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写真はイメージ =PIXTA

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SFが人の本質を問い、未来を拓く

私の学びの源泉として挙げられる第一のものは、書籍、その中でもSF(サイエンティフィック・フィクション)です。そして(私の独善的見解によれば)書籍のあらゆるジャンルの中で、SFこそが、最もヒトの本質に迫るものなのです。

SFにはいくつかの「類型」があります。

ファーストコンタクト:『未知との遭遇』『コンタクト』『三体』など
人工知性:『2001年宇宙の旅』『青い星まで飛んでいけ』など
ロボット:『われはロボット』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』など
:『百億の昼と千億の夜』『BRAIN VALLEY』『ハル』など
進化:『幼年期の終わり』など
超能力:『龍は眠る』『光の帝国 常野物語』など
電脳世界:『ニューロマンサー』『サマーウォーズ』など
反理想郷(ディストピア):『1984年』『五分後の世界』など

その各々で、読み手はヒトへの本質的問いに直面します。たとえばファーストコンタクトものでは、「コミュニケーションとは何か」が問われます。そもそもコミュニケーションとは何なのでしょう。情報の伝達? 交換? 変化? その前に、情報の定義は? 伝達のためのプロトコル(手順)は? 情報評価のためのクライテリア(基準)は?

相手が全くの異世界から来た者である場合、「挨拶」とはなんでしょう。音か光か、殴り合いか抱擁か。好意と悪意はどう表現されるのか、そういった人間類似の感情などあるのか。そもそも生死は同じ定義か、死(活動停止?)は相手にとって忌むべきことなのか……。まともなコミュニケーションの成立は、かなり絶望的です。コミュニケーションとは、膨大な「前提条件」の上で成り立つ、極めて精妙なガラス細工なのです。

でもSFでは、地球という同じ環境に育つ似た者同士のお話では決して実現することのない、決定的な「対比」の場が生み出せます。SFとは、ある本質的なテーマを、純粋かつ徹底的に議論・表現するための理想的な思考実験の場なのです。

そういった実験場を、幹部の研修教材として使う組織も出てきました。かのアメリカ海兵隊です。海兵隊戦闘研究所 未来理事会は2016年、SFコンテストを開催し、最終的に上位3つのSF作品が上級士官の訓練用教材となりました(2017年のWIRED記事より)

責任者曰く「海兵隊の上級士官が、今後待ち受ける脅威をこれまでとは異なる方法で想像できるようにする」ことが、SFを用いた理由でした。

近未来を舞台にした、リアルでエキサイティングなSFといえば映画にもなった『火星の人』(映画題名は『オデッセイ』)、そして『Gene Mapper』『オービタル・クラウド』『ハロー・ワールド』『おうむの夢と操り人形』など秀作を連発している藤井太洋作品が抜群です。

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