しかし新型コロナの影響を受け、予定より早く3月下旬に帰国した。帰国後も留学先大学の授業を国内でオンライン受講していたこともあり、就活に本腰を入れ始めたのは5月半ばだった。

それでも「日本にいることで時差を気にすることなく動け、情報も格段に入りやすくなった」という。オンライン説明会やセミナーに積極的に参加。6月下旬に環境関連企業の内定を獲得した。

活動が出遅れた学生を救済しようと企業側も動く。伊藤忠商事は6月選考に参加できなかった学生を対象とした夏選考を7月に実施した。研究職に就く予定であった理系院生や教育実習などに参加した教員志望の学生などに交じって「留学先から急きょ帰国した学生もたくさん受けてくれた」という。

ソニーも秋採用を初めて実施する。通常の春選考のフローと同様、書類選考と複数回の面接を経て内定を出す。主に留学生を対象に21年10月入社も想定しているという。

ただ、こうした採用ルートを複数設ける企業は少ない。大半の企業の採用活動は依然として政府ルールである「3月説明会解禁、6月の選考解禁」に合わせて実施する。この時期に就活に取り組めないと学生は選考ルートに乗ることが難しくなってしまうのが今の就活制度の現状だ。

前述の私大によると、例年海外に交換留学した学生は6月ごろに帰国し、7割の学生が帰国後に急ピッチで就活を進める。残りの3割の学生は留年して、就活も1年遅らせるという。

「留学経験者は海外での文化や風習を理解し尊重するなど一般学生が持たない感覚を備える」(採用コンサルタントの谷出正直氏)。経済のグローバル化が進む中、こうした国際感覚と語学力を兼ね備えた留学経験者を求める企業は多い。

そのため、留学など幅広い経験をしてきた人を採用しやすくしようと、経団連は19年4月に時期にかかわらずに採用活動を実施する「通年採用」を推進していくことで大学側と合意した。今後の企業の対応に注目が集まる。

国内留学も手

新型コロナの収束が見えない中、これから留学しようと考えていた人は諦めモードだ。

明治大3年の男子学生は大学を休学し、20年4月中旬から約1年間、オーストラリアに英語の語学留学を予定していた。

目的は語学力を高めるため。英語検定試験「TOEIC」の高スコアをエントリーの条件にする企業も多く「英語力を付けてから就活に臨もうとしていた」と話す。

しかし感染拡大を受け、渡航1カ月前にオーストラリアから渡航制限が出た。「準備はすべて済んでいたのに、今後どうすればいいのだろう」とため息をついた。

留学をした場合、23年卒を考えていたが、留学が中止となり22年卒に切り替えた。今は仕事で英語力がそれほど求められていない企業を中心に、15社ほどのインターンにエントリーしている。

明治大就職キャリア支援センターの青木博氏は「『新たなチャレンジ経験が何かできないか』と考え、留学希望者には国内インターンや地方留学を勧めている」という。

収束が見えない新型コロナウイルス。学生が自由に学び、安心して就活できる環境が戻るのはいつになるのだろうか。

(企業報道部 鈴木洋介、仲井成志)

[日経産業新聞 2020年7月29日付]

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