
「半分、青い。」や「あなたの番です」などのドラマで注目を集め、今年は映画『事故物件 恐い間取り』などで活躍する女優の奈緒さん。「限りあるものになってしまった」というお気に入りのものは、富士フイルムの高感度ネガフィルム「NATURA 1600」だ。
3本のフィルムが気付かせてくれたもの
「私は写真撮影が趣味で、フィルムカメラを普段から使っているんです。いろいろあるフィルムのなかで、ずっと好きで使っていたのが『NATURA 1600』。感度がいいので暗い場所でも鮮明な写真が撮れるし、なんだか懐かしい雰囲気が出るところが好きで。『写ルンです』に似た『シンプルユースフィルムカメラ』(ロモグラフィー)というカメラ(編集部注:フィルム交換が可能なレンズ付きフィルム)に入れて愛用していました」
「それが2年前に、急に販売中止になってしまって……。以前は何も考えずにたくさんシャッターを切っていたんですけど、限りあるものになってしまったので、大事に使わざるを得ない。残っている3本を、『どこで使おうかな』と考え続けています。
もちろん、ネットオークションなどで、探せば入手できるとは思うんですよ。私もこの3本がなくなったら探すでしょうし。でも、手に入らなくなって改めて『1枚1枚を大切に撮る』という初心に返れましたし、『もっとうまくなりたい』と思うようにもなりました。今は、もう少し上手になって、誰か大切な人を撮る時に使いたいなと思っています」
デジタルカメラも持っているという奈緒さん。最近では、来年公開予定の映画(『君は永遠にそいつらより若い』)で共演した女優・佐久間由衣さんを撮影したという。
「由衣ちゃんは同い年ということもあって、撮影現場でも撮っていましたし、プライベートでご飯に行く時も撮ったりしていて。ものすごく自然な笑顔を収められたんじゃないかな? 自分の撮った写真の中でも、最近の一番のお気に入りです。
普段は撮られることが多い仕事ですが、写真を撮るようになって、撮る人の気持ちが分かるようになりました。コミュニケーションするにも良くて。今、カメラのキタムラさんなどで頼むと、自分のフォトブックを作れるんですよ。それで仲の良いスタッフさんのお誕生日に写真集を作って贈ったり、ポストカードを作って、お手紙を書いたりもしています」
ホラー映画の現場でもらった「魔よけ」
8月28日公開の出演映画は、『リング』の中田秀夫監督によるホラー『事故物件 恐い間取り』。殺人事件や自殺などが起きた「いわく付き物件」に住み続ける芸人・松原タニシさんによるノンフィクションを映画化した作品だ。奈緒さんは、「事故物件住みます芸人」として奮闘する主人公・山野ヤマメ(亀梨和也)を応援するヒロイン・小坂梓を演じている。
「1軒目、2軒目、3軒目と、1本の映画でたくさんのお化けが出てきて、展開も速いので、脚本を読んだ時は本当に面白かったです。もちろん、怖さもあって。監督に最初にお会いした時、『これ、本当に実話ですか?』って聞いたくらいです」
「梓さんは、テレビ局で働くヘアメークアシスタント。クランクイン前には、ヘアメークさんにメークの仕方や道具の使い方を教えていただきました。ただ、梓さんはアシスタントなので、あまり上手になりすぎないことも意識しましたね。
難しかったのは、(芸人で安田大サーカスの)クロちゃんさんのメークを直すシーンです。クロちゃんさんは直す面積の広い方なので、どこから直していいのか分からなくて(笑)。パフで頭の方から直したんですけど、どうも間違っていたみたいで。アシスタント役ということで、大目に見ていただきました」
実は大のホラー映画好きという奈緒さん。撮影現場には原作者のタニシさんもよく訪れていたため、いろいろな話を聞いたという。
「原作にないエピソードを、たくさん聞かせていただきました。お化けか人間かを確かめるポーズを教えていただいたり、魔よけになるお札をくださったりもして。そのお札は、今も家に飾っています。あと『これを食べるといい』と豆をいただいたので、撮影中はずっと、豆を食べていました(笑)
ホラーの撮影ではよく怪奇現象が起こるといわれますけど、今回、私も一度だけ見ることができました。その時は本当に怖くてドキドキしたんですが、寝ぼけていたので、とりあえず寝て。翌朝、ようやくその世界を垣間見れた気がして、うれしさを噛みしめました」
大事にしたいものは「生活」
劇中には、事故物件を知ることができるサイトが登場する。奈緒さんは、現実にこのようなサイトを見たことがあるのだろうか。また物件を探す時、こだわることは?
