小泉孝太郎さん 控えめな姿で積み上げた実績のすごさ

篠原涼子さん主演の連続ドラマ『ハケンの品格』(日本テレビ系)が、好評のうちに最終回を迎えました。約13年ぶりの続編となるこのドラマは、一匹おおかみのスーパー派遣社員・大前春子が主人公。食品会社S&Fを舞台に、「働き方改革」「アウトソーシング」「AI導入」などをテーマに掲げ、新しい時代の働き方や働く人の品格を問うストーリーを描いてきました。

(イラスト:川崎タカオ)

今回のドラマには前作から続く登場人物も多く、なかでも小泉孝太郎さんが演じる里中賢介は、13年の時を経てマーケティング課主任から営業事業部営業企画課課長に出世した重要人物です。里中は右肩下がりの会社の救世主として大前春子を呼び戻し、良い管理職でありたいと不器用ながらも汗をかき、真摯に誠実に人や物事と向き合っていきます。その姿は、主任時代から変わっていませんでした。

昇進しても変わらない人柄

13年ぶりに里中を演じた小泉さんは番組の公式サイトにおいて、「僕が演じる里中は、主任から課長に昇進してはいますが、彼の持つ人柄は変わっておらず、立場が変わったからこその悩みや目線は、きっと視聴者に近いものだと思うので、里中を通していろんなことを感じていただけたらうれしいです」とコメントしています。

この里中の一貫して真摯で誠実な人柄というのは、世の中が持つ小泉さんのイメージにぴったり合います。

実際、主演の篠原さんはドラマの紹介番組のなかで小泉さんの人柄について「里中課長の人柄は、まさに小泉孝太郎さんそのまんまです」と語っていました。また、別のドラマで共演経験のある女優の中山忍さんは、トークバラエティー番組のなかで「小泉孝太郎さんを嫌いな女の人はいないと思う」と、小泉さんの人柄を称賛していました。

一方で、同性からのウケが良いのも小泉さんの特徴です。俳優仲間のムロツヨシさんとの交遊エピソードは多くの皆さんが知っていることでしょう。お二人の出会いは、映画『交渉人 真下正義』(2005年公開)。小泉さんは、ムロさんがまだ人気俳優となる前の段階から交流を深めていました。

当時のエピソードについてムロさんは、小泉さんと2人旅をする番組のなかで次のように語っています。

「『もうちょっと時間はかかるけど、絶対に(ムロさんは俳優として)大丈夫だから』って言ってくれていたんですよ。『絶対』という言葉を使ってくれたから、その言葉を、嘘つきにさせたくないから頑張ろうと気合を入れました」と無名時代の自分を鼓舞してくれた小泉さんの言葉を振り返っていました。

一方、小泉さん自身もテレビのトーク番組で、ムロさんが主催する舞台「muro式」を通したムロさんの変化について、次のように語っています。

「自分の親友がまったく無名だった時から、雪だるま式に大きくなっていくのを見てきました。今や満席のお客さんを見て涙がこみ上げてきました。自分の成功よりムロさんの成功の方がうれしかったですね」

このように穏やかで優しく品性あふれる人柄こそが、小泉さんの男女問わずの人気につながっているように思います。

ビジネスの世界でも頼れる不言実行の人

一方で、『下町ロケット』、『ブラックペアン』、『グッドワイフ』(全てTBS系)のドラマでは、敵役や上昇志向の強い役柄を好演し、役者として幅広い演技力の持ち主であることも証明されました。

「いい人」であろうが「癖のある人」であろうが、あらゆる役どころを演じ分け、しっかりと静かに穏やかに結果を残す……。それが小泉さんの個性と言えるのかもしれません。

この「静かに穏やかに結果を残す」、言い換えれば「不言実行力」を発揮するのはとても難しいことです。

ビジネスにおいても人生においても、「有言実行」や場合によっては「有言不実行」の方が多いのです。

ビジネスにおいて、「この事業を始めます!」「このイベントを開催します!」といったキックオフ宣言は、打ち上げ花火として華やかですし、アピールしていく熱意が生まれやすいものです。その段階では士気が上がり、はつらつと仕事に臨める人が多いのかもしれません。ですが、それを継続し、結果を残すことは難しいのです。

個人においても同じです。よくSNSなどで「私はこれを始めます!」「これからこれを実現させます!」という宣言は数多く見かけますが、それらが継続され、結果につながったことを報告する投稿は、少ないのが実情です。

このような「有言不実行」を続けていると、次第に人からの信頼を失ってしまいます。

そうしたなか、小泉さんの場合は、まさに「不言実行」。決して自らアピールしたり、自己顕示したりすることはありません。有名人である家族のエピソードも聞かれたら話すというスタンスです。

ですが、自分では話さないものの、親友のムロさんには「番組のネタになって、それでムロさんが注目されるならば小泉家の話をしてもいいからね」と伝えていたそうです。

自らアピールするでもなく

自分の個性や成果、名声を高めるために自ら「自分はこんな人物です」「これからこれを頑張ります」といった発信をするのではなく、今の役割の報告に留まり、静かに穏やかに結果を残し続ける……。

自ら言葉にしなくとも、作品や仕事の結果を通して自己開示(場合によっては自己アピール)が成立しているのです。こうした「不言実行力」のある人は誰からも信頼されるようになります。

もちろん、業種や職種によっては、常に広報・PR・告知をし続けなくてはならない人もいることでしょう。周囲に、社会に、世の中に知ってもらうための言葉や行動、活動は必要です。ただし、本当に良質な人、モノ、コトであれば周囲や社会が評価し、次第にその良さが伝わっていくものです。

最低限の告知が浸透したら、「不言実行力」を生かして、静かに穏やかに結果を残し続けていくことを意識してみるとよいのかもしれません。

余談や余計なものを自ら発信しなくなった時、公私共にこれまでとは違った景色が見えてくるのではないでしょうか。

小泉孝太郎さんの足跡からは、そんな気づきを得ることができます。

今は対面のおしゃべりを自粛せざるを得ない社会環境にあります。

「静かに穏やかに不言実行する」

与えられた役割を静かに粛々と担っていくその心がけこそが、新しい生活様式のなかで実を結ぶ時代を迎えているように思います。

鈴木ともみ
経済キャスター。国士館大学政経学部兼任講師、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。テレビ、ラジオ、各種シンポジウムへの出演のほか、雑誌やWeb(ニュースサイト)にてコラムを連載。株式市況番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重TV・ストックボイス)キャスターとしても活動中。近著に「資産寿命を延ばす逆算力」(シャスタインターナショナル)がある。
注目記事