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男性育休導入で社内風土変わった 積水ハウス仲井社長

仲井嘉浩積水ハウス社長(下)

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NIKKEI STYLE

積水ハウスは男性社員が1カ月以上の育児休業を取得する「イクメン休業」制度を導入した。前回「男性育休1カ月にデメリットなし 積水ハウス仲井社長」で、社員だけでなく顧客からも好意的な反応が得られたことを聞いた。仲井嘉浩社長は今後、有休の取得方法などを見直し、より男性も女性も働きやすい環境を目指していくという。

次は有休取得にメスを入れたい

白河桃子さん(以下敬称略) 「イクメン休業」は採用にも良い影響があるのではないでしょうか。

仲井嘉浩社長(以下敬称略) 2月にインターンシップに参加した学生の方々に制度説明をする機会があったのですが、そこでも活発に質問が出たと聞いています。

白河 男性だけでなく、女子学生の志望者も増えそうですね。

仲井 実際の採用の影響が可視化されるのはこれからですが、おそらく男女共にポジティブに作用しているのではないかと思います。すでに働いている若手社員からも感謝されることが増えましたね。新型コロナウイルスの問題が起きる前、東北や九州の現場を回っていると、結構声をかけられたんですよ。会議室に入った瞬間に若い社員が寄ってきて「社長、ありがとうございました」と言われました。30代には人気が出たんじゃないかな(笑)。実際、アンケート結果でも「社内の風土が変わった」と回答した割合が7割近くになったそうですから。

白河 風土改革として大きな影響力があったのですね! 今後の課題として考えていることはありますか。

仲井 次は有休取得について、もう少しメスを入れられないかなと考えています。国の制度で年間5日の消化が義務化されましたが、実際の取得状況を見ていると、5日まとめて取って週末とくっつけたら9連休になるはずなのに、どうもそういう取り方にはなっていない。1日や2日ずつ、分散して取っているケースがほとんどのようで。どうせならドンと休んで旅行をして英気を養ってもらいたいのですが、休み方が上手じゃない社員がまだまだ多い。イクメン休業によって、週や月の単位で休むことに慣れていってくれたら、有休も同じように取ってほしいと思っています。

白河 どうしても「休むのは悪」というイメージが根強いのでしょうか。

仲井 そうですね。でも、私の実感としては、優秀な営業マンや建築家は休む時はしっかり休んでリフレッシュするタイプが多いですよ。要は、働き方と休み方の自律の問題。どう働き、どう休むかを自分自身で考え、キャリアをデザインしていく。これがダイバーシティー(多様性)の基盤になると思っているんです。まずは私がドーンと休もうかなぁと(笑)。

白河 「休むこと」は社員の自律的な働き方を獲得する後押しになりそうですね。しっかり休んで感性を磨くことも、いい仕事には不可欠です。

仲井 実は「ワークライフバランス」という言葉はどうもしっくりこないんです。ワークとライフは比率で配分するようなものではなくて、よく働き、よく遊び、ワークもライフも同時にエネルギーを上げていくようなイメージを私は持っています。「ワークとライフのエネルギーバランス」を高めることには大賛成です。

白河 おっしゃるとおりですね。現状として御社の社員がなかなか長期で休まないということは、いい意味で仕事熱心な社員が多いのでしょうね。しかしながら、持続可能なダイバーシティーにはマイナスです。特に休まない風土では女性のキャリアの形成は難しいです。私が住宅業界の講演に伺ったとき、人事担当者から「20代の女性営業職は成績トップを取るほど優秀だが、出産を経ると他部署に移ってしまう」という悩みを聞きました。企業にとっても大きな損失ですよね。

育休は業務棚卸しのいい機会になる

仲井 その点では当社は「入社後10年は職種転換をしない」という原則でやってきました。一時的な離職率は上がっても、中長期のキャリア形成を重視しての方針です。働き方と休み方の課題は男女で異なる部分もありますが、だからといって「女性は事務職へ回して」と繰り返すのは「逃げ」にしかならないと考えました。結果として、06年には店長経験のある女性社員は2人のみでしたが、現在は19人に増えました。

白河 女性の活躍に向けての施策はすでにやってきていた。その上で、次の一手が男性育休だったというわけですね。子育て世代はマネジャー世代とも重なります。上司が育休を取ることで、その下で働く女性たちもより休みを取りやすくなる効果もあったのでは。

仲井 確かにそういう声はあがっているようです。加えて、業務の引き継ぎに伴う棚卸しの機会が増えたことで、無駄なフローが見直されたり、効率的な業務配分が進んだりしたと報告を受けています。

白河 なるほど。働き方の効率化とダイバーシティーが同時に進んでいるのですね。上司にダイバーシティー研修を何度もするよりも、育休をとってもらうほうが早いかもしれないですね。行動を変えることで、意識も変わっていく。女性だけでなくみんなが働きやすくなっているのでしょうね。2万5000人いる組織の中で、影響力のある人たちが行動を変容する効果の大きさを感じます。

仲井 褒めていただけると、自信が出てきますね。

白河 19年に開催された「イクメンフォーラム」もとても興味深かったです。9月19日を「育休を考える日」の記念日に制定して、日本全国の育休実態を調査した「イクメン白書」を発表されたんですよね。特に都道府県別のランキングはインパクト大でした。

