有料ライブ配信続々 料金相場は半額以下、AR活用も
ジャニーズの総勢20組以上のグループが代わる代わる出演する有料ライブ配信が、6月15~21日にかけて行われた。横浜アリーナにセットを組み、花道を用意したり、トロッコに乗ったりと、無観客だが本物のライブさながらの内容となった。新型コロナの影響でライブが開催できない状況が続くなか、有料でライブを生配信するアーティストたちが急増している。
それに合わせるように、様々なライブ配信サービスが誕生してきた。3月中旬に、電子チケットサービスを手掛けていたZAIKOが「電子チケット」「動画配信」「投げ銭」が一気通貫で行えるサービスを発表。大手チケットサービスのぴあが「PIA LIVE STREAM」、eプラスが「Streaming+」をリリース。動画配信サイトのABEMAやGYAO!、音楽関連企業のスペースシャワーやフェイスなども参入し始めた。また、EXILEらが所属するLDHはサイバーエージェントと組んで、ライブ配信も行う独自のオンラインサービス「CL」を展開する。
ぴあの森山涼介氏は、「一時的なものではない」とした上で「ライブが再開されても当分の間は100%のキャパでお客さんを入れることは難しい。今後アーティストたちは収益を確保する意味でも、リアルと配信のライブを並行して行わざるを得ないケースが増えてくる。そこをバックアップしていくことも見据えて立ち上げた」と語る。
有料ライブ配信サービスの中身については早くも共通した"相場感"ができつつあるようだ。チケット代を見ると2000~3000円代と、通常のライブに比べ、半額以下に設定されているものが多い。後日視聴できるアーカイブを設けるのも配信ならではの特徴。期間は配信終了後1日もしくは1週間に設定するケースが比較的多いが、6月25日に生配信したももいろクローバーZのように、1カ月間と長期にわたるものもある。
ライブ演出でAR(拡張現実)を積極的に活用するのがABEMAだ。「ABEMAアリーナ」という、バーチャルスタジオから配信できる仕組みを立ち上げ、リアルタイムでアーティストとCG背景を合成し、ARや3DCGを使った演出も可能になるという。第1弾公演は、7月26日に5人組ダンス&ボーカルグループのDa-iCEが行った。
LINE LIVEは双方向性のコミュニケーションに力を入れる。4月18日と5月5日に、m-floの☆Taku主催のオンラインフェス「BLOCK.FESTIVAL」を配信。SKY-HIや向井太一など16組が出演した5月の第2弾では、応援アイテム(投げ銭機能)を使って、"オンラインとリアルの一体感"を演出。また、チャット機能をライブ終了後もLINE上で使えるようにすることで、視聴者と出演者がコミュニケーションを取れるような試みも行う。
まだ、広がり始めたばかりの有料ライブ配信サービス。だが、各社が独自性を競い、アーティスト側がその使い方を熟知していくことで、新たな表現が生まれる場ともなりうる。取り組み次第では、リアルなライブが復活した後も1つのメディアとして定着する可能性が高そうだ。
(日経エンタテインメント!8月号の記事を再構成 文/中桐基善)
[日経MJ2020年8月14日付]
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