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メドピアの石見陽社長は医療関連分野で起業する医師のパイオニア的存在

メドピアの石見陽社長は医療関連分野で起業する医師のパイオニア的存在

国内の医師の3人に1人が参加するという、医師専用のコミュニティーサイトが「MedPeer(メドピア)」だ。運営会社のメドピアはオンライン医療相談や特定保健指導などにも事業領域を拡大している。石見陽社長は医師で起業家。今でこそ医師の起業家は珍しくなくなったが、石見氏はそのパイオニア的存在だ。2014年に東証マザーズに上場してからも、医師として患者と向き合うのは、「現場感覚を持っているからこそ、医療界に変革を起こせる」という確信があるからだ。

メドピアの起業の原点には、「医師を支援することが、患者を救うことにつながる」という石見氏の信念がある。そう考えるようになったきっかけは、医師になりたてのころに職場で起きた事件だった。

1999年に信州大学医学部を卒業し、東京女子医科大学病院の循環器内科学に入局した。臨床経験を重ねながら博士号を取得しようと、大学院に進学した矢先、「事件」は起きた。同大の日本心臓血圧研究所(現・心臓病センター)で、手術中の医療事故がもとで患者が死亡。それを隠蔽するために医師がカルテを改ざんし、逮捕・起訴された。2001年のいわゆる「東京女子医大事件」だ。

決して許されるべきではない事件が、ごく身近で起きてしまった――。新米だった石見氏はがく然とした。職場には連日、メディアが殺到し、『医者なんか信じられない』という医療不信が増大していくのを目の当たりにした。だが、その一方で、自身の医師としての日常と、世間から向けられる厳しいまなざしとの間にギャップも感じていた。

「僕自身や周囲の医師はそれまで同様、目の前の患者さんのために、寝る間もないほど、懸命に働いていました。力を尽くして治療に当たっていると、患者さんや家族から感謝してもらえる。どんなに批判されようと、医師の仕事にやり甲斐を感じているのも事実でした。このギャップを埋めるには、どうしたらいいのか。現場にいる医師だからこそできることがあるんじゃないかと考えるようになりました」

事件は別の面でも石見氏に影響を及ぼした。東京女子医大の患者が急減したため、論文を書くための臨床症例を集められなくなってしまったのだ。結局、別の大学院に出向し、マウスの実験をしながら論文を書くことになり、いったん臨床現場を離れることになった。「あのまま臨床にいたら、起業はしていなかったかもしれません」と石見氏は振り返る。臨床を離れて得たのは時間的・心理的な余裕だ。医療不信が生まれる背景や、自分の将来についてじっくり考えることができた。

「医療ミスが多発する要因の一つは、医師の過酷な長時間労働です。医師同士が職場以外で自由に情報交換をしたり、悩みを打ち明けあったりする場が少ないことも医師を孤独にしています。だとすると、ネットを活用することによって、医師たちが置かれている、そうした環境を変えられるのではないかと考えるようになりました」

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