靴のエイジングを楽しむ 五輪メダリスト・松田丈志氏アクアテラ社長 松田丈志氏(下)

――ファッションへの関心が高まったのは引退してからですか。

「服に関しては現役の時のほうが興味がありました。ふだんは水着とジャージーで過ごすので、ものすごくおしゃれをしたい、という欲求みたいなものがありました。アスリートならではのストレスもあって、休みになったら気分転換で何かしら買い物をしていました。海外遠征では週に1日くらい休みがあるので、そのときに買い物に出るのが楽しみでした。オーストラリアではローカルブランドでハンドメードの眼鏡を作りました。周りにもファッションが好きな選手は多かったです」

競技団体、自分で稼ぐ気構えが必要

――出身地である宮崎県延岡市のスイミングスクールで実力を磨かれました。

「よく僕の記事で『ビニールハウスのヒーロー』という表現が出てきますが、それは延岡のスイミングクラブが自前のプールを持たず、公立中学校のプールを借りて運営していたため、外観がビニールハウスのようだったからなんです。僕の経営者としての原点は、このビニールハウスプールだったんだと今更ながらに思います」

「練習する子供の会費は安くて、コーチはボランティアで遠征費も出るか出ないか。それでも懸命に頑張って下さった。ボランティアには強い思いと熱意が必要で、コーチは苦労したと思います。日本のスポーツは、こうしたボランティア精神に支えられている面がある。そんな状況を変えられないか、という気持ちが、ビジネスに携わる強い動機になりました」

――各種競技の団体やスポーツ界が優秀な人材の獲得に苦労しているのは、報酬の問題があるからだともいわれています。

「たとえば水泳連盟のスタッフも現場のコーチも、他に収入源を持ちながらボランティアで活動を続けてくれています。よほどスポーツへの強い思い入れがなければ長続きしません。補助金でなんとかなるという価値観でいると、若い世代がついてこないのではないかという危機感があります」

現役を引退したあとに実業界に飛び込んだ。アスリートが引退後も輝けるような仕組みを作りたいと語る

――自分たちが稼いだお金で自立することが必要だということですか。

「オーストラリアや米国は統括団体が自分たちでお金を稼ぎ、選手の強化や競技の普及に回しています。日本は水泳、陸上と競技が細かく分かれているうえ、それぞれに数多くの連盟が存在しています。本来なら各競技を横断的にまとめる1つの団体があればいいのかもしれません」

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