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鎌倉カフェの達人が愛す 自宅で水出しアイスのすすめ

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NIKKEI STYLE

日本の夏は、長くて厳しい。外出先でカフェに立ち寄れば、見た目も涼しげなアイスコーヒーをついつい頼んでしまう。澄んだ香りとほどよい苦みが、神経を鎮め、体にこもった熱気を冷ましてくれる。コロナ禍で在宅時間が長くなるこの夏は、そんなアイスコーヒーの風味を自ら淹(い)れて楽しみたい。湘南カフェ文化の草分け「カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ」(神奈川県鎌倉市)のオーナー、堀内隆志さんにお薦めの淹れ方を聞いてみた。

ヴィヴモン・ディモンシュの開業は1994年。鎌倉駅東口から伸びる繁華街「小町通り」を脇道に入った先にある。正面はガラス張りで、明るい日差しが開放的な店内を一杯に満たす。夏の看板商品であるアイスコーヒーの品ぞろえも豊富だ。

一つは深煎りのブレンドをネルドリップで淹れた、コク深い「カフェ グラッセ」。店ではボトルで提供し、お客が自らグラスに注ぎ入れる。グラスの中にはコーヒーを豆の形に凍らせたかわいらしい氷が入っている。

同じく深煎りの豆をダッチコーヒー(水出しコーヒー)専用のタワーで入れた水出しのアイスもある。このほか、自家焙煎(ばいせん)したコーヒー豆はどれでも、急冷式(お湯でドリップしたコーヒーを氷の入ったグラスに注いで冷やす)のアイスを提供している。

アイスコーヒーの作り方はこの急冷式と水出しの二通りあるが、堀内さんが自宅で愛飲しているのが、作り置きもきく水出しだ。

「水出しの良さは口当たりが滑らかでのどごしがいいこと。深煎りでも角がとれた優しい味わいになります。だから麦茶代わりにスイスイ飲める。香りや苦み、キレを楽しみたいなら急冷式がいいけれど、日常的に楽しむなら水出しがお薦め。二つの方式を使い分けるといいですね」

水出し専用のタワーは高価で抽出に時間がかかる。だが今は、技術を問わずに短時間で抽出できる安価な器具が販売されており、初心者でも気軽に水出しアイスを楽しめる。堀内さんが自宅で使用しているのはAGCテクノグラス(静岡県吉田町)の「iwakiウォータードリップコーヒーサーバー KT8644-CL1」だ。

2時間で抽出完了 深夜の焙煎前にも1杯

主な構造は水タンクとフィルター付きカップ、ポットの3つの部品のみ。フィルターにコーヒー粉40グラムを入れ、450ccの水を満たしたタンクを上にセットすれば、2時間ほどでポットに約440ccの水出しアイスが抽出される。コーヒー粉はあらかじめ水で湿らせるが、堀内さんは粉をボウルにあけて大さじ2~3杯の水をかけ、全体になじませてからフィルターに詰めている。

「夏の間は自宅に水出しアイスを常備していて、夫婦で何杯も飲みます。味はお好みですが、自宅では普段、深煎りの中細挽(び)きです」

堀内さんは週5日、夜中から朝方にかけて豆を焙煎する。その作業の前にも水出しアイスをゴクリとやる。自家焙煎を始めたのは開業から十数年たった2010年だ。それまでは札幌市の有名店の斎藤珈琲から焙煎豆を仕入れていた。カフェ業界でカリスマ視される堀内さんも、今の運営スタイルを固めるまでには、好奇心のおもむくままの"寄り道"もあれば、大きな心境の変化もあった。

「子供の時から凝り性で、好きなことにのめり込む性格」の堀内さんは、学生時代にバイト先の仲間の影響でフランス文化に興味を抱いた。数えきれぬほど映画を見て、流通業に就職してからは休暇のたびにフランスを訪れた。そこで市民の日常に溶け込むカフェの存在にひかれた。当時の日本では、そうしたフレンチカフェはまだ珍しい存在だった。