仲井 社会的にもインパクトのある発信をしようと、社員の発案で調査までやったんですよ。ランキングのワースト3位くらいの都道府県からは電話がかかってきましたが(笑)。今後も定期的に独自調査を行って、発表していくつもりです。

白河 政府が同じことをしようとすると、どうしても平等性の原理から北海道から順の掲載になってしまうそうなので、民間ならではの発信だと感動しました。さらにスウェーデン大使館主催のフォーラムにも登壇されていましたね。日本企業としてこうした場に呼ばれることも、企業価値につながりますね。

仲井 当社の取り組みを知った駐日大使がSNSで「スウェーデンの真似(まね)をして男性育休を始めた積水ハウス、サンキュー」といった投稿をしてくださって、そのご縁から発展しました。「師匠」であるスウェーデンに呼ばれて光栄でした。

目指すのは社員の自律的な働き方

白河 私も毎年参加する定例フォーラムなのですが、あの場に日本企業のトップが参加するのはとても珍しいこと。企業として存在感を示す場を広げられていますね。ESG(環境・社会・企業統治)のSを強化することで、機関投資家からの評価も上がるのではと思います。

仲井 ESGもですが、私が目指しているのは、社員の自律的な働き方、キャリアの構築なんです。

白河 どこの企業も課題とされているところですね。他企業の経営者からアドバイスを請われることもあるのではないですか。

仲井 「こんなことをやっていてね」と会食の席で話したら、「うちもやろう」と決めた経営者は何人かいますよ。

白河 すごいですね。社長自ら啓発活動をするのが実は一番速いのです。

仲井 とはいえ、うちのやり方がベストなわけではなく、企業規模や事業形態によって最適な方法は異なると思っています。もしかしたら1カ月間の育休よりも「毎日午後3時に帰宅できる制度」や「週休3日制度」のほうがフィットする会社もあるかもしれない。それぞれに合うパターンを探ることが重要でしょう。

白河 今後、男性育休制度導入を検討中の会社に言いたいことは?

仲井 やってみたら、それほどのデメリットはないですよ、ということですね。とりあえずやってみて、うまくいかなかったら修正すればいい。それくらいの感覚で始めるといいと思います。

顧客対応もオンラインと対面の組み合わせで

白河 力強いお言葉ですね。最初に決算に響くのではとされたことも杞憂(きゆう)だったと。働き方を積極的にアップデートしていく姿勢は、さまざまなリスク対応にも生きるのではないかと思います。例えば、新型コロナウイルスの影響を受けての働き方はいかがでしょうか。

仲井 緊急事態宣言下では出社頻度を減らして「8割テレワーク」に、宣言解除後は「3割テレワーク」でしたが、現在は「7割テレワーク」を推奨しています。そう言う以上は私自身も実践しなければと、週に1、2日はテレワークに切り替えています。それで違和感なく業務は進められていますので、今後もテレワークという働き方は常態化できそうだという実感はありますね。

白河 住宅メーカーというと、お客様との接触対面での営業が基本だという常識があったと思いますが、今後はそのコミュニケーション方式も変わりそうですか。

仲井 変わっていくと思います。4~5月にオンラインでの打ち合わせを推奨したことで、社員のスキルはかなり向上しましたし、お客様も対応してくださいました。一方で、やはり直接対面してご説明するのが効果的なシーンはありますので、今後は対面とオンラインを組み合わせた接客方式がスタンダードになっていくでしょう。例えば、壁紙のサンプルを数センチ四方のサイズで見るのと、実際に壁一面に貼ったモデルハウスで見るのとでは、印象はだいぶ変わります。バーチャルで情報を提供しながらお客様の気分を高めた上で、実物を見ていただくような組み合わせがいいのではないかと考えています。

白河 イクメン休業によってしっかり家庭にコミットする経験ができていた方々は、在宅で仕事をする働き方にもスムーズに移行できそうですね。今後も「テレワーク」は継続する予定ですか。

仲井 どういう働き方が最適なのかを検証している最中ですが、イクメン休業の時と同様にインパクトのある発信がポイントになると思っています。「年間20日間は会社に来てはいけない」というルールを決めても面白いかもしれないです。これはまだ誰にも言っていない私の思いつきですが(笑)。

白河 そういった斬新なひらめきを実現するスピードも御社の強みですね。先進的な男性育休にとどまらない、今後のさらなる展開を楽しみにしています。

あとがき:積水ハウスの仲井社長と念願かなっての対談です。企業がトップから本気で推進すればスピードは速い。メディアに取り上げられ、世論が起こり、政府の方針にも影響を与える良い事例です。またESG投資のS(Social)の部分でグローバルに評価されるのは「女性の管理職比率」だけでなく「ジェンダー平等」なので、男性のワークライフバランスを推進することは評価対象になります。

何よりも男性育休で長く「休む」ことで、仕事の棚卸し、効率化が進むことが一番の働き方改革です。小泉進次郎環境相が育休をとったことから、環境省のテレワーク化は省庁の中で一番進み、コロナ禍での働き方への変化がさらに進みました。男性育休は持続可能な働き方へのトリガーになるのです。

白河桃子
 昭和女子大学客員教授、相模女子大学大学院特任教授。東京生まれ、慶応義塾大学文学部卒業。商社、証券会社勤務などを経て2000年頃から執筆生活に入る。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員、内閣府男女局「男女共同参画会議専門調査会」専門委員などを務める。著書に「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)、「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)など。

(文:宮本恵理子、写真:稲垣純也)

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