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感染から体守る粘膜免疫 高める食事、ここがポイント

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NIKKEI STYLE

新型コロナウイルスやインフルエンザ、風邪などの原因となるウイルスや細菌は鼻や口、喉といった「上気道」や、腸管などの「消化管」の粘膜を侵入口として体内に入り込もうとする。上気道や腸管には感染から身を守るための「粘膜免疫」という仕組みがあり、これらを迎え撃つ。とはいえ、疲れやストレスなどで免疫機能が低下すると防ぎきれないこともある。生活習慣や食事で粘膜免疫を維持するにはどうすればいいか探った。

病原体にさらされる上気道の粘膜を守る

まず、ウイルスや細菌といった病原体に立ち向かう、免疫の仕組みの基本を知っておこう。私たちの体には、大きく分けて「ウイルスや細菌を侵入させない」、さらに「侵入を許したら、その敵と戦う」という2段階の仕組みが備わっている。

「侵入させない」ための防衛ラインとなるのが、外界と接している鼻や喉などの「上気道」や、「腸管」などの粘膜だ。

なかでも空気や飛沫を介して病原体にさらされやすい上気道は感染防御の最初の戦場となる。気道の粘膜の上には、これを守る粘液と繊毛があり、細菌などの異物の排除に働く。しかし、気道は腸よりも乾燥しやすく守りが手薄になりやすい場所でもある。「胃液や消化酵素をかいくぐらないと到達できない腸管と違い、上気道は外界と直接つながっているうえに、腸に比べて存在する免疫細胞や抗菌物質も少なめで比較的弱い組織といえる」と、免疫を専門とする医薬基盤・健康・栄養研究所のワクチン・アジュバント研究センターセンター長、国沢純さんは説明する。インフルエンザや風邪、現在感染が拡大している新型コロナ、夏に高熱を引き起こすアデノなどのウイルスは、いずれも上気道が主な侵入口となる。

だからこそ、上気道の粘膜免疫を維持し、同時に、入り口に当たる口腔(こうくう)で働く唾液内の抗菌物質量が減らないような生活習慣を意識して対応したい。こうした守りを固めるのに重要な働きをするのが、実は上気道からは離れた場所にある小腸の粘膜だ。

全身の粘膜で病原体を防ぐ主役IgA抗体、小腸がふるさと

では、小腸を起点として、全身へと波及する粘膜免疫の仕組みを見てみよう。

<小腸を起点に全身を巡る免疫システム>

腸管表面は粘液で覆われた絨毛(じゅうもう)という突起がひだのように並んでおり、物理的に病原体が侵入しにくい構造になっている。

絨毛の合間のところどころにパイエル板という免疫組織の集合体があって、その上皮にある細胞(M細胞)がウイルスや細菌といった病原体を取り込む。

ここからパイエル板の中にいる免疫細胞たちがチームプレーで侵入した病原体をつかまえ、さらにその情報から、次に同じ病原体が体内に入ったときに排除する免疫物質「IgA(免疫グロブリンA)」などの抗体を作る。IgAは最初に学習した特定のウイルスや細菌に強く反応する優れものだ。

こうして作られたIgAは病原体捕獲力が高い分泌型IgAとなって絨毛の外に出て、胃を通り抜けて腸に入ってきたウイルスや細菌が粘膜に付着するのを阻止したり、細菌が出した毒素を中和したりして、病原体が感染症を引き起こすのを防ぐ。

抗体を作る細胞(抗体産生細胞)の一部は血液に入って全身を巡り、再び腸に戻ってくる(ホーミング)。こうして全身を旅しながら、免疫細胞の一部は唾液腺や気管支、乳腺などにも行ってIgA抗体の産生を促し、唾液などの分泌液中に放出することで、それぞれの粘膜を守り、感染を防御する。

粘膜免疫を弱めるリスクは何か

病原体が初期のとりでである粘膜から体を構成する組織の中にまで入り込んだ場合、NK細胞やマクロファージ、好中球といった免疫細胞が病原体の種類にかかわらず排除する「自然免疫」、特定の病原体の情報を記憶し次の侵入に備える「獲得免疫」など、全身で敵と戦う仕組みが働く。

