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キャリアをつくる戦略読書

2020/8/18

キャリアをつくる戦略読書

「3つのシフトを」とグラットンは叫んだ

日本では『ワーク・シフト』と『ライフ・シフト』で知られるリンダ・グラットン博士は、大学で心理学の博士号をとったあとにブリティッシュ・エアウェイズで数年働き、コンサルティング会社に転職しました。その10年強のビジネスキャリアでさまざまな職場を見、同じ企業や事業部の中でも、元気で発想にあふれた元気な部署(=ホットスポット)もあれば、まったく逆の部署もある。それを不思議に思っていたそうです。

コンサルティング会社で最年少役員に駆け上がった後、グラットンは自身のワーク・ライフ・バランスを考え、ロンドン・ビジネススクールに転職します。そこで研究を続け、「身の回りから職場や個人を元気にする答えを見つけよう」という「ホットスポット運動」につながりました。本で言えば『Hot Spots』(2007)が最初のヒット作です。

次の時代を活躍できるのは、いわゆる「優秀な」人材ではありません。時代が要請するスキルや知識をたまたま持っていた人(今なら「感染症の専門家」など)か、どんな状況にも対応できるしなやかさ・強靱(きょうじん)さを持っている人たちです。前者が「クリエイティブ・クラス」(リチャード・フロリダが唱えた)で、後者がスーパー・ジェネラリストでしょう。

一方、グラットンは『ワーク・シフト』(2011)で、この先10年を漠然と過ごせば、たとえ先進国に住んでいようと、その対極である「アンダークラス(新しい底辺層)」に落ち込むよ、と警鐘を鳴らしました。

彼女は「スキルがなければ世界中の労働者と競争する羽目になり低賃金で暮らすことになる」「単なるジェネラリストとしての中間管理職は激減する」と予測します。なのに「未来は過去の延長線上にある」と考えて、これまでのやり方を変えずにやっていけば、時間に追われ、孤独で、貧困な人生を送ることになる、と。

そうならないためには「3つの転換(シフト)」が必要です。

・シフト(1) できれば好きなことの中で、複数の専門性を持つ
・シフト(2) 他者とネットワークをつくる。やすらぎを感じられる人間関係も含めて
・シフト(3) 所得と消費による満足から脱却する。長続きしないし先進国では限界あり

「複数の専門性を持つ」は、それに何を選ぶかは別にして、かなり大事な指摘です。これは人生100年時代を生き抜く『ライフ・シフト』(2016)にもつながる点でしょう。

では、どんな専門性を選べばいいのでしょう? 偶然に任せるのは怖すぎます。でも、自分の「好き」だけで選んでいいのでしょうか? それで済むなら、世界中で「趣味の世界に転職」が大成功していそうなものですが、そうなっている気配はありません。

よく見ると、グラットンはただ「好きなことをやればいい」とは言っていません。それは「専門性」と呼べるものでないとダメなのです。でも専門性を築くには膨大な時間投資が必要です。かつそれが、社会的ニーズがあって他者がまねしにくいものでないと意味がありません。ではそれをどう見つけましょう?

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「キャリアアンカー」と「キャリアサバイバル」
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