業務の引き継ぎに伴う棚卸しの機会が増え、無駄なフローが見直されたり、効率的な業務配分が進んだという

育休は業務棚卸しのいい機会になる

仲井 その点では当社は「入社後10年は職種転換をしない」という原則でやってきました。一時的な離職率は上がっても、中長期のキャリア形成を重視しての方針です。働き方と休み方の課題は男女で異なる部分もありますが、だからといって「女性は事務職へ回して」と繰り返すのは「逃げ」にしかならないと考えました。結果として、06年には店長経験のある女性社員は2人のみでしたが、現在は19人に増えました。

白河 女性の活躍に向けての施策はすでにやってきていた。その上で、次の一手が男性育休だったというわけですね。子育て世代はマネジャー世代とも重なります。上司が育休を取ることで、その下で働く女性たちもより休みを取りやすくなる効果もあったのでは。

仲井 確かにそういう声はあがっているようです。加えて、業務の引き継ぎに伴う棚卸しの機会が増えたことで、無駄なフローが見直されたり、効率的な業務配分が進んだりしたと報告を受けています。

白河 なるほど。働き方の効率化とダイバーシティーが同時に進んでいるのですね。上司にダイバーシティー研修を何度もするよりも、育休をとってもらうほうが早いかもしれないですね。行動を変えることで、意識も変わっていく。女性だけでなくみんなが働きやすくなっているのでしょうね。2万5000人いる組織の中で、影響力のある人たちが行動を変容する効果の大きさを感じます。

仲井 褒めていただけると、自信が出てきますね。

白河 19年に開催された「イクメンフォーラム」もとても興味深かったです。9月19日を「育休を考える日」の記念日に制定して、日本全国の育休実態を調査した「イクメン白書」を発表されたんですよね。特に都道府県別のランキングはインパクト大でした。

仲井 社会的にもインパクトのある発信をしようと、社員の発案で調査までやったんですよ。ランキングのワースト3位くらいの都道府県からは電話がかかってきましたが(笑)。今後も定期的に独自調査を行って、発表していくつもりです。

白河 政府が同じことをしようとすると、どうしても平等性の原理から北海道から順の掲載になってしまうそうなので、民間ならではの発信だと感動しました。さらにスウェーデン大使館主催のフォーラムにも登壇されていましたね。日本企業としてこうした場に呼ばれることも、企業価値につながりますね。

仲井 当社の取り組みを知った駐日大使がSNSで「スウェーデンの真似(まね)をして男性育休を始めた積水ハウス、サンキュー」といった投稿をしてくださって、そのご縁から発展しました。「師匠」であるスウェーデンに呼ばれて光栄でした。

目指すのは社員の自律的な働き方

白河 私も毎年参加する定例フォーラムなのですが、あの場に日本企業のトップが参加するのはとても珍しいこと。企業として存在感を示す場を広げられていますね。ESG(環境・社会・企業統治)のSを強化することで、機関投資家からの評価も上がるのではと思います。

仲井 ESGもですが、私が目指しているのは、社員の自律的な働き方、キャリアの構築なんです。

白河 どこの企業も課題とされているところですね。他企業の経営者からアドバイスを請われることもあるのではないですか。

仲井 「こんなことをやっていてね」と会食の席で話したら、「うちもやろう」と決めた経営者は何人かいますよ。

白河 すごいですね。社長自ら啓発活動をするのが実は一番速いのです。

仲井 とはいえ、うちのやり方がベストなわけではなく、企業規模や事業形態によって最適な方法は異なると思っています。もしかしたら1カ月間の育休よりも「毎日午後3時に帰宅できる制度」や「週休3日制度」のほうがフィットする会社もあるかもしれない。それぞれに合うパターンを探ることが重要でしょう。

白河 今後、男性育休制度導入を検討中の会社に言いたいことは?

仲井 やってみたら、それほどのデメリットはないですよ、ということですね。とりあえずやってみて、うまくいかなかったら修正すればいい。それくらいの感覚で始めるといいと思います。

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