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他人の言葉遣いを批判する「誤用警察」が勢いを増してきた(写真はイメージ =PIXTA)

他人の言葉遣いを批判する「誤用警察」が勢いを増してきた(写真はイメージ =PIXTA)

長く続いているこの連載「梶原しげるの『しゃべりテク』」が『イラッとさせない話し方』( 日本経済新聞出版)という書籍にまとまった。この機会に過去の記事を振り返りつつ、「ウィズコロナ」時代の日本語表現を考えてみたい。連載バックナンバーをあらためて見返して感じるのは、「正解のない日本語」の魅力と難しさだ。そこで今回は全体をクイズ形式で構成し、問いと答えを通して、テクニックにとどまらない「しゃべりの本質」に迫ってみたい。

Q コンビニエンスストアの店員が苦手だと感じる客のタイプは「レジで全く"何"を出さない人」でしょう?

正解は「声」だ。レジで目配せや指差しだけで店員に指示を出し、一言も発しない客がいるそうだ。ヘッドホンやイヤホンを着けたままで、店員とのコミュニケーションを「拒否」するような客も珍しくないという。

逆に、店員側から好感を持たれやすいのは、支払いの際、気持ちのこもった言葉を添えてくれる客だ。「ありがとう」の一言だけで十分なのだという。

実はこの記事は過去の当連載で最も読まれた記事だ。しかも、第2位をはるかに引き離しての、圧倒的なトップらしい。これはどうしてだろう。担当の編集者と話し合ってみたところ、「コンビニの支払いでバレてしまう『人としての器量』」という、見出しが刺さったのでは?」という見立てだった。つまり、自分の振る舞いに「どこか器量を疑わせてしまう振る舞いがあるのでは」と、不安に感じる人が多いということだろう。

レジで店員が嫌う態度は「不満げに怒鳴る」「チッと舌打ちする」などだ。つまり、「店員を下に見た態度」だ。器量のものさしになり得るのは、こういう「他人と向き合う態度が示す、内なる俺様意識」の度合いなのだろう。こういった不遜な態度を見せる人の多くは「スーツ姿のビジネスパーソン」だという。コロナ禍のせいで、これまで以上に気持ちのささくれ立つことが多くなっている今だけに、いっそうこまやかな気遣いを心がけたいものだ。まずはレジで「ありがとう」の一言を添えることから始めてみてはどうだろう。

Q 梶原しげるが先輩から教わった、上手な会話の金言は「"何"を止めれば、耳が動き出す」?

正解は「唇」。取材する側のしゃべりすぎを戒めた言葉だ。取材の途中で、相手に気づかれないよう、唇に指を当てて、動きすぎだと感じたら、しゃべりを控えるという技も教わった。

インタビューは「inter(互いの)」「view(視点、考え方)」を交換する行為だから、発言のワード数は均等に近い状態が望ましい。どちらか片方ばかりがしゃべりすぎるのは、一方的な演説のようになりがちだ。聞いてばかりの側からすれば、ご用聞きや御説拝聴のような立場に陥ってしまう。どちらにとっても好ましくない。しかも主に聞くべき役回りの取材者がしゃべりすぎたのでは、全体が底浅くなりかねない。

取材に限った話ではなく、ビジネスシーンでの商談や会議、打ち合わせでも心得ておいて損のない戒めだろう。「サラリーマンの給料の4割は聞くことで得ている」ともいわれる。上司やチームリーダーであれば、なおさら部下や同僚の声を、自らの「しゃべりすぎ」で封じてはなるまい。

自分がしゃべることは、共有の時間を独占することによって間接的ながら相手に「しゃべるな、黙っていろ」と命じている格好になる。このことは、リモートワークが広がってオンライン会議のような形で対話の機会が増えている今だからこそ、再確認しておく意味があるだろう。

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