花火、家庭用の9割が中国製 年5%のペースで値上がり
夏の風物詩、花火。本来なら全国各地で花火大会が行われる時期ですが、今年はコロナウイルス感染拡大の影響で全国各地の大小の花火大会が中止になっています。その分、近所で楽しもうと家庭用花火の売り上げは比較的好調。インスタ映えする花火が人気です。
主力の中国産が値上がり
花火は家庭用と花火大会用の打ち上げ花火に分かれます。家庭用は9割が中国産で値段はここ数年、毎年5%のペースで上がっています。値上がりの理由はなんでしょうか。以前は中国の人件費アップが花火値上がりの理由でした。さらに中国で花火製造がライセンス制となったのが理由です。
これまで中国ではどこでも作れていた花火ですが、爆発事故があったり、児童労働が問題になったりし、ライセンスを持つ工場じゃないと作れなくなりました。ライセンス取得の際には製造設備や生産工程が厳しくチェックされます。この費用がかかり、花火の単価に跳ね返っています。花火に使う火薬の材料となる硫黄が肥料用として新興国の需要が高まっているのも要因です。
セット商品が主流に
花火を販売するお店も変わってきました。昔はまちのおもちゃ屋さんに置いてありましたが、おもちゃ屋さんも減少。今ではコンビニやホームセンター、大型量販店が主流の販路です。複数の種類の花火をまとめたセット花火が多く、売れ筋価格帯は2000~3000円。花火単体の値段はじりじり上がっていますが、セット商品の値段自体はここ数年変わっていません。本数や組み合わせといった中身を調整しているからです。
市場は減少傾向です。大きな要因は3つ。少子化で子供自体が減っています。加えて30代から下の年代は家で遊ぶゲーム世代が多い。幼少期に花火で遊んだ経験が少ない。さらに都会では花火をやる場所が少なくなってきています。東京の蔵前にある老舗花火問屋、山縣商店の山縣常浩会長は「今年は大規模な大会のほか、コロナの影響で夏休みにPTAが開く花火イベントが中止になっている」と話します。山縣商店も割安なセット商品を売り出しています。
「煙少ない」花火が売れ筋
「子供に花火で遊ばせてあげたいけど、煙が近所迷惑になるかもしれない」。こうした声も多いです。そこで人気なのが煙が少ない花火です。煙が少ないので遊んでも近所から苦情が来にくい。さらにインスタ映えという要因も加わっています。煙がないほうが遊んでいる人と花火がきれいに撮れます。手持ち花火で中国産は1本数円~20円、国産で「煙が少ない」とうたっているものは40~50円と倍以上しますが、人気です。
今日の値段の方程式はこうなります。「家庭用花火の値段は煙の少なさで決まる」。新型コロナの終息が見通せないことや長梅雨もあり、なにかと重苦しい状況が続いています。線香花火を眺め、少しでもほっとする時間を作ってみてはいかがでしょうか。
(BSテレビ東京日経モーニングプラスFTコメンテーター)
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。
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