ジープ最強のラングラー「ルビコン」 雨の泥道も平然

2020/8/23
試乗会が開かれたのは、夏季休業中の長野県のスキー場である。雑草が生い茂ったゲレンデは、徒歩で上り下りするのも困難な状態だった

限りなく普通に使えるマジもんの道具というカテゴリーは、その武骨さからして好き者の挑戦心や探究心をかき立てるわけだが、そういうベクトルで接する向きにもJL型ラングラーは全然ガマンを強いることのないものになっている。そこに昨今のキャンプブームなどもあって、ユーザーが飛躍的に増えたというのはよくわかる話だ。

とはいえ、ラングラーの核心は普通ならば徒歩でもたどり着けないような極地へ赴き、自然と対峙(たいじ)できる強烈な走破性にある。今回、FCAジャパンが用意してくれたステージは、その性能を示すにふさわしい、夏季休業中のスキーゲレンデだった。草生い茂る急勾配をわしわしと上り下りし、ジャンプ用のキッカーを登坂セクションに見立てて、その能力をしっかり味わってもらおうという企てだったわけである。

が、そのもくろみを台無しにしたのが梅雨前線だ。延々と降り続く雨にたっぷり水を含んだ草は、氷雪路並みに滑りまくって、とてもではないが登坂は厳しい。然(しか)るべきタイヤで走ったとしても、地表を掘りたくってはスキー場の冬季営業に差し障る。当初の予定は変更され、整備用の取り付け路を使って頂上まで上がり、そこからゲレンデをゆっくりと下るというプランに変更されることとなった。とはいえ、ゲレンデの標準的な斜面の角度は15°から20°くらいだというから、変にヨーがついてしまうと、たちまちぬれ草に車体をもっていかれる可能性も十分にある。

284PSの最高出力と347N・mの最大トルクを発生する、3.6リッターV6自然吸気(NA)エンジン。大排気量NAならではの、自然なトルクデリバリーも魅力だ

繊細でなければオフロードは走れない

試乗できたのはラングラーの中でも悪路性能を強化したグレード、ルビコンだ。その名の由来はカリフォルニア州・タホ湖のかたわらにあるトレイルロードで、ジープブランドの多くのモデルがテストに用いている。過去に2回ほど訪れたことがあるが、これでもかと続く凄(すさ)まじい岩場におののきつつも、のしのしとそこをまたぎ越えていくラングラーの走破力に、ひたすら驚かされっ放しだった。

優れたオフローダーに求められるのは、一にも二にも速度管理能力だ。より具体的に言えば、歩くような速度でもじわりと加減速をコントロールできる動力伝達系の設(しつら)えということになるだろうか。加減速の両面で最初の一歩となるトラクションを自在にコントロールできなければ、いかに優れた電子制御を備えていても難所を越えるのは難しい。

他の「ラングラー」と比べた場合、「ルビコン」シリーズのドライブトレインは8段ATのギア比は同じながら、最終減速比が3.454から4.100に低められ、またローレンジのギア比も2.717から4.000に変更されている
ジャンプ用のキッカーを越え、下り坂に差しかかる3ドアの「ラングラー」。ショートボディーの「ルビコン」は、日本では100台の限定モデルとなる

取り付け路とはいえ折からの雨でズルズルになった泥道を、ラングラーはゆっくりと、そして平然と進んでいく。ルビコンが標準装着するタイヤは“マッテレ”(=マッドテレイン)と称される土はけにたけたタイプとはいえ、登坂路でもスロットル操作に進路を取り乱すことはまったくない。あらためて、その扱いやすさに感心させられる。

頂上からの下りでは、副変速機をローに切り替えて1速ギアを選び、その上でヒルディセントコントロールを併用する。あとはゆっくり、そして真っすぐ車体を草の生い茂る緑の滑り台へと導くだけだ。ラングラーは路面をがっちりと捉えて、徒歩よりも遅いスピードでじわりじわりと歩を進めていく。

基本設計が高ければこその走破性

キッカー越えではボディー形状や骨格、アシのストロークといった、静的な(=電子制御などで可変しない)箇所の素性が優劣を大きく左右する。すなわちアプローチやデパーチャーのアングル設定が重要なわけだが、ラングラーは30°の急勾配もまったくものともしない余裕を備えている。ちなみに数値上は、41°の斜面に挑んでも36°の斜面から下りても、車体の前後を擦ることはない。

メーターパネルやダッシュボードのディスプレイには、走行に関わるさまざまな情報が表示される。写真はピッチ&ロールの表示。今回走った試乗コースの最大斜度は、31°に達した
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