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クマと人間の不幸な「接触」 事故なぜなくならない?

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

クマには不思議な魅力がある。自然の中でクマと遭遇すれば、カメラで撮影したくなるだろう。しかし、クマが体重200キロを超える最上位捕食者であることを忘れてはいけない。人間は近づいてはならない存在なのだ。

とはいえ、この記事で紹介する古い写真や、最近ではアメリカクロクマににおいを嗅がれながらじっと立っている女性を映した動画がSNS(交流サイト)で話題になっていることを考えれば、クマと出合ったときの原則は浸透していないと言える。

マスクの着用、ソーシャルディスタンス(社会的距離)だけでなく、自然の中では野生動物との距離が近くなることを覚えておきたい。野生動物とたまたま接触してしまうこともあるが、意図的に野生動物に手を出して招いてしまう不幸もある。

実際、米イエローストーン国立公園では、バイソンに幾度も近づいた72歳の女性が角で突かれる事故が起きている。しかも、この事故は2020年5月に公園が再開してから2度目のものだった。

ところで先述のSNSで拡散した動画は、メキシコ北部のチピンケ自然公園で撮影されたものだという。不用意にクマに近づいた結果なのか、ハイキング中に偶然クマに出合ったのかまでは分からない。野生動物に遭遇しても安全にやり過ごす方法があり、また野生動物との不幸な事故は昔から起きているのに、クマを避けようとしない人がいるのはなぜなのだろうか。

繰り返されてきた過ち

米国の国立公園局(NPS)は1916年に設立された。それから約50年は、ルールや取り締まりが厳しくなかったため、訪問者は公園内のクマに近づいて触れあうこともあった。

米グレイシャー国立公園の野生生物学者であるジョン・ウォーラー氏はこう話す。「レンジャーは見て見ぬ振りをしていたのでしょう。1960年代まで、この国立公園の醍醐味は、道路にエサをもらいにくるアメリカクロクマを観察できることでした。もちろん、けがをする人も多かったのです」

1930年代ごろには、NPSはすでに野生動物にエサをやることの危険性を認識していた。それなのに、なぜ危険な行動は容認されていたのだろうか。

米国立自然史博物館の客員研究員で、肉食動物を専門とする生態学者であるレイ・ウィン=グラント氏は、昔も今もNPSは雄大な大自然を堪能することを推奨していることは変わらないと言う。ただ「かつては、その方法の一つとして、野生動物との交流が宣伝されていたことがありました。特にクマはインパクトが強く、象徴的に使われました」

ときには、エサとなる残飯を持参して、カメラを手に山小屋の屋根に登り、クマが現れるのを待つような人もいた。

嗅覚が鋭く、1キロ以上離れた場所からでもエサのにおいを嗅ぎつけることができるアメリカクロクマにとって、捨てられた残飯を嗅ぎ当てることなどたやすい。アメリカクロクマはハイイログマより数が多く、残飯をあさることも多い。そのため、国立公園でよく見かけるのはアメリカクロクマだ。

不幸な事故がなくならない理由

実際にクマに近づくことがいかに危険かを示したのはハイイログマの方だった。1967年のある夜のこと、グレイシャー国立公園の別々の場所で、2人のハイカーがハイイログマに殺されるという事件が起きた(「ハイイログマの夜」という本も出版された)。この事件は大きく報道され、事態を重く見たNPSは方針を変更。取り締まりが徹底されるまで時間はかかったが、1990年代以降、国立公園でのクマ関連で負傷したり死亡したりする観光客の数は劇的に減ることになった。

イエローストーン国立公園は、1900年以降でクマに関連した事故による死者が2番目に多い。それでも、ハイイログマに襲われてけがをする確率は、隕石に当たって死ぬ確率よりも低いのが現状だ。

クマへの愛着がアダに

ヨーロッパ人が北米大陸に入植してくる前、アメリカクロクマは南西部の砂漠地帯からワシントン特別区まで、北米全体に分布していた。先住民たちの多様な文化では、生存のための狩猟から精霊信仰まで、各部族とクマは独特な関係を築きあげていた。ただ、どのような関係であれ、人間はクマを脅かす存在ではなかった。

その後、ヨーロッパからの入植の影響で、クマの数は激減する。農地を開拓するために森が切り開かれてクマの生息地が失われたり、危険な害獣として駆除されたりしたことで、クマは姿を消すことになったのだ。自然やクマを保護しようという活動が起こるのは、20世紀初めだ。保護活動を始めたのは愛好家も含めた狩猟関係者で、その中にはセオドア・ルーズベルト大統領もいた。

ウィン=グラント氏はこう話す。「それ以降、クマをかわいがる風潮が生まれました。童話に登場するクマは決まっていいキャラクターとして描かれ、家族がいたりします。そして、みんながクマを愛するようになりました」

残念ながら、その愛情は裏目に出てしまっている。人からエサをもらったクマは、その経験を忘れることはない。その結果、人が住む場所に出てくる。エサを探そうとして車にひかれたり、人間にとって危険だと見なされて安楽死させられたりなど、人間との接触がクマの死につながる。

「クマを擬人化してはいけません。人々が過ちを犯す理由は、その点にもあると思います」とウォーラー氏は話す。「人は、クマを人間と同一視したり、自分の思いをクマに投影したりすることがあります。実際のクマは非常に厳しい生活を送っていて、人間と親しく交流する必要などないのです」

ウォーラー氏は、NPSの野生動物管理者として、「嫌悪条件づけ」と呼ばれることも行っている。これは、人間との接触が、エサではなく不快な体験につながることをクマに教え込む方法だ。クマが山奥から公園のキャンプ場などの人がよく訪れる場所に現れると、レンジャーは段階的に荒っぽい手段を使って追い払う。サイレンを鳴らしても効果がなければ、その次はビーンバッグ弾やペイントボールなどクマが傷つかない方法で追い返すのだ。

クマの側からしても、人間が支配する環境で安全に生活するのは難しい。とはいえ、人間がクマの保護に重要な役割を果たしているのも事実だ。

「『このクマはお腹を空かせている。エサをあげなきゃ』と思う人もいるかもしれません。しかし、それは不適切で無責任な対処法です。必要なのは、野生の環境のままにしておくことです」とウィン=グラント氏は話す。

あるいは、ウォーラー氏が言うように「一切干渉しない」ことだ。

次ページでは、過去に米国の国立公園で撮影された、人とクマの「交流」の様子を紹介する。いずれも非常に危険で、今なら目を疑うような行為ばかりだ。

(文 RACHEL BROWN、訳 鈴木和博、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年7月28日付の記事を再構成]

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