プジョー208GTライン 顔に3本爪、フットワーク軽快

2020/9/20
「208GTライン」のフロントシートは、「ダイナミック」と呼ばれるスポーティーなデザインが採用されている。表皮はアルカンターラとテップレザーのコンビネーション

グレードの差異は装備の違い

ボディーサイズからして多くを期待する人は少ないだろうが、大人4人が実用的に過ごせるキャビンを備えるとはいっても、後席空間には、やはりさほどの余裕はないのがこのモデルのパッケージングの現実でもある。

前席下への足入れ性には優れる一方で、「ニースペースは最低限」というのが、後席へと腰を下ろして感じる率直な第一印象。そんなリアシートはサイズそのものも小さめ。2540mmというホイールベースは先代から変わっていないこともあり、従来型に対する空間上のアドバンテージは感じられない。

後席は少々窮屈な印象だが、ボディーサイズや2540mmというホイールベースを考慮すれば、妥当といえそうな居住空間だ。シートは前席と同じ表皮デザインでコーディネートされている。背もたれには60:40の分割可倒機構が備わる

一方ラゲッジスペースは、“床面積”はそれなりながら深さは予想と期待以上で、実際の使い勝手は悪くなさそう。ボード下にリペアキットではなくテンパータイヤを搭載するのは、サイドウオールへのダメージなどで一度でも“パンク立ち往生”の経験がある人にとっては、好感をもって迎えられるに違いないポイントだろう。

5人乗車の通常使用時における荷室容量は265リッター。後席背もたれを前方に倒すと、背もたれ部分には傾斜が生じ、荷室床面との間に段差もできる

今回テストドライブを行ったGTラインは、日本において3グレードが用意されるエンジン搭載車の中では最上位となるモデル。“GT”とはうたうものの、いわゆるスポーツサスペンションなどの設定はなく、前述の“3本爪”ヘッドライトやドアミラー死角をカバーするアクティブブラインドスポットモニター(ステアリングに反力を与えて車線逸脱を抑制する機能付き)、専用シートの採用などといった装備の充実が下位グレードとの主な違いとなる。

加えて下位グレードが195/55の16インチのシューズを履くのに対し、こちらは205/45の17インチを装着。こちらは、走行テイストへの影響が考えられるポイントだ。

ちなみに、オプションでパノラミックガラスルーフが装着可能なのはGTラインのみ。そして今回のテスト車は、このアイテムを装着していた。

プジョーらしいフットワーク

“ピュアテック”の愛称が与えられた1.2リッターのターボ付きエンジンは、相変わらず低中回転域でのトルクの太さと、3気筒ユニットであることを意識させないスムーズさがゴキゲンな仕上がり。まさに「ガソリンとディーゼルの良いとこどり」をしたかのようなテイストを備えたこの心臓が、昨今のプジョー(とシトロエン)車の魅力を高める大きな一因になっていることは疑いがない。

日本仕様に組み合わされるトランスミッションは、新作の8段ステップATのみ。100km/hクルージングは7速ギアでこなし、そこはちょっとばかりの“宝の持ち腐れ”感が否めないものの、「今後、高速道路の120km/h制限区間が拡充される」というニュースを聞くにつけ、日本では従来の6段ユニットからのなかなかタイムリーなアップデートであることも間違いない。

「208GTライン」の燃費値はWLTCモードが17.0km/リッター、JC08モードが19.5km/リッター。今回の試乗では346.0km走行し、満タン法で14.1km/リッターを記録した

そのかいもあって、動力性能は必要にして十二分。メカニカルなノイズはさほど気にならない一方で、相対的に目立ったのはロードノイズ。残念ながら、トータルでは決して「静か」とはいえないのがこのモデルの静粛性に対する実力でもある。

どんな場面でも持て余すことのないボディーサイズも味方につけて、緩急さまざまなコーナーのいずれをも“自然にクリアしていける”フットワークは、プジョー車の面目躍如たる印象。一時期のプジョー車はタイヤ内圧が妙に高く設定され、それゆえ“タイヤ任せ”で曲がっていくような感覚がなきにしもあらずだったが、このモデルではきちんと荷重移動をさせながら、しっかり路面を捉えていくテイストが感じられ好ましい。

ただし「プラットフォームを刷新」と聞いていたこともあってか、思いのほか気になってしまったのがボディーに入った振動のダンピングに少々時間がかかること。端的に言って、それゆえいわゆるボディーの剛性感は期待したほどには高くなかったし、路面状態によっては時にフロア振動が気になったりした場面もあった。このあたり、オプションのガラスルーフの有無やシューズが16インチであったりすると、またフィーリングが異なるのだろうか。

ともあれ、さまざまなADAS(先進運転支援システム)の望外な充実ぶりなどもあって、近年まれにみる商品力の高さが印象的なヨーロッパ発のコンパクトカーである。こうなれば当然、自らがその自信のほどを高らかにうたうピュアEVバージョンも大いに楽しみになってくる、2代目の208なのである。

(ライター 河村康彦)

■テスト車のデータ
プジョー208GTライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4095×1745×1445mm
ホイールベース:2540mm
車重:1170kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:100PS(74kW)/5500rpm
最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)205/45R17/(後)205/45R17(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:17.0km/リッター(WLTCモード)/19.5km/リッター(JC08モード)
価格:293万円/テスト車=338万4550円
オプション装備:パールペイント<エリクサー・レッド>(7万1500円)/パノラミックガラスサンルーフ(10万2000円) ※以下、販売店オプション ナビゲーションシステム(23万6500円)/ETC 2.0(4万4550円)

[webCG 2020年8月18日の記事を再構成]

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