「そのうち、バイト時代に面識を得た美術作家の永井宏さんらアーティストと交流するなかで、自分の好きなことを形にする仕事をしたい、という欲求が高まっていったんです。自分らしく何かを表現して生きたい、と。そんな気持ちが爆発しそうになって、会社を辞めました」

26歳の堀内さんが「自己表現」の場として選んだのがカフェだった。自分の好きなものを織り交ぜながら、マスターとして「いい時間を過ごす場所」をつくりあげること。それが堀内さんなりの自己表現になった。

例えば店構え。好きなフランス映画の監督の一人にジャック・タチがいる。店内のしつらえはタチのコメディー作品「ぼくの伯父さんの休暇」に出てくる海辺のホテルの食堂をイメージした。ただし店名は、永井さんの文章に登場するフランソワ・トリュフォーの作品「日曜日が待ち遠しい!(Vivement Dimanche!)」からとった。

震災が転機に 「自己表現の場」カフェに集中

「いろんな目的で来たお客さんが『ここでいい時間を過ごせたな』と思える場所には、タチの映画のようなユーモアが欠かせません。大きなプリンがドンと乗ったパフェの形とか、新商品のレモンパフェの名前は店名をもじった『レモンシュ』にするとか。カフェ グラッセのコーヒー豆形の氷もそうです。お客を楽しませようというサービス精神は旺盛です」

堀内さんは店奥のカウンターの中で作業しながら、サッカーの司令塔がキラーパスの出しどころを探るように、頻繁にフロアにまなざしを向ける。お客はリラックスしているか。何か店員に言いたそうにしていないか……。立ち働きながら一瞬たりとも気配りを忘れない。

堀内さんにはブラジル音楽評論家という顔もある。「ブラジル音楽特有のサウダージ、郷愁が魅力的で、波長が合ったんですね。それで2000年代、研究にのめりこみました」。02年にはボサノバ界のミューズ、ナラ・レオンのコンピレーションアルバム制作に携わり、鎌倉にブラジル雑貨の店と、ブラジル音楽のCD店も開いた。

だが09年、レオンの伝記の監修に携わったのを機に、研究に一区切りをつける気持ちになったという。同じ頃、斎藤珈琲のオーナーが体調を崩し、従来の豆が調達できなくなった。自家焙煎を始めたのはそんな理由からだ。そして翌11年。

「東日本大震災で母方の親戚が被害に遭いました。これが自分を見つめ直すきっかけになったんです。もっと太く、濃く生きたいという気持ちが強くなった。それまでは店を留守にすることもありましたが、生豆を選んで、焙煎して、抽出してと、この店のすべての仕事に全力を注ぐことにしようと。それで雑貨とCDの店を閉めました」

その後、メニューではスペシャルティコーヒーにも力を入れ、傍からは寄り道に見えたブラジル音楽研究も、今では店の個性の一部となっている。居心地のいい場所を表現する手段が増え「震災以降はものすごくやりがいを感じています」。だがコロナ禍は、その自己表現の場である「店」の存在意義をも揺るがしている。

「この店が替えのきかない存在にならないとダメだなと思います。顧客のコミュニティー作りも大事で、それについては10年前からすごく意識しています。それにはもっと自分が濃い存在になって、店の求心力を高めなきゃいけない」

今、神奈川県のFM3局でコーヒーや音楽について語る番組に出演している。これもファン開拓の貴重な手がかりになる。さらに「コロナ後」ならではの、顧客への新しいアプローチ方法に思いを巡らせている。

「お客の自宅でこの店の『場』が再現できる手段は何なんだろうとか、通販で何ができるんだろうとか。先日はインスタグラムで店のライブ中継をしてみました」

柔らかい発想とフットワークの軽さは堀内さんの持ち味だ。その好奇心のアンテナは新しい自己表現の手立てを探ろうと感度を一段と高めている。「ディモンシュに行く日が待ち遠しい!」という客を一人でも多く増やすために。

(名出晃)

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