アバルト595Cピスタ 小気味よくキュートでコンパクト

2020/8/30
「ピスタ」の名を冠しているが、扱いにくさは皆無だ

ピスタの名に驚くなかれ

今回発売された595/595Cのピスタも国内240台の限定モデルである。595が146台、オープントップの595Cが94台で、それぞれに5段MTと5段ATが用意されており、しかもMT仕様車のほうが多い。標準ラインナップの「595Cツーリズモ」はクラッチレスのいわゆる5段MTAのみなので、5段MTの595Cは希少な存在となる。この辺の微妙な仕様の差もなかなか巧妙だ。ターボエンジンを搭載するアバルト595(当初は「アバルト500」だった)は言うまでもなく500のスポーティーモデルであり、ほんの少しピリ辛風味という位置づけである。595Cピスタ用1.4リッター直列4気筒マルチエアターボエンジンは、165PS/5500rpm、230N・m(23.5kgf・m)/2250rpm(スポーツモード時。ノーマル時は210N・m/2000rpm)を発生。これは標準仕様の595に比べて20PS増しであり、さらにこの上に「コンペティツィオーネ」用の180PS版も存在する。

フロントに積まれる1.4リッター直4マルチエアターボエンジンは標準モデルよりも20PSアップの最高出力165PSを発生する
ヘッドレスト一体型スポーツシートは写真のタイプとバックレストがダイヤキルティングのタイプの2タイプが用意される。ただし、注文時にどちらかを指定することはできないという

いかにも攻撃的な「ピスタ」というサブネームが付いてはいるけれど、あの「フェラーリ488ピスタ」のような超高性能スペシャルモデルではなく、あるいはかつての「695ビポスト」のようなアスファルトラリー用の競技車さながらという超硬派モデルではないのでまったく身構える必要はない。ピスタとはイタリア語でサーキットの意味だが、カタルーニャサーキットのレイアウトに似ているが、どこかはっきりしないコースのバッジをはじめとしたコスメティックな装備が主なものである。高性能エキゾーストシステムの「レコードモンツァ」も備わるが、この4本出しシステムはこれまでにもモデルによって使われてきたもの。古い人には“レコルド”でないと通じないあれだ。

リアにはサーキットのコース図と「Pista」ロゴが刻まれたバッジがあしらわれる

ちょうどいい切れ味

電動ソフトトップを備える分だけ若干重いが、それでも車重は1160kg、それにターボエンジンだから不足のあるはずはない。クラッチをつなごうとすると自動的にエンジン回転数を持ち上げ、発進をサポートするシステムも付いているおかげで、街中でも扱いは楽チンだ。山道ではほんの少しだけターボラグが気になる場合もあるが、何しろMTなのでそこはドライバーがカバーすればいい。ダイレクトなマニュアルで微妙な加減速までコントロールできる小気味よさは、CVTばかりの国産コンパクトカーとはまるっきり別次元である。

乗り心地もそれなりに穏当である。とはいっても装着タイヤがノーマル595の16インチから17インチに一回りサイズアップされており、さらに足まわりも引き締まっているようだが(コニの機械式可変FSDダンパーがリアに装着されている点がスタンダードとは異なる)、固くストロークを拒むようなものではなく、十分に快適と言える。ホイールベースが2300mmしかないコンパクトなFWDの右ハンドルマニュアル車となれば、ドライビングポジションが気になるところだが、ペダル類もオフセットしておらず、ヒール&トーも問題なく行える。この辺も人気の理由なのだろう。小気味よく生きがいいうえにで伊達(だて)で、しかも価格も身近なサブコンパクトカーは他にない。ヒットというより、もう立派なスタンダードナンバーである。

(ライター 高平高輝)

■テスト車のデータ
アバルト595Cピスタ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3660×1625×1505mm
ホイールベース:2300mm
車重:1160kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:5段MT
最高出力:165PS(121kW)/5500rpm
最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)/2250rpm
タイヤ:(前)205/40ZR17 84W/(後)205/40ZR17 84W(ミシュラン・パイロットスポーツ3)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:361万円/テスト車=366万6100円
オプション装備:Wi-Fi対応ドライブレコーダー(4万2900円)/ETC車載器(1万3200円)

[webCG 2020年7月31日の記事を再構成]

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