2020/8/28

一方、政府は「全世代型社会保障改革」を掲げ、高年齢者雇用安定法の一部を改正し、2021年4月から70歳までの高年齢者就業確保措置を努力義務とし、就業支援を打ち出しています。この法改正は、意欲ある人が長く働ける環境を整備することが狙いにありますが、企業においては人件費増加につながる懸念もあります。また、働き方改革の目玉である「同一労働同一賃金」もジョブ型雇用の考えが基本にあり、従来の雇用慣行の見直しは待ったなしと言えます。

ジョブ型雇用実現には人材の流動性も課題に

ジョブ型雇用への転換は、必然の流れとも言えますし、グローバル企業ではなおさらそうだといえるでしょう。欧米ではジョブ型雇用が主流で、業種や国境を超えて優秀なグローバル人材を採用するには、これまでの雇用の在り方を見直さざるを得ません。

ただし、ジョブ型雇用には懸念点もあります。

職務を明確にするためにジョブディスクリプションを作成して評価基準を明らかにすることは極めて有用ですが、社内でしか通用しないものだと外部からの人材を引き込みにくくなります。

そもそも、企業を超えた評価基準がないため、同じ職務でもA社とB社とでは大きく違ってしまう……ということになりかねません。日本が真にジョブ型雇用に移行するなら、企業を超えて職務に応じた評価基準を設けることが必要になるでしょう。これには相当の時間もかかりますし、職務も一定のものに限られてくるかもしれません。

また、終身雇用が長らく続いてきた日本では、人材の流動性が活発ではありませんでした。ジョブ型雇用がうまく機能するには、企業間の人材移動は欠かせません。転職が不利にならない労働市場の整備が重要となります。

さらに日本の場合、解雇要件を厳しく限定した判例法理が確立している点も、人材の流動性を妨げている一因といえます。たとえば、企業の経営戦略に合わせて、ある事業分野から撤退することで、これまで必要とされていた職務が不要となる、というケースなどは十分に考えられます。この場合、別の企業で求められているとしても、本人に転職の意思がなければ、企業は解雇することも難しく、社内で別の職務をあてがうために人事異動を……ということになれば、職務ごとの専門性は育ちません。

このように、ジョブ型雇用が日本で普及するには、企業ごとの人事システムを見直すことはもちろん、社会全体のインフラと労働法制の見直しも重要なファクターになると考えます。

すべて一律に、ジョブ型雇用の導入が望ましいというわけでもないでしょう。中小企業の場合、人員が限られていることもあり、職務を細かく限定するよりも、複数の仕事をこなせる多能工的な人材を求める場合も少なくありません。

職務がうまく切り出せるなら、その分野に強みを持つ個人事業主やフリーランスに任せることもできるでしょう。健康機器メーカーのタニタでは、希望する社員を個人事業主として業務委託契約に切り替える制度を採り入れています。

あるいは、副業・兼業という形で特定の職務を外部人材から採用する動きもあります。たとえば、ヤフーは「ギグパートナー」と称して、様々な職務において、スキルや経験を明確にして人材を公募しています。

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