2021年卒学生の就職活動が大詰めを迎えている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、選考がリアルの対面からオンラインに変わったり、航空のような人気企業が選考を中止したりするなど予期せぬ事態が発生し、学生たちを惑わせた。
コロナ禍の下の就活は今後どう変わっていくのか。探偵団が取材した学生のコメントから今シーズンのトレンドをひもとき、来シーズンの22年卒就活の動向を探った。
合同企業説明会は3月1日から31日まで中止します――。政府ルールによる説明会解禁日の20年3月1日を控えた2月下旬。大手就活情報サイト「リクナビ」の運営会社からこんな発表があり、就活生は一様に凍り付いた。大半の学生にとって合説は就活の情報を集める重要な場。それがコロナ禍で失われてしまったのだ。
しかしそれだけでは収まらなかった。4月7日には7都府県に緊急事態宣言が発令されたことを受け、それまで対面での面接を実施していた企業は選考活動を一時中断した。宣言が解除される5月下旬まで、身動きがとれない学生が多数いた。
「インターンシップ(就業体験)に参加しておいて良かった」
そんな中、涼しい顔をしていたのがインターン参加組だ。明治大の男子学生は2月に半導体メーカーの冬インターンに参加。その後あった早期選考を受け、4月に内々定をもらい就活を終えた。
大手就職情報会社のディスコ(東京・文京)の調査によると、4月1日時点の内定率は34.7%と、ここまでは前年同月を上回るハイペースで上昇し続けた。武井房子上席研究員は「一部の企業で夏や冬のインターン参加者向けに一般学生とは別の選考ルートを用意し、コロナ禍の前に内定を出した」という。
新型コロナの収束の見通しはいまだ立っていない。22年卒採用シーズンに感染拡大の第2波、第3波が押し寄せる可能性もある。そのため企業側としても早めに学生を囲い込もうとする動きが、例年にもまして増えるかもしれない。
焦る学生が向かう先は企業が有望な学生を指名する「スカウト」などの新サービスだ。アイプラグ(大阪市)が運営する「オファーボックス」の7月末時点の登録者数は前年同月比1.7倍の5万9000人に達する。新規導入企業数も増えているという。企業にとって本来は選考のためのツールだが、21年卒からはインターンに呼ぶ学生を集める目的で利用する流れも加速しているようだ。
「内定切りのリスクに備えるために、10月の内定式まで今持っている内定はできる限りホールドするつもりだ」
慶応大4年の男子学生は大手自動車メーカーと外資系コンサルティング会社の2つの内定を獲得している。新型コロナで景況感は悪化し不安感は増すばかり。「自己防衛で内定は複数必要」と訴える。