2020年までに女性管理職を30%に増やそうという政府目標の達成は難しくなった。日経グループが今春まとめた「企業の女性活躍度調査」では、回答した542社のうち30%を超えたのは6%にとどまる。17年という長い年月をかけても実現できない理由は何か。企業の課題、女性自身の課題、それぞれについて識者にきいた。
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早い段階で責任ある仕事
――女性の登用がなかなか進みません。
「女性の人数を決めるクオータ(割当制)導入を、との声がある。欧州では導入例もあるが、あくまでボードメンバーだ。組織の中のリーダーシップ層を見ると、程度の差はあれど課題は各国共通。優秀な女性が長く働き、決定権を持つポジションを目指すようなプロセスをどう作るか。どの国もダイバーシティ(多様性)が完璧ではない」
「日本は女性の就業率が先進国の中で低かったが、最近は7割超で、欧米を上回る。今は非正規社員が多いが、どう正規を増やすか。女性に自信を与え、責任ある職に就けるようにすることが今やるべきこと。クオータ制でいきなり引き上げるのは難しい」
「目標が達成できないのは政策や税制、教育、無意識のバイアスなどいろいろある。親にも先生にもメディアにも責任はある。根深い問題を一つずつ解決しない限り、政府批判だけでは解決しない」
――企業の課題とは。
「企業にとって一番価値のある資源は人材だ。生産年齢人口は年々減り、人材争奪が始まっている。経営者は最も優秀な人に来てもらえるような職場環境をつくる必要がある。コロナの影響で働く環境は大きく変わった。優秀で野心のある人は自分の能力が生かせる組織を選ぶ」
「優秀な人材確保は長期の投資だ。早く辞めるのを防ぐために何が必要か。女性には出産などライフイベントの前に責任ある仕事を与える“ストレッチアサインメント”が有効だ。モチベーションを高く維持することができる。能力のある女性に『このポストにトライしてみませんか』と働きかけると、会社に必要とされていると実感する。『結婚しているから断るだろう』などと決めつけてはいけない。本人に打診し、断られたらもう一度打診すればいい」
――女性が就職時に一般職を選ぶ傾向があります。
「日本の総合職・一般職はクレージーシステムだ。転勤は大変、総合職になったら結婚が難しい、など聞けば、保守的になるのは当然。私だって20代なら一般職を選ぶ。ただ、それでどれだけ多くの才能が過小評価され、開花しないままになってしまったか。企業は男女を問わず優秀な人材を採用し、最大限能力を引き出すことに注力すればよい。ダイバーシティは社会的責任(CSR)というより生き残り戦略だと考える経営者は動いている」