「大島てるさんの『事故物件公示サイト』ですよね? いつも見ています(笑)。今の家は大丈夫ですけど、周りにはけっこうあるみたいなんですよ。よく母と散歩しながら、『ここは事故物件なんだよ』と教えて、嫌がられています。
物件探しでこだわりたいのは、キッチンからリビングまでに、何歩か歩ける距離があること。以前、広い部屋に引っ越した仲の良い監督さんが、こんなことを言っていたんです。『朝の忙しい時間に、キッチンでお茶を作ってリビングのテーブルに持っていって、座って飲む。そこに余裕を持てたら、その日1日が、ちょっと変わるんだよね』って。確かにせわしなく生活していた時期って、いつも朝、焦っていたんです。だから次は……そんなに広くなくていいんですけど、なるべく余裕の持てる間取りの部屋がいいなと思っています」
19年の初主演映画『ハルカの陶』で陶芸に挑む女性を演じた奈緒さん。引っ越しする時はまず、その部屋で使いたい器を用意するという。
「カーテンよりも先に食器を買うので、しばらくはカーテンもテーブルもなく、食器だけあるっていう生活をしていました(笑)。最近は自分で作ったりもしていて。ほとんどの食器を備前焼でそろえています。
今、欲しいものは花火です。この前、1年前にやり残した線香花火が出てきたんです。でもしけって使えないものもあったので、悔しくて。今年こそは線香花火を夏に全部やりきりたいです。
もう1つ、パン焼き器も欲しいですね。母と話してるんです。『うちで焼いた食パンが食べたいね』って。狙っているのは、CMにも出演させていただいている、象印さんのホームベーカリー。象印さんの炊飯器ですごくお米がおいしく炊けるので、きっとパンもおいしく焼けるんじゃないかと期待しています。私が一番大事にしているのは、生活です。ちゃんとした生活をしていたら、お芝居にもにじみ出ると信じているので、これからも自分の暮らしを大切にしていきたいです」
1995年生まれ、福岡県出身。福岡でモデルやリポーターとして活動後、上京。2016年より1年間、脚本家・野島伸司氏が監修する養成所で演技を学ぶ。18年、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」でヒロインの親友役に抜てきされ、19年のドラマ「あなたの番です」で飛躍。20年は1月期のドラマ「やめるときも、すこやかなるときも」でヒロインを演じ、7月期の「竜の道 二つの顔の復讐(ふくしゅう)者」に出演。映画『キスカム!~COME ON,KISS ME AGAIN!~』が9月4日、『みをつくし料理帖』が10月16日に公開予定
『事故物件 恐い間取り』
お笑いコンビ「ジョナサンズ」を解散し、ピン芸人となった山野ヤマメは、テレビ局のプロデューサーにむちゃぶりをされ、いわく付きの「事故物件」に移り住む。すると、初日から様々な怪奇現象に遭遇。「事故物件住みます芸人」としてブレークしていくが、ジョナサンズのファンで、メークアシスタントの小坂梓は、ヤマメの行く末を案じていた。そして想像を絶する恐怖が、ヤマメに襲いかかる……。監督・中田秀夫 / 脚本・ブラジリィー・アン・山田 / 原作・松原タニシ「事故物件怪談 恐い間取り」(二見書房刊) / 出演・亀梨和也、奈緒、瀬戸康史、江口のりこ、木下ほうか、MEGUMI、真魚、滝川英次、宇野祥平、高田純次、小手伸也、有野晋哉、浜口優 8月28日全国ロードショー
(文 泊貴洋、写真 藤本和史)
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