ハワード大学の試みはこうした格差を縮める貴重な一歩だ。こうした動きが全米の他の大学にも波及すれば、実業界における黒人の地位向上に貢献することになると期待がかかる。

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黒人大学でも最高峰といわれるハワード大学のウェイン・フレデリック学長に黒人大学の米教育システムにおける役割などについて聞いた。

――アマゾン、グーグルに加え、他の業界との提携も計画していますか。

ハワード大学のウェイン・フレデリック学長

「(クレジットカード大手)マスターカードに当校の教授を送り込み、学生のインターンシップ・プログラムを構築中だ。コロナの影響で完全な対面研修は制限されるが、校外での研修を実施する予定だ」

――経営大学院の評価も高いですね。

「投資銀行などの金融機関に学生の優秀さを認識してもらえるよう我が校の認知度を高める努力をしていきたい。また、企業との提携によるプログラムを通じて、学生に起業家精神を育んでもらうことも期待している」

――実業界ではESG(環境・社会・統治)の取り組み向上の一環で、黒人などのマイノリティー雇用促進を表明する会社が増えています。

「称賛に値するが、ただ数を増やすだけでなく、こうしたマイノリティー人材の能力の高さに着目してほしい。彼らを採用することが企業への利益につながるということだ。黒人を採用することで企業の業績が向上するという点に着目してほしい」

――ジョージ・フロイド氏の暴行死をきっかけにブラック・ライブズ・マター運動が活発になりました。黒人大学としてこの運動にどう貢献していきますか。

「社会的正義は当校のDNAだ。この国の黒人の社会的正義を守るために活動してきた長い歴史がある。我々が大学として貢献できることは、学生を教育し、社会に出て法律を変えることだ。この使命をこれからも遂行していく」

――黒人の人種差別や社会格差がなくなったら黒人大学の存在意義もなくなるのでしょうか。

「黒人差別はそれほど簡単にはなくならない。高等教育を受ける黒人は人口全体のわずか3%しかいない。しかし、22%が何らかの学位を所得しており、我々大学はそうした学位を取得した学生を企業に送り出すことで、雇用の現場での人種の多様化のために貢献する必要がある。この努力の必要性はそれほど簡単にはなくならない。黒人大学の存在意義はこれからもきわめて重要であり続けるといいたい」

(ニューヨーク=伴百江)

黒人大学 歴史的黒人大学(Historically Black College & University――HBCU)と呼ばれ、1830年代に奴隷制をしいた南部の州を中心に、黒人の教育水準向上を狙いに地域の教会などが設立した。米政府は1965年に改正された高等教育法で、それ以前に創立された黒人大学を正式にHBCUとして認可している。現在、全米に102校存在する。
 ハワード大学は1867年創立で、学生数約9000人のうち79%が黒人。卒業生には、11月の米大統領選で民主党の候補指名を固めたバイデン前副大統領から副大統領候補に指名されたカマラ・ハリス上院議員、元ニューヨーク市長のデビッド・ディンキンズ氏らがいる。

[日本経済新聞朝刊 2020年8月19日付]

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