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自分の鼻に指を入れられ満足? 中米サルの奇妙な儀式

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

中米コスタリカに生息する、あるノドジロオマキザルの群れでは、サル同士が互いの体毛を引き抜いたり、他のサルの鼻の穴に指を突っ込んだり、相手の口をこじあけたりする。こうした振る舞いに明らかな目的はなく、中には相手を不快にさせる行動や、危険を伴う行動もある。

群れの中でもとりわけやんちゃな、ナポレオンと名付けられた個体の場合、ほかのサルの毛皮から毛の束を抜き取って、それを自分の口に入れているところを何度も目撃されている。

「相手のサルは自分の体毛を取り返そうと、ナポレオンの口をこじあけるのです」と、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の進化人類学教授であるスーザン・ペリー氏は言う。氏と同僚のマルコ・スモラ氏は、ノドジロオマキザルの独特かつ一見無益なこの行動について、2020年6月29日付で学術誌「Philosophical Transactions of the Royal Society B」に論文を発表した。

ペリー氏は、コスタリカのロマス・デ・バルブダル生物保護区にすむノドジロオマキザルを30年にわたり研究しているプロジェクトの責任者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(協会が支援する研究者)でもある。

同国内の別の場所にすむノドジロオマキザルの群れでも、こうした行動はときどき見られるものの、ロマス・バルブダルのサルたちの間ではこれがとりわけ盛んなことにペリー氏は気がついた。氏が率いる研究チームは、ロマス・バルブダルにおいて、15年間で50頭以上の行動を約450件記録しており、この群れに属する個体の80パーセント近くが、ほかの個体とこの手のやりとりを少なくとも1回は行っていた。

論文によれば、サルたちの奇妙な振る舞いは、絆を確かめるための儀式的な行動にあたるという。また、これほど多く記録された例は今回の群れだけであることから、これはオマキザルが独自に文化を発展させられる証拠にもなるという。

「絆の検証仮説」

ノドジロオマキザルの脳と体の大きさの比率は、チンパンジーとよく似ている。これは一般に高度な認知能力と社会システムの存在を示唆していると、米ジョージア州立大学の霊長類学者、サラ・ブロスナン氏は言う。

だからこそペリー氏は、不快な儀式に時間と労力を費やすことには、それなりの理由があるはずだと考えた。儀式的な行動の多くは反復的な一連の動作からなっており、明確な目的を持っていないものだ。

「サルがほかのサルの鼻の穴に指を突っ込んでいる様子を目にした人は、本能的に嫌だという感情を抱くものです」と、ブロズナン氏は言う。「非常に驚いたのは、鼻に指を突っ込まれている個体が、実に満足そうにその場に腰を落ち着けていたことです。その様子は、理由がなんであれ、これが彼らにとって重要であることを示唆しています。そうでないなら、あんなことをするはずがありません」

この行動の理由を解明することを目指したペリー氏の研究は、1970年代に進化生物学者のアモツ・ザハヴィ氏が初めて提唱した、絆の検証についての仮説に基づいている。

「ザハヴィ氏の『絆の検証仮説』の背景にある考え方は、一部の動物たちは、ほかの個体の反応を評価するために、相手にストレス要因を与える、というものです。そうすることによって、相手が自分に対してどう感じているのか、率直な反応が得られます」と、ペリー氏は言う。人間社会でも昔からよく言われるように、揉めごとは人の本性を明らかするというわけだ。

ナポレオンの場合、その行動は、彼の攻撃性に接したほかの個体がどの程度落ち着いていられるか、またほかの個体が体毛を取り戻すために、無防備な指を進んで自分の口に入れてくるかどうかを検証する役割を果たしている。ナポレオンの「絆の検証の方法はとくに独創的」だと、ペリー氏は言う。

絆の検証という慣習がもっとも有益なのは、関係性があいまいな場合だろうと、ペリー氏は考えている。なぜなら、ほかの個体の反応や、不快なことをどのぐらいまで許容できるかなどの情報が得られるからだ。これは将来の社会的な行動の指針となり、また味方を作るうえでも役に立つ。

何の役にも立たない「聖なる物体」

ノドジロオマキザルの儀式にはこのほか、一見何の役にも立たないように見える物体の受け渡しを何度も繰り返す、というものがある。これらの物体は、一時的にとはいえ、特別な意味を持っていると思われるため、ペリー氏は「聖なる物体」と呼んでいる。

木の皮や毛の束などの「聖なる物体」を繰り返しやり取りすることも、オマキザルにとって、仲間との絆の強さを検証する方法のひとつだ。相手の口から物体を取り出さなければならないことがあるため、物体の交換はリスクを伴う。一方で、単にお互いじゃれ合ってでもいるかのように、物体を手渡しするだけの場合もある。

物体を介した交流を、ブロズナン氏は人間の子どもの外遊びになぞらえる。「子どもたちが遊びに使う小枝は、おそらく重要なものではないでしょう。それでも、彼らがそれを何度も受け渡したり、秘密基地に入るために入り口を特定のリズムで叩かなければならなかったりする事実は、大まかではありますが、あのオマキザルたちの行動の正体に近いと言ってもいいのではないでしょうか」

人間とオマキザルとでは、儀式も物への愛着も大きく異なるが、こうしたやりとりは、霊長類の進化や儀式の起源について考察するうえでの手がかりとなる。サルたちの儀式ははたして生まれつき身についているのか、それとも文化を通して学習されるものなのだろうか。

ペリー氏は今後、儀式化された交流が、サルたちの個体同士の関係を通じてどのように発展していくのかを研究する予定だという。もしかしたら、そのおかげで人間を含むその他の霊長類において、儀式がどのように発生・変化していくのかについて新たな知見が得られるかもしれないと、ペリー氏は述べている。

(文 CORRYN WETZEL、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年7月22日付]

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