検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

医療ケアの子どもを育てながら働く 24時間介助を時短

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

人工呼吸器やたんの吸引、胃ろうなどを要する「医療的ケア児」が近年、増えている。母親の多くはキャリアの継続を諦めざるを得ないのが現状だ。子の預け先がないなどの課題に対し、就労を支える取り組みも出てきた。

「起きたかな?」。豊田美和子さんは、東京都内の自宅で椅子にそっと近づいた。4歳の次女、理咲子さんは生まれつき脳に病気があり、24時間つきっきりでたんの吸引などの介助が必要だ。複数の児童発達支援施設に通わせつつ夫やヘルパーと交代で見守り、自身は看護師として働く。

2002年の大学卒業後、出版社に就職。長男、長女が誕生しても仕事は続けてきた。次女に病気があっても同様に考えていたが「医療的ケアがある子の育児と仕事の両立の難しさにがくぜんとした」。

地元で受け入れ可能な保育園はなく、施設には毎日は通えない。それでも働くことを諦めたくなかった。初産後、毎日自殺を考えたという「育児ノイローゼ」から立ち直れたのも仕事があったからだ。「社会に自分の役割があるのは大きいと感じている」。大学で看護を学び直し、今春から訪問看護のケアプロ(東京・中野)で時短勤務している。医療的ケア児を育てながらの共働きは「夫婦の分担、それぞれの会社の理解、外部サービスの活用が欠かせない」。

夫で会社員の康浩さんは時差通勤と時短勤務を使い、週1回は在宅で働く。「ウェブで完結する仕事が多く、不便は感じない」。勤め先のゼンリンは18年にダイバーシティ推進部を設置。19年にテレワークなどを導入した。

医療の進歩で助かる命が増え、医療的ケア児も多くなった。厚生労働省の調査では在宅の医療的ケア児(0~19歳)は18年に約2万人と、10年間で1.9倍に増加。全国医療的ケア児者支援協議会の森下倫朗さんは「保育や学校の受け皿が足りない」と指摘する。対応できる看護師の不在などが理由で保育園は受け入れない。児童発達支援施設など福祉サービスも不十分だ。

保育サービスのNPO法人フローレンス(東京・千代田)によると医療的ケア児を含む障害児の母親の常勤雇用率は5%。「社会人として築いたものを捨て、つきっきりになるのが実情」(森下さん)

20年1月開設の東京都港区立の元麻布保育園は医療的ケア児や障害児の専用クラスがある。加苅則子園長は「子を育てる親が働きたいという思いは実現されるべきだ。仕事は経済的な理由のためだけではなく、自己実現や社会貢献のためにもある」という。

脳性まひの3歳児を通わせる40代女性は産後に育休と介護休業を取得後、休職した。その後入園で復職がかない、従来通り、建築資材販売会社での経理を在宅でこなす。「社長や同僚も復帰を待ってくれていた。しっかり働きたい」。「表情が変わった」など子の成長ぶりを保育者から聞けるのも集団保育の利点だ。

「女性も普通に働く時代なのに理解は不十分」。医療的ケア児と家族を支える団体、ウイングスの本郷朋博代表は指摘する。3年前まで都内の中学で理科教師をしていた40代女性は休職が認められず、校長に退職を迫られ辞職した。「本当は続けたかった。違う管理職だったら分かってもらえたと思う」。いつかまた働きたいという。

医療的ケア児は入園・入学ができても体調の変化による呼び出しが多いほか、送迎などの負担も大きい。育児・介護休業法改正で21年1月からは子の看護休暇を1日の労働時間にかかわらず時間単位で取得できるようになるが、勤務時間の途中で取得できる「中抜け」も要るだろう。柔軟に働けるきめ細かな選択肢を、日本企業全体で増やしていくことが求められる。

「息子は成長」法整備進める 衆院議員・野田聖子氏に聞く

自民党の野田聖子衆院議員も医療的ケア児を育てる母親の一人だ。これまでの奮闘や制度整備について聞いた。

――9年前に男児を出産した。

「息子には食道閉鎖症や臍(さい)帯ヘルニアなど、覚えきれないくらい病気があった。生後から2年ほど病院にいた後、自宅に戻った。人工呼吸器をつけ、多い時は数十秒に一度、たんを吸引していた。1日に6、7回胃ろうから食事をあげないといけない。私は自民党の総務会長になった頃で、休みなく働いていた。日中は夫が見て夜は私が担当。ほぼ徹夜だった。さすがにこたえて、日中に意識が飛び、首相官邸の階段から転んで大けがをしたこともある」

――医療的ケア児の育児は母親に偏りがちだ。

「夫婦のうち片方だけ頑張っても無理。共働きの場合、夫婦双方の会社が理解してほしい。出社して長時間働いたから成果を上げられるわけではないと、優秀な経営者ほど気づいている。制約があっても能力のある女性を雇用する方がメリットはあるはずだ」

「母親が過度に責任を感じないことも大事。人の手を借りて育てつつ、得意な分野で働けば気持ちを切り替えられる。プラスの循環が生まれる」

――医療的ケア児と家族への支援は足りない。

「寝たきりを覚悟していた息子は自分で歩けるまで成長し、人工呼吸器は夜間だけになった。最近は好きな人ができて『結婚する』と言うほど。特別支援学級で刺激を受けているからだと思う」

「全ての医療的ケア児が保育園などに通えるようにし、働く親の就労確保も踏まえた法律を超党派の議員立法でつくる。早ければ、次の国会に提出するつもりだ。医療的ケア児は少子化の中でも増えていく可能性が高い。法整備に力を入れる」

働きやすい社会築く好機

「職場で『居てくれて助かる』と言われてうれしかった」。取材で会った女性に仕事について聞くと、笑顔が返ってきた。家庭以外で誰かに必要とされることは、育児とは違う生きがいをもたらす。茨城県古河市の重度障害児施設Burano(ブラーノ)は医療的ケア児らを預かりつつ、テープ起こしなどの仕事を受託、親らに仲介する。コワーキングスペースもある。「仕事を通じて人とつながる喜びを得てもらえれば」と秋山政明理事は言う。

医療的ケア児の育児と仕事の両立は大変だ。それでも意欲のある人が可能な範囲で働くことは社会にとって利点は大きい。コロナ禍で労働の常識が揺らいでいる今、誰にとっても働きやすい社会を築く好機でもある。

(関優子)

[日本経済新聞朝刊2020年8月24日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
画面例: 日経電子版 紙面ビューアのハイライト機能
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_