薬の口コミ評価で起死回生 社員の大量退職をばねにメドピア社長 石見陽氏(下)

メドピアの石見陽社長は「集合知で医療を再発明する」というビジョンを掲げる
メドピアの石見陽社長は「集合知で医療を再発明する」というビジョンを掲げる

現役医師の石見陽氏が率いるメドピアは、「医療×IT(情報技術)」のヘルステック企業だ。医師専用のコミュニティーサイト「MedPeer(メドピア)」や個人向けのヘルスケアサービスを手掛けてきた。石見氏は医師起業家の先駆け的存在だが、当人は「ビジネス経験ゼロでスタートし、経営者としては失敗の連続。随分遠回りしてきた」と振り返る。看板事業の「MedPeer」も最初の数年間は赤字続きだった。社員が大量退職する苦境を抜け出すきっかけになったのは、医師目線を生かしたサービスだった。

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石見氏が医師専門のコミュニティーサイトを立ち上げたのは2007年。「集合知で医療を再発明する」というビジョンを掲げ、医師同士が自由に情報共有できる空間をインターネット上につくろうと考えた。学会の会場にブースを設け、自ら5000人もの医師に語りかけるなど、地道な勧誘を続けた結果、会員数は増加。しかし、利用料が無料で、スポンサーがゼロでは、事業として成り立つはずもなく、赤字経営が続いた。そこに東日本大震災が追い打ちをかけた。

「被災地支援のために、医師である友人たちは続々と現地入りしていて、自分も行くべきなのかと悩みました。でも、僕はメドピアの事業を通じて貢献しようと決めて現地には行かなかった。だけど、結果的には100万円の寄付以外、ほぼ何もできなかったんです。自分の非力さに打ちのめされました。二十数人いたメンバーも次々に会社を去って行きました」

「辞めた仲間のなかには、震災を機に人生を考え直したという人もいましたが、多くは会社に絶望したのでしょう。ヒト・モノ・カネすべてを失い、どん底でした。でも、なぜそうなったのかと振り返ったとき、自分は本当の意味で仲間とコミュニケーションしていなかった、ミッションやビジョンもきちんと伝えていなかったと気づきました」

医師でありながら、なぜ起業したのか。それは医療訴訟件数が過去最高に達し、医療不信が高まるのをみて、医師と患者の間の溝を少しでも埋めたいと思ったからだ。ITを活用すれば、医師同士が病院や学会という枠を超えて、知恵や経験を集約・共有できる場がつくれるはず。そこで蓄積される「集合知」は必ずや医師の力になり、患者を救うことにつながる。たまった集合知で医療の世界全体を変革していく――。そうした創業の原点と目指すゴールを、改めてメンバーに愚直に伝えた。その思いに共感し、会社に残ってくれた7人と再スタートを切った。

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