イヌは褒め言葉をどう理解する? 脳の最新研究で判明

日経ナショナル ジオグラフィック社

トレーナーはハンガリー語で話し、熱っぽく褒めるようなイントネーションを用いたり、中立的なトーンを用いたりした。また、同じ言葉を同じイントネーションで何度も繰り返した。その間、fMRIでイヌの脳活動を測定した。

初めに言葉を聞かされたとき、イヌの脳では皮質下、大脳皮質ともに活動が活発になった。

しかし、褒める口調であれ中立的な口調であれ、同じイントネーションを何度も繰り返されると、その言葉を知っているかどうかに関わらず、皮質下における脳活動のレベルが急速に低下した。この事実は、イントネーションがイヌの脳のより古い部位で処理されていることを示唆する。

また、知っている言葉が繰り返されたときには、脳の新しい部位での活動レベルがゆっくりと低下した。しかし、知らない言葉を聞いた時には低下しなかった。知っている言葉に対するゆっくりとした活動レベルの低下は、脳の新しい部位が言葉の意味の処理に関わっていることを示唆する。

この研究は「イヌにとって、私たちが何を言うかが大事であるのと同じように、どのように言うかも重要であることを示しています」。英サセックス大学の動物行動学者、デビッド・レビー氏はメールでそう語った。

「それは、イヌと接していれば推察できることかもしれません。しかし、イヌが言葉を話さず、そのコミュニケーションシステム(吠え声)に意味とイントネーションとの明確な区別がないことを考えると、この結果はそれなりに驚くべきものなのです」

人の情動を読み取るべく進化

過去の研究から、鳴き鳥やイルカを含む多くの動物が、感情の手がかりを皮質下で、より複雑で学習を要する情報を大脳皮質で処理していることがわかっている。言葉を話すことができないにもかかわらず、である。たとえばシマウマは、他の草食動物の警戒声を「盗み聞き」して情動を読み取り、捕食者が近くにいるかどうかを知ることができる。

ヒトの言語はそうした手がかりから進化し、そこで使われるのと同じ神経系を用いて発話も進化してきたのかもしれないと、米カリフォルニア大学バークレー校の神経人類学者、テレンス・ディーコン氏は述べる。

1万年にわたりヒトに伴いながら進化してきたイヌたちは、そうした旧来の能力をヒトの情動を読み取るために使うようになったと、アンディクス氏は付け加える。

「イヌがなぜこうも私たちのパートナーとして優れているのか」――そして時には、なぜこうも愛らしい目で私たちを手玉に取ってしまうのか――「それを説明する手がかりになります」

(文 VIRGINIA MORELL、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年8月17日付]

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