トップシェア商品をさらに磨き込む

満を持して78年6月に発売した「黄金の味」は、関西人にも受け入れられた。「フルーツが約3分の1も入っているので、フルーツから出る甘みとうま味が大幅に向上しました。リンゴなどの繊維が生みだす『とろみ』が強くて高級感があり、価格を焼肉のたれの2倍にしても問題なかったそうです」(清水部長)。

210グラムで300円という価格は焼き肉用たれ市場では破格だったが、初年度は26億円を売り上げる大ヒットとなった。「黄金の味」の発売前は、エバラ食品の年間売上高が約80億円だったので、いかにインパクトの大きいヒット商品になったかが理解できる。「黄金の味」の売上高は82年に先行商品「焼肉のたれ」に並び、その後は逆転した。

フルーツをたくさん入れてうま味が増した結果、副産物も生んだという。「塩分量を減らすことができました。今では他社からも減塩の調味料が多く出ていますが、そんな減塩商品と比べても『黄金の味』は塩分量が控えめになっています」(清水部長)。

「トップシェアに安住せず、商品開発を重ねたい」と、清水部長は意気込む

「黄金の味」はエバラ食品の成長をけん引する主力商品となり、以後は工場でも「黄金の味」をメインに位置付けた。清水部長は「フルーツが多いと、しょうゆなどの液体調味料と混ぜるのが難しくなります。品質を安定させるため、『黄金の味』専用の撹拌(かくはん)釜を機械メーカーに作ってもらい、液体とフルーツピューレを均一に混ぜるように工夫しました。昔は原料や素材のサプライヤーの生産ラインまで改良していただいて対応しました」と、生産面の改良ポイントを解説する。

焼き肉カルチャーの多様化受けてリニューアル

そうした取り組みを積み重ねてきたことが、2017年に実施した『黄金の味』の発売以来となる大幅リニューアルにも生きたという。清水部長は「家庭での肉の食べ方が非常に多様化してきました。焼き肉だけでなく、ステーキを焼くこともあれば、ローストビーフを低温調理で作るなど、楽しみが広がり、それらの調理法に合うソース、たれが台頭しています。『黄金の味』は甘口、中辛、辛口をリニューアルしたほか、『さわやか檸檬(れもん)』(20年2月発売)を追加しました。トップシェア商品ではありますが、まだまだ消費者に手に取ってもらう工夫はできると思います」と意気込む。

海外にもステーキソースやバーベキューソースはあるが、日本の消費者向け焼き肉のたれは、選択肢の多さと味わいの深さで別次元と映る。その扉を開いたエバラ食品は1つの食文化を生んだとすら言えそうだ。消費者と食肉の「間柄」が変わるのにつれて、家庭での新しい焼き肉体験を提案してきたエバラ食品。健康志向が強まる一方で、バリエーションが一段と広がりつつある日本の食卓の一歩先を見据えた商品開発はもう始まっているはずだ。

(ライター 三河主門)

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