友人から投票を頼まれる
脚本家、中園ミホさん
選挙があるたびに、お気に入りの政治家に票を入れてほしいと頼んでくる友人がいます。普段はとてもいい方なのでお付き合いしていますが、選挙が近づくと嫌な気持ちになります。「いいよ~」と言って軽く受け流せばいいのでしょうが、投票はとても個人的なことだと思うのです。(大阪府・30代・女性)
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選挙の時期だけ電話をかけてくる方が、私にもいます。だから電話が鳴るだけで、それがどなたで、何の用件かがだいたい分かります。
以前は早く電話を切りたかったので、「分かりました、分かりました。そんないい方なら入れます」と答えていたんです。でも、そうやって嘘(うそ)をついている自分にだんだん嫌気がさしてきました。
あるとき、そばで聞いていた子供から「本当に入れるの?」と尋ねられました。まだ子供が小さかったので、「ああ、これは教育上いけないことだ。その方にも失礼なことを自分はしている」と反省しました。
そんなこんながあって、一時期は、その方からの電話に出るのが憂鬱なこともありましたが、最近は「ほかに入れたい人が決まっているので」とはっきり答えるようにしています。
「だれ?」と聞かれたら、「それは答えられません」と言います。実を言えば、まだ決めていないことも多いのですが、それくらいの嘘は許されると思います。
相談者さんがおっしゃるとおり、投票は個人的なことですよね。他人にそんな大事なことは決められたくないという態度を、角が立たないようにちゃんと見せることが必要ではないでしょうか。
ただ私は、はたと思ったのです。これまで公約はまともに読まず、ただ感じがよさそうな人だからとか、有名な人だから大丈夫だろうとか、雰囲気で投票することも少なからずありました。もし、その方から「どうしてその人にしたの?」と聞かれたときに、ちゃんと答えられるだろうか。論破されて、たじたじとなってしまうのではないか。
きちんと政治に向き合っているのか突きつけられているような気になって、私は公約をきちんと読むようになりました。その方はいまも選挙のたびに電話をかけてきて、やっぱり迷惑なのは事実ですが、おかげで選挙に臨む意識を変えられてよかったと思っています。
相談者さんも、そんなふうに考えてご対応なさったらいかがでしょう。もし、それで相手とけんかになってしまうのであれば、それだけのご縁だったということで構わないと思います。
[NIKKEIプラス1 2020年8月1日付]
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