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秋冬ファッションはクラシック回帰 質感でアレンジも

宮田理江のおしゃれレッスン

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NIKKEI STYLE

2020-21年秋冬シーズンのファッショントレンドは、「クラシック回帰」の流れが強まりそうです。心配事の多い世相を受けて、正統派レディーの装いが復活。そこに身を守る「プロテクション」意識や現代的な使い勝手、多様性のニュアンスを盛り込むのが新コーディネートのポイントです。愛着の持てる服を長く大事に着る傾向が強まり、「トレンドに流されないというトレンド」が台頭するのも新シーズンの傾向です。

古典的な装いに、ボリュームやひねりをプラス

クラシック回帰の傾向が強まるのは、2020年秋冬で最大級の変化です。ただし、単に古風な装いをリバイバルさせるのではなく、ボリュームや質感などで現代的なアレンジを交じり合わせるのが目新しい工夫。懐かしげなムードとモダンなひねりが同居する「違和感スタイリング」が見どころになります。

「Michael Kors Collection(マイケル・コース コレクション)」は、肩を覆うケープを思わせるような、たっぷりした量感のニットセーター姿を披露。「きちんと感」を帯びたプリーツスカートは、シルバーメタリックで彩り、まばゆい光輝をまとわせました。ロングブーツが復活するのも、新シーズンの目立った動き。全体をグレートーンでまとめて、穏やかなリラックス感を醸し出しています。

英国の伝統的なチェック柄は、正統派イメージを寄り添わせます。クラシックのトレンドが盛り上がるのを受けて、異なる大きさのチェック柄同士で合わせる提案です。アイテムの面では、上半身を包み込むマント系のアウターがカムバック。風になびく優美なシルエットがレディー気分を呼び込みます。短冊状のフリンジ(房かざり)の裾が揺れるスカートで動きを加えれば、いっそう軽やかに仕上がります。

(画像協力)
マイケル・コース ジャパン  https://www.michaelkors.jp/

レディー気分に手仕事ディテールと異素材感をミックス

「ブルジョワシック」と呼ばれる、落ち着いた淑女風でありながら、適度な華やぎを宿した新顔テイストが秋冬ルックを盛り上げます。レディー感と遊び心をグッドバランスで並び立たせるところがポイントです。まるで春夏のような素材を差し込んだり、異なるモチーフ(柄)を組み合わせたりといった工夫が着こなしの鮮度を高めてくれます。

「秋冬=厚手」という常識をひっくり返すスタイリングが「Tory Burch(トリー バーチ)」から登場。オーガンディ素材のボウタイブラウスは胸元に配した特大リボンが気品を薫らせます。その上から重ねたのは、丁寧な手仕事技を感じさせるニットのベスト。風合いのずれ具合が味わい深い着映えに導きました。プリーツスカートには柄入りのロングブーツを引き合わせ、ボトムスでもテイストミックスを印象づけています。

中世の欧州貴族を連想させる、立ち襟のブラウスもトレンドピースに浮上しています。ハンドクラフト刺しゅうのニットを重ねることによって、異素材ミックスのレイヤードを組み上げました。さらに、ニットの刺しゅう柄と、スカートの花柄をマッチング。ムードの異なるモチーフ同士を引き合わせた「柄on柄」のコーデで趣を深くしています。

(画像協力)
トリー バーチ  https://www.toryburch.jp/

若々しさ×グラマラス気分でエイジレスに

クラシックな雰囲気が軸になる一方で、若い世代を意識した、フレッシュなテイストも打ち出されています。品格を保ったあでやかさや、トラッド寄りのプレッピー風味など、格上感を漂わせる装いです。若々しさとグラマラス気分を兼ね備えたスタイリングが新鮮に映ります。

「COACH(コーチ)」のレザーで仕立てた、真っ赤なキュロットには優雅さとアクティブ感が同居。足元はソックスとスニーカーで軽やかに見せています。シアリング素材のコートを羽織って、ゴージャスな雰囲気を上乗せ。風合いの異なるファーピースが肩や胸にあしらわれ、さらに華やぎを加えました。足さばきが楽でありながらも、淑女ムードが醸し出され、多面的な現代の女性像を映し出すかのようです。

ストライプ(縦じま)柄の太さや配色を上下で変えて、弾むようなリズムを帯びた装いに整えました。縦じまのおかげで、全体にすっきり見えていながらも、異なるムードの交差が気分を盛り上げます。ルーズソックスにはレインボーカラーのローファー靴を組み合わせて、スクールガール風の足元に。多様性への共感を示すマルチカラーは、ダークに沈みがちな秋冬ルックに絶好の差し色です。

(画像協力)
コーチ  https://www.coach.com

縦長シルエットを意識して、ジェンダーレスなムードに

性別にとらわれない「ジェンダーレス」は、さらに勢いが増しそうです。伝統的な紳士スーツに代表されるメンズ服を借り受けたかのような着方から進んで、もっとこなれた装いが支持を広げる気配。ムードはクールでありつつ、どこかセンシュアル(官能的)に。シルエットはシャープでありながらも、たおやかさを宿すといったダブルミーニングの重層的スタイリングが新しい着映えに見せてくれます。

冷ややかな質感のレザーは次のトレンド素材に位置づけられています。「rag & bone(ラグ& ボーン)」が提案するのは、不安が高まる時代にふさわしい「強め」の装い。レザーコートに象徴される、身を守ってくれそうな「タフアウター」をまとうのも、今の時代感を映し出しています。ボトムスはインディゴカラーの濃いデニムパンツで合わせて、ボーイッシュな風情にまとめています。

体の線を拾いすぎないニット仕立ての服は、中性的な雰囲気を引き出す点で、ジェンダーレスのトレンドになじみます。膝まで届く、ニットのワンピースはジョガーパンツに重ねて、縦長シルエットを組み立てました。パンツの裾はブーツに収めて、さらにスレンダーな見え具合に。首元のスカーフと片耳のイヤリングが揺れて、顔周りにフェミニンな空気が濃くなりました。

(画像協力)
ラグ & ボーン  https://rag-bone.co.jp/

2020-21年秋冬の装いは、クラシックを軸に、華やぎやジェンダーレスなどを混ぜ込むテイストミックスが盛り上がりそうです。気分の晴れない状況が続いていますが、ちょっとした特別感や遊び心を加えることによって、自分らしいアレンジが可能になり、気持ちにもメリハリが出てきます。やや古風でありつつ、新しさも感じさせる「新旧ミックス」の着こなしは、おしゃれの楽しさを再発見するきっかけにもなりそうです。

宮田理江
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートからトレンド情報、スタイリング指南などを発信。バイヤー、プレスなど業界経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした解説が好評。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に「おしゃれの近道」「もっとおしゃれの近道」(ともに、学研パブリッシング)がある。

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※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

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