荒川良々 『呪怨:呪いの家』コメディ要素なく戸惑い
ジャパニーズホラーの代名詞とも言える『呪怨』。ハリウッドでリメイクされた『The Grudge』(2004年)が全米興行成績1位になるなど、世界的人気のJホラーを、Netflixがオリジナルシリーズ『呪怨:呪いの家』として新たにドラマ化した。
プロデューサーはJホラーのけん引者、一瀬隆重氏。監督は映画『きみの鳥はうたえる』などで注目されている三宅唱氏を起用した。主演を映画や舞台でコミカルな演技を見せる荒川良々が務める。
1988年。心霊研究家の小田島(荒川良々)が、新人タレントはるか(黒島結菜)から夜中に部屋で響く足音に悩まされているという相談を受ける。同じ頃、女子高生の聖美(里々佳)が、同級生に誘われ古い空き家で肝試しをすることになるが……。
実話感を大切に制作
公開する場としてNetflixを選んだ点について、一瀬氏は「一本の映画では描けない物語をドラマシリーズで描きたかった」と語る。「ただ、日本のテレビでは規制が多すぎてできなかった。だから、Netflixから声をかけていただいたとき『ぜひやりたい!』と即答した」。三宅監督を起用したのは「今回は実話感を大切にしたかったので、人間ドラマの演出に優れた監督を起用しようと考えた」からだ。
初めてのホラー作品となる三宅氏は「凶悪な事件報道に携わることになったプロのリポーターのように、私情抜きで、冷静かつ正確に『現場の生々しさ』を届けようと努めた」という。人間描写に優れた三宅氏をホラーに起用した点が今回のポイントだと感じた。
もちろん荒川良々というとぼけた役が面白い役者を主演に起用した点も注目だ。三宅氏は「荒川さんがどこか一点をじっと見つめ始める…ただそれだけで部屋の空気がじわじわと変化する」と語るが、本作はJホラーが人気の海外でも評価されるのではないか。
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主演の荒川良々に『呪怨:呪いの家』について話を聞いた。
「今回の作品はホラー、ホラーした内容で、コメディ要素が微塵もないんです。なんで自分がキャスティングされたのか分からなくて(笑)。
ただ、三宅監督にとっても初のホラーだったんですよ。だから監督を中心にしてカメラマンに音声さん、照明さんたちがどうやったら怖くなるか、怖く見せられるかをスタッフさんたちと一緒に試行錯誤して作っていました。それはドラマというよりも映画に近い感じがしましたね。監督も1つのシーンを撮るのに、いろんなバージョンを撮ったり、鏡を意識的に使ったり。現場はみんなイキイキしていましたね。
小田島は人間よりも怪奇現象に興味があるという人物で、台本を読んでも、面白いセリフがないので戸惑いました。撮影前の本読みのときに、三宅監督から『小田島はオカルト的なことに慣れているので、淡々と話してください』と言われて、それを意識して演じていました。
Netflixでの仕事は初めてですけど、テレビとは違うなと思いました。グロテスクな描写も多いし、血もすごく出る。それができるのは配信だからなんだろうなと。演じる側としては『海外にも配信される作品だから』といった特別な思いはないですね。監督に言われた通り、本当に淡々と演じただけです。
最近は友達と会っても面白い配信作品が話題になることが増えてきましたし、僕自身も『ナルコス』などの作品を楽しんでいるのですが、『呪怨』も1話を見たら引き込まれて、止まらなくなるという"Netflixあるある"になると思います。エンドロールでかかる歌も怪しすぎて引かれます(笑)。言葉じゃ説明できない謎もあって。ただのホラーに終わってはいないので、期待して最後まで見てください」
(ライター 前田かおり、かみゆ編集部・小沼理)
[日経エンタテインメント! 2020年8月号の記事を再構成]
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