監視資本主義の先導者

これが大きな転機となった。データが増えれば増えるほど、検索結果は優れたものになるというネットワーク効果も相まって、グーグルは検索および広告業界を牛耳る存在であるプラットフォーム企業へと成長した。そして、プラットフォーム企業が膨大なデータとターゲティング広告から利益を得る手法は、新たなビジネスモデルとなった。

ターゲティング広告を中心的な収入源にしたのはグーグルだけでなく、フェイスブックやアマゾン(ターゲティング広告を使って自社サイトにユーザーを誘導し、彼らが以前興味を示した商品をクリックするように促している)をはじめとするほかの多くの企業もあとに続いた。人々にものを買わせるまったく新しい方法が生まれたと言えるだろう。(「第3章 広告への不満」125ページ)

この新たな手法は、新しい市場原理をも生み出しつつある。監視資本主義だ。これは米ハーバード・ビジネス・スクールの名誉教授ショシャナ・ズボフ氏が提唱するもので、消費者のデータを収集・分析することで行動変容を促し、企業が利益を得ることを指す。本書では、グーグルをはじめとする巨大ITがすでに監視資本主義を実現しているという。

消費者のデータを収集・分析することで行動変容を促し、企業が利益を得る「監視資本主義」がすでに実践されているという
そして現在、ビッグテックが実践する監視資本主義により、“私たち自身”が利益のために最大化されている。もう一度指摘するが、私たちの個人データこそが、それを活用するビッグテックとそのほかの企業にとって、ビジネスの源になっている。(「第10章 失敗するには速すぎる」341ページ)

上記では、邪悪になった象徴といえる広告ビジネスモデルと、それから導かれた監視資本主義を例に挙げたが、本書ではさらに税・法・規制の回避や、金に物を言わせたロビー活動なども取り上げられている。そのうえで、具体的な対策として、規制、利益分配、デジタル課税、実体経済再生を提言している。

巨大IT企業の「負の側面」を紹介したが、日々の生活が便利で豊かになるなど「正の側面」も当然ある。「正の側面」が輝かしいからこそ、「負の側面」も色濃いのだろう。「負の側面」が、本書の著者と同様、個人的な出来事として身近に感じられるようになってきている今こそ、本書を手に取ってみてはいかがだろう。

(日経BP 田島篤)

邪悪に堕ちたGAFA ビッグテックは素晴らしい理念と私たちを裏切った

著者 : ラナ・フォルーハー
出版 : 日経BP
価格 : 2,310円 (税込み)

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