では「粘膜免疫」について詳しく説明していこう。粘膜を守る粘液中には、リゾチームやディフェンシンといった抗菌物質も含まれる。特に、病原体をつかまえて粘膜への侵入を阻むという主役級の働きをする抗体、IgA抗体による防御力の高め方を見ていく。

IgAの分泌量は私たちの生活習慣に影響されるほか、ある種の食品の摂取といった私たちが日常生活で取り組みやすい方法によっても高めることができ、唾液中などでも増えることが確認されているからだ。

まず、IgA産生が低下し、粘膜免疫の働きが落ちてしまう要因を確認しよう。

・高齢者・離乳した幼児

健康な人116名の唾液中IgAを測定したところ、80歳以上では20~30代の半分以下しかIgAが分泌されていなかった[注1]。また、離乳した幼児も、母親の母乳からもらったIgAの効力が切れ、自らの免疫の機能獲得の過程にあるため感染症にかかりやすい。

・ストレスを感じている人・睡眠不足の人

精神的ストレスや寒さのストレスをかけると唾液分泌量が減るという研究がある(グラフ1)。「ストレスの負荷によって分泌されるコルチゾールは免疫を下げる代表的な因子。睡眠不足はストレスとも関連があり、また、過剰なストレスにより不眠になることもある。ストレスによって自律神経のバランスが崩れると、唾液も出にくくなる」(国沢さん)。

唾液中のIgAが低下すると風邪といった上気道感染症にかかりやすく、疲労感も強くなるようだ。「唾液には、IgAの他、リゾチーム、ラクトフェリン、ペルオキシダーゼ、ディフェンシンといった感染症を引き起こす病原体に対して抗菌・抗ウイルス作用を発揮する成分も含まれていて、感染リスクを抑えるために重要な役割を果たしている」(同)。

<急性ストレス負荷で唾液分泌量が減る>

・ハードな運動を行う習慣がある人

適度な運動は免疫力を高めるが、高強度の運動は体を過度に疲労させ、唾液IgAを低下させたり、上気道感染症リスクを高めたりする、という多くの報告がある[注2]。「強すぎる負荷をかけると筋肉をはじめとする免疫細胞以外の活動にエネルギーをとられ、免疫細胞が働くためのエネルギーが不足し正常に機能できなくなる可能性がある。心地いいと思う程度の運動は良いが、消耗するような運動は免疫維持にはリスク」(国沢さん)。

これらのチェックポイントのうち、年齢面以外は、感染症の流行期や体調が万全でないときには特に留意したい。

[注1]Oral Microbiol Immunol. 1995 Aug;10(4):202-7.

[注2]Biol Sport. 2012 Dec; 29(4): 255-261.

乳酸菌やポリフェノール、粘膜免疫維持に働く食品成分

しかし、仕事の量やそれに伴うストレス、睡眠不足といった生活因子の調整は難しいというビジネスパーソンも多いだろう。

自分の生活は粘膜免疫を弱めているかもしれないと感じる人が次に心掛けることができるのは食生活だ。

「まず、栄養バランスの良い食事をとることが大前提。免疫細胞のエネルギー源となるのは、ビタミン類、アミノ酸、糖質、脂質、ミネラルなど。これらを食事からバランスよくとり、免疫細胞が正常に働く環境を作っておかないと、IgA産生を高める力を持つ食品や食品成分が入ってもその働きは十分には発揮されない」と国沢さんは言う。そして、ビタミンの中でも糖質の代謝や粘膜の健康維持に欠かせないビタミンB1の例を挙げる。

「ビタミンB1を欠乏させたエサで飼育したマウスでは、腸管のパイエル板が小さくなり、IgAを産生する細胞の数も減少、感染にかかりやすい状態になる」(国沢さん)[注3]

こうした食生活のベースを維持したうえで摂取すると、粘膜免疫を高める働きが期待される食品がある。「乳酸菌などの菌類」、「食物繊維」、「ポリフェノール」からいくつかを紹介する。

・乳酸菌などの菌類

乳酸菌や腸内にすむ腸内共生菌など、菌類では報告数も多い。

例えば、乳酸菌b240(発酵茶由来の乳酸菌)では、これを摂取することで唾液中のIgAや唾液自体の量が有意に増加することが確認されている(グラフ2)。また、継続摂取で風邪罹患(りかん)者の割合が低減するという結果も出ている[注4]

