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新型コロナ禍のインドネシア 1枚の写真が与えた衝撃

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ナショナルジオグラフィック日本版

フォトジャーナリストのジョシュア・イルワンディ氏は、インドネシアの病院で働く人々への密着取材を行い、プラスチックシートで全身を包まれた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で亡くなった犠牲者をとらえた印象的な1枚を撮影した。撮影にあたっては、被写体となった人物の特徴や性別がわからないよう、細心の注意を払った。

ナショナル ジオグラフィック協会の支援で、ナショジオの記事(2020年8月号「パンデミックと闘い続ける人類」)のために撮影されたこの写真は、インドネシアに暮らす2億7000万の人々の心を揺るがした。今回のパンデミック(世界的な大流行)に対して、インドネシア政府は消極的とも思える姿勢を見せていた。20年3月には、ジョコ・ウィドド大統領が、効果が証明されていないハーブ療法を勧めていると報じられた。

ウイルスによる苦しみを人間の姿として提示したイルワンディ氏。彼の写真に対する反応は様々だった。

イルワンディ氏の写真がテレビのニュース番組で紹介されると、同国のコロナウイルス対策チームの広報担当が拡散。さらに他のメディアも、イルワンディ氏の同意を得ないまま、ニュース画面をキャプチャーしてすぐに報道に利用した。そして、米国でナショジオの記事が20年7月14日に公開されると、イルワンディ氏のインスタグラムの投稿に34万人以上が「いいね」を押す。ちなみに米ナショジオのインスタグラムにもこの写真は投稿され、数時間で100万の「いいね」がついた。

「写真をきっかけに、コロナウイルスについての議論が活発になったことは間違いありません」と、インドネシアの自宅でイルワンディ氏は語った。「わたしたちは、医師や看護師のみなさんが払っている犠牲と、彼らがさらされているリスクを認識すべきです」

米国際写真センターの名誉館長フレッド・リッチン氏も、イルワンディ氏の写真が議論の突破口となったことは間違いないと言う。「まるでミイラのように体をぐるぐる巻きにされているのです。誰もが目を背けることができず、またコロナの恐怖も感じます」

さらにリッチン氏は、遺体との間の距離感にも言及する。「私はこの写真を見て、だれかが放り出されて透明なシートで包まれ、消毒液をかけられ、ミイラのようにされ、人間性を奪われ、何か別のものにでもされてしまったと感じました。誰しもウイルスに近づきたくはありません。だから、ウイルスに感染した人を、自分たちとは別の何かに仕立てたのでしょう」

イルワンディ氏の投稿には大きな反応もあった。たくさんのフォロワーがいる人気歌手が、「この写真家はニュースを捏造(ねつぞう)している」と非難したのだ。COVID-19はそれほど危険なものではなく、また遺族すら面会に行けない現状で、フォトジャーナリストが病院で撮影することは許されるべきではない、というのがこの歌手の主張だ。

歌手のフォロワーたちの中には「マネキンを使って偽の写真を撮ったのだろう」とイルワンディ氏を責め立てたり、彼のことを世界保健機関(WHO)の「奴隷」と呼んだりする人もいた。CNNインドネシアが20年7月に報じたところでは、インドネシア政府は28歳のイルワンディ氏の倫理観に疑問を呈し、明かされていなかった病院名を公開すべきと示唆しているという。

「わたしの私生活についての情報が、わたしの許可なく報道されています」と、イルワンディ氏は言う。「あの写真に込めたフォトジャーナリストとしての意図とは、まるでかけ離れた話になってしまいました」

一方で、同国のフォトジャーナリスト協会は彼を支持している。協会は、この写真はジャーナリズムの基準を満たしていると反論し、歌手に謝罪を要求。その後、歌手は謝罪に応じている。

イルワンディ氏によると、国はCOVID-19をより真剣に受け止めるべきだと話す政府関係者もいるという。米ジョンズ・ホプキンス大学のコロナウイルス追跡マップ上では、インドネシアのCOVID-19による死者数は5452人、感染者数は11万6871人(いずれも20年8月6日時点)となっているが、この数字は実態を過小評価しているとの声もある。同国では多くの人が、社会的距離を保つことも、マスクを着けることもしていない。20年6月以降は、大規模な社会的制限措置も徐々に緩和されている。

イルワンディ氏は、この写真をきっかけに、インドネシアの人々が予防措置をとるようになり、命が救われることを願っている。今年5月に米ハーバード大学教授のサラ・エリザベス・ルイス氏が、フォトジャーナリストのすべきこととして語った次の言葉を、氏は引用した。「統計からは見えてこないところまで追求し、COVID-19が人々にどのように影響を与えているかを示しましょう」。ピュリツァー賞を受賞した写真家リンジー・アダリオ氏をはじめとして、世界のフォトジャーナリストたちも、この課題に果敢に立ち向かっている(ちなみに、アダリオ氏もナショナル ジオグラフィック協会の支援でCOVID-19の取材をしている)。

イルワンディ氏の次の目標はなんだろうか。

そう尋ねると、氏は一瞬黙り込んでからこう答えた。

「しばらくは、おとなしくしていようと思います」

(文 DAVID BEARD、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年8月6日付]

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