営業も人事も「クリエーター」 社員の創造力引き出す博報堂 水島正幸社長(下)

――後輩や部下を育てる中で意識していることはありますか。

「座学や話を聞くだけでは人は育たない、実際の仕事を通じてこそ会社の人間は成長していくんだと思います。そういう意味で、育てるというより後輩や部下が育つような仕事、環境を用意してあげることを意識しています。博報堂は社員数も多く、どんどん新入社員が入ってきます。リーダーは部下に新しいことをやってもらう際に、チームの中で『次これやってね』という緩い任せ方ではなくて『抜てきするんだ、責任も持たせるんだ』という思いで仕事を託すという意識付けが重要です。部下にとっては、やったことがない難しい仕事ですが、『選ばれて、この仕事を任されたんだ』と思うことで、仕事に取り組む気概や成果が変わってきます」

社員が現場で成長できるような環境づくりをするのがリーダーの仕事と語る

「営業局長だった時、部下全員の個性や特徴を把握しようと常に意識していましたし、次に何をやることで成長しそうか、一人ひとりのキャリアプランについて一生懸命考えていました。それがその役職の仕事だと思ったからです。例えば得意先に行って『担当の彼には次にこんな仕事を任せたいと思っているんですよ』と話して、部下が仕事の現場で成長できるような環境づくりを心がけました」

シニアや女性の能力を生かす人事探る

――具体的にどのような取り組みをしてきましたか。

「新しい得意先を開拓することも、広告会社にとっては命題の一つです。同時に、既存の顧客との関係を維持する必要もあります。とはいえ、博報堂としては人的リソースも限られています。そこで50歳を過ぎたシニア社員を集めたチームを新たに作り、従来の得意先との関係維持を担当してもらいました。ベテランとしての経験を特に生かせる仕事だからです。そして、それ以外の人材は新規顧客開拓に回しました。結果として、この人事のやりくりが顧客増につながっています」

趣味の一つが公園に愛犬「カイ」(中)と「さくら」を連れて行くことだ。愛犬家同士で集まると、職業や名前を隠しているので「カイくんパパ」と呼ばれている。

「昔は産休明けの女性社員が職場に戻った時、なかなか仕事に戻りづらい雰囲気も正直ありました。そこで、産休明けの人を中心に女性社員を集めて、女性向けの商品を作るメーカーを担当するチームを作りました。チーム全員が4時に仕事を終えるのです。得意先の主要ターゲット層がお母さんということもあり、メンバーが当事者意識を持って仕事に取り組めたので、成果を出せました。ちょっと実験的な人事でしたが、新しいアイデアで工夫すると、メリットもデメリットも見えてきて次につながることが分かりました」

「博報堂は私のように営業出身もいて、全社員がクリエーターというわけではありません。ですが、クリエーティビティーをもって仕事をすることは博報堂の文化として重要です。たとえそれが人事であっても、工夫をこらしてクリエーティビティーを発揮し、挑戦していくことが大切ですね」

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水島正幸
1960年東京都生まれ。82年慶大法卒、博報堂入社。17年博報堂社長兼博報堂DYホールディングス取締役。19年博報堂DYホールディングス社長。

(荒沢涼輔)

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