<乳酸菌b240摂取で口腔内のIgA量が上昇>

他にも、L.ロイテリ菌、乳酸菌シロタ株、乳酸菌1073R-1株といった乳酸菌でヒト唾液内でのIgA量の増加が確認されている。

国沢さんが現在研究に取り組むのが、腸管のパイエル板から発見されたアルカリゲネスという菌。グラム陰性菌という種類に分類されるヒトでも観察される共生菌だ。樹状細胞という免疫細胞に働きかけてIgAを作れという指令を送る機能が確認されている。

マウスの試験では、アルカリゲネス菌が作る免疫活性成分を肺炎連鎖球菌ワクチンと一緒に鼻に投与したところ、鼻腔(びくう)でも気管支でもIgAが増え、ワクチンの効果を高めたという[注5]

・食物繊維類

免疫細胞が多く集まる腸管に物理的な刺激を与えたり、腸内細菌のエサになってその代謝物がIgA産生を促す作用があったりする食物繊維も十分な量をとるようにしたい。

果物などに多いペクチン、ゴボウなどに含まれるイヌリンという2種類の水溶性食物繊維を多く与えたマウスでは、腸、脾臓(ひぞう)、血液中のIgAが増加した。また、食物繊維の仲間であるパラミロンというユーグレナが含有する成分の乾燥粉末を摂取するヒト試験でも、唾液中のIgA濃度の上昇が確認されている[注6]

・ポリフェノール

植物が含む抗酸化物質ポリフェノールにも期待が持てそうだ。茶カテキンやクロモジというようじに使う木のポリフェノールなどでは、病原体が粘膜細胞に侵入することを妨害する作用が見いだされている。

また、ベリー類の一種でポリフェノールのアントシアニンを豊富に含むカシスエキスを毎日摂取する群、しない群を比較した結果、カシス摂取群でのみ唾液中のIgAが有意に増え、抗ウイルス物質のディフェンシンも増加したという報告もある(グラフ3)。

<カシス摂取で唾液中IgAとディフェンシンが増加>

このような食品成分が、病原体ではないのにIgA産生を促し、粘膜免疫の維持に役立つのはなぜか。その理由を国沢さんはこう説明する。「食品や飲料としてとる乳酸菌のように、免疫細胞が"病原性はないけれど異物"と判断した場合も、その刺激でIgA産生などを促進するから。こうした食品類を継続的にとってIgA量を維持しておくことで、侵入してきた病原体に素早く反応できる」。

なお、日々できることとして、丁寧な口腔ケアも忘れずに。デイケア施設に通う高齢者に看護師や介護者が週1回、口腔ケアを行ったところ、セルフケアだけの高齢者群よりもインフルエンザ発症が10分の1となったという報告がある[注7]。この研究では、唾液中の悪玉細菌数の減少が報告されているが、ほかにも、しっかりした口腔ケアで、唾液量が増えたり、唾液中のIgAや抗菌物質が増えたりするというデータもある。

感染リスクが気になる今こそ、感染の入り口である口腔、上気道の免疫の重要性を見直し、できることから取り組んでいきたい。

[注3]Cell Rep. 2015 Oct 6;13(1):122-131.

[注4]Br J Nutr. 2013 May 28;109(10):1856-65.

[注5]Microorganisms. 2020 Jul 23;8(8):E1102.

[注6]Cell Host Microbe. 2016 Aug 10; 20(2): 202-214.

[注7]Arch Gerontol Geriatr. Sep-Oct 2006;43(2):157-64.

(ライター 柳本操、イラスト 三弓素青、グラフ 増田真一)

国沢純 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センターセンター長
ワクチンマテリアルプロジェクト&腸内環境システムプロジェクトプロジェクトリーダー併任。大阪大学薬学部薬学科卒業、同大学院薬学研究科博士課程修了。東京大学客員教授、大阪大学招聘(へい)教授、神戸大学客員教授、広島大学客員教授、早稲田大学客員教授などを兼任。感染症やアレルギー炎症性疾患に対する粘膜ワクチンの創出に取り組む。
 「健康」「お金」「働く」をキーワードに、人生100年時代を生きるヒントとなる情報を提供する「ウェルエイジング」を始めました。
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