日経エンタテインメント!

今後、LDHが目指すエンタテインメントを尋ねた。

「今回のコロナ禍でリアルなライブの大切さをめちゃくちゃ感じているところです。アーティストもファンの皆さんもそれは同じだと思います。ただ、その大切さを感じながらも、時代に合ったデジタルやバーチャルのエンタテインメントを引き続きスピード感を持って広げていかないといけない、そんな時代になったんだなと改めて感じています。

例えば、キッズに視野を向けたエンタテインメントの幅を広げていきたいと思っています。これまでもNHK Eテレの『Eダンスアカデミー』やガールズ・パフォーマンスグループのGirls2(ガールズガールズ)を展開しています。今後はLDH流の子ども向けコンテンツも様々な分野で創造したいですし、今のLDHアーティストのキッズバージョンを作っても面白いかもしれない。

LDHではライブ会場に託児所を設けているんですが、今は断トツにEXILEのライブでの利用率が高く、家族三世代でいらっしゃるケースもあります。次いで、三代目J SOUL BROTHERS、GENERATIONSとお子さん連れの方々が増えてきていますので、そういう意味でも、家族で楽しめるエンタテインメントの創造ができるこのキッズプロジェクトは、LDHにとって大きな意味を持つと思います。また、お子さんが小さいうちはなかなかライブにも来られないと思いますが、LIVE×ONLINEもそこをリカバリーできたらうれしいですし、LDHから発信するエンタテインメントでファンの皆さんとずっとつながることができたら、それは僕らの理想でもあります。引き続き全てのエンタテインメントがつながるように、新しい発想でLDHのエンタテインメントを盛り上げていきたいと思います」

TRIBEの未来に向けて

EXILEのデビューから19年、LDH設立からは17年が過ぎた。HIROはそれぞれのメンバーやLDHの今後について考える機会が増えたと話す。今回のコロナの経験を通じて、その思いはより切実なものとなったようだ。

「来年は東日本大震災から10年目。その間に国内の自然災害や世界的に見ればMERS(中東呼吸器症候群)などのウイルスの流行もあり、この10年でも様々なことが起きています。

これからの未来に何が起こるのか。僕より若い世代には、当たり前だと思っていたことが壊れるような出来事がもっといっぱい起こるんじゃないか。そのときに、エンタテインメントがどういう存在でいられるのか、果たして生活していけるのか……。今回のコロナ禍で、今まで感じなかったような大きな危機感を感じるようになりました。そして、このタイミングは本当の意味で変革の時期なのかなと思います。その中でLDHという組織の改革も5年後、10年後を見据えて行動に移すべきで、エンタテインメント企業として何事にも臨機応変に対応できる体制を整えておかなくては生き残れない時代になったんだと感じています。たとえコロナが収束したとしても、これは永遠に考え続けなくてはいけないテーマなんだろうなと。

組織の変革で言えば、LDH所属のみんなの中でも自身の成長と共に夢も進化していくので、その期待に応えていけるようにLDH自体も進化させていきたいですし、メンバーや働くスタッフの皆さんの成長に合わせてLDHという組織を臨機応変に強い組織にしていきたいと思います。僕自身の意識も自分の成長と共に変わりました。

かつては、EXILEを継承する“TRIBE”を増やしていくこと、その先に僕らが存続できる何かがあると考えていましたが、今はそれが具体的に見えてきている時期。これからは、成長したメンバーが僕のようにプロジェクトを立ち上げて運営したり、リーダーとしてビジネスにしたりと……。もちろんずっと表現者として突き詰めていくメンバーもいると思いますが、裏方として夢を追いかけていくメンバーも出てくると思いますので、そのメンバーの成長に応えられる僕でいたいですし、自分の分身のようなメンバーには、どんどん自分の場所を継承していきたいとも思います。

また、所属だけでなくLDHという組織自体も大きくなり、社員の構成も大きなピラミッド状に築かれていますが、このままでは顔の見えにくい組織になってしまいます。縦型の組織割を解体して“EXILEルーム”“三代目ルーム”など、ルーム制を敷き、ルームリーダーが話し、リーダーとなるスタッフがルームをまとめていく新しいマネジメントスタイルを確立していきたいと思います。ルーム制の中で、メンバーと若い優秀なスタッフが切磋琢磨し、一緒になって成長していくような組織体系です。5年後、10年後は、今のLDHとは違う感じに変わっていくかもしれない。いずれにせよ、常に新しい何かを生み出し続け、LDHをずっと輝かせていきたいなという思いはあります。僕自身も10年後は60歳。みんなに『お前いらないよ』と言われるくらいになるといいですね(笑)」

(ライター 横田直子)

[日経エンタテインメント! 2020年8月号の記事を再構成]

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