2020/8/17

トヨタウェイは世界を変えたか

残っていたアンドンコード

その工場に初めて足を踏み入れたときの感動は今でも忘れられません。それまでジョン・ディア・インディアやミシガン大学でトヨタ生産方式について学んできたものの、実際にトヨタがつくった工場を間近で見たのは初めてだったからです。工場にはアンドンコード、ベルトコンベヤー、床のマーキングなどがそのまま残されていました。「これが本家本元か!」と感激しました。

トヨタ自動車とゼネラル・モーターズの合弁会社、ニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング(NUMMI)時代のフリーモント工場(カリフォルニア州)

15年当時、テスラは「モデルX」の1日あたりの生産台数をできる限り増やすことを目標として掲げていました。1日数百台だった生産台数を数千台にするにはどうしたらいいか、という難題に挑まなくてはならなかったのです。この問題を解決するのに役立ったのがトヨタ生産方式です。

私の最初のプロジェクトは、トヨタ生産方式に基づき、工場全体の「物と情報の流れ図」(一つの製品ができるまでの全工程を洗い出し、よどみのない流れ=短いリードタイム=を作るために、物と情報の停滞を見つけ、改善に結びつけるための図。英語ではValue Stream Map)をつくることでした。テスラにはトヨタ出身の人もいましたが、その多くはアップル、グーグル、ボーイングなど自動車業界以外の出身者でした。そのため、各チームがそれぞれの専門性をもとに、ばらばらに仕事をしていた印象でした。

そこで私たちのチームが中心となり「物と情報の流れ図」をつくることになりました。その結果、役員も従業員も工場全体をふかんで見通せるようになり、よりよい決断をすることができるようになったのです。トヨタ生産方式はテスラの「モデルX」の生産に大きな価値をもたらしたと思います。

※本記事に登場する学生のコメントは、個人の意見を反映したものであり、ハーバード大学及びハーバード大学経営大学院の見解を示すものではありません。

※「トヨタウェイは世界を変えたか」は毎週月曜日に更新します。次回は8月24日の予定です。

アディ・ラグナサン Adi Raghunathan
 2012年インドSRM大学卒業後、ジョン・ディア・インディア入社。15年米ミシガン大学大学院修了。16年テスラ入社。エンジニアチームのリーダーとして活躍。19年ハーバードビジネススクール入学。21年MBA取得予定。

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