元ブルゾンちえみ「35億」発想はビヨンセと桃井かおり編集委員 小林明

テレビの平場で話すのはあまり得意ではなく、早い段階で「上から目線」から「素の自分」に切り替えたという  

自分の好きなものがうまく結集、でも得意ではなかったテレビの平場

――「花は自分からミツバチを探しに行きますか?……探さない。待つの」「味のしなくなったガムをいつまでもかみ続けますか……新しいガム、食べたくない?」――。どれもインパクトのある名言ですね。

「苦し紛れだったんですよ。養成所時代のネタ見せは、ホワイトボードに自分の名前を書いた順番にネタを披露するんですが、私はいつも一番最後に名前を書き、ギリギリまであれこれとあがいていた。当時はピン芸人だったので、良くも悪くも、そのあたりは直前まで融通が利くんです。『こんなのでいいのかなぁ』とネタには自信が持てなかったけど、披露してみたら、先輩に『あれ、面白いじゃん。いいと思うよ。テレビで使えそう』なんて意外に評価してもらえた」

「それで『へぇ、そうなんだ』と気を取り直し、ブラッシュアップを繰り返しながらネタを完成させていったんです。最初のセリフは『地球上に男は何人いると思ってるの?』ではなく、たしか彼氏にたとえたガムの種類がどうのこうのとかいう感じでした。イケメン風男子コンビのコージとダイキ(元ブリリアン)を『with B』として迎えたのも途中からです」

――独特の世界観でたちまち大ブレークします。

「自分の中で別々に育ててきた好きなものたちが、ある瞬間、うまく集結できたって感じですね。でも私、テレビの平場では面白いセリフがポンポンと出てこないんです。上から目線のキャラクターのままで話すのがあまり得意ではない。やはり限界がありました。自分とはまったく正反対のキャラクターでしたから……」

「もっと芸人として下積みしていたら、ほかに戦える武器が持てたかもしれません。でもデビューして1年あまりで運良くブレークしてしまったから、きちんと訓練ができていない。完全なスキル不足。そこで早い時期から『私、本当はそういうキャラじゃないので……』と素の自分に切り替えました。とはいえ、テレビにはお笑い芸人として出ていますから、『なぜ面白いことを言わないの?』という厳しい視線はヒシヒシと感じていました」

R―1でネタを忘れる大失態、「情けない…」真面目で不器用な自分

――17年2月の「R―1ぐらんぷり」に出場し、途中でネタを忘れるアクシデントがありましたね。

「もう、恥ずかしいというより、自分でも情けなかったですね。全力を出し切って敗れたのなら、それなりに納得できるでしょうが、途中でセリフを忘れるという初歩的なミスですから……。戦う土俵に上がる前にそんなミスをする芸人なんていませんよね。プロとしてやってもよいミスと、悪いミスってあるじゃないですか。私がやったのは悪い方のミス。『おまえ、なんでこんなミスしているんだ。そのミスじゃないだろう』って、ずっと自分を責めていました」

――責任感が人一倍、強いんですね。

「自分で考える以上に真面目で不器用なのかもしれません。仕事自体は楽しかったので、気にせずにお笑いを続けられればよかったんですけど、結局、続けることができませんでした。ブレークした1年目は仕事が次々と来るので、ひたすら卓球のように球を打ち返す状態。将来について考える余裕もないし、あえて考えないようにしていた。でもその翌年くらいから『自分が本当にやりたいのはお笑いなのか?』と真剣に悩むようになります」

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