「かつお節の原型は『古事記』にも登場するほど、日本人に長く親しまれてきました」と高津社長

――和食が2013年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されました。以降、何か手応えを感じることはありますか。

かつお節の原型となるものは、日本最古の歴史書「古事記」にも登場するほど、日本人に長く親しまれてきました。世界的にも「うま味」という言葉は以前より広がったと感じています。13年からは海外輸出にも力を入れるようになり、米国やカナダ向けのつゆの素や汁だし類の輸出も順調に増えています。さすがに今回のコロナ禍で今はストップしていますが、終息した暁にはEUや東南アジア方面への輸出開拓にも努めていこうと考えています。

――長い歴史を持つ会社の経営者として、日ごろ心がけていることは何でしょう。

常に考えているのは、人が集まっているところはどこか、ということです。かつて、それはデパートでした。それがスーパーに変わり、今は駅ナカでしょうか。その先に人が集まっているという観点でいえば、スマホもそうかもしれません。人が動くのは、何かきっかけがあるからであり、人と物事は常にセットで動くものだからです。

変化への対応力が重要なのは十分認識しています。その点、IT(情報技術)の分野では、にんべんはまだ十分キャッチアップできていない面があると感じており、無理してでも見極めないと、と思っています。幸い私が個人的に属しているトライアスロンの仲間に、ベンチャー企業の経営者の方がおられ、ITに詳しいので、教えを乞うようにしています。

――最後に、これからのだし文化の継承や食業界に対する展望をお聞かせください。

かつお節やだしを活用しバランスよい食事を口にする機会を今後、さらに広げていくとともに、人々が健康で笑顔になれる機会が増えていったら良いな、と思っています。かつお節・だしはまさに「味のインフラ」。にんべんのブランドステートメント「この国の味、ここから。」も、だしがこの国の食文化を育んできた、という信念に基づくものに他なりません。日本料理のベースになっているかつお節やだしの文化を広く世界に伝えていければと思っています。

高津伊兵衛(たかつ・いへえ)
にんべん13代当主で社長。1970年東京生まれ。93年青山学院大経営学部を卒業後、高島屋に入社し、横浜店に勤務。96年にんべんに入社、2009年社長に就任し、20年2月、13代高津伊兵衛を襲名。日本橋室町二丁目町会長を11年務め、現在は副会長。NPO法人日本料理アカデミー正会員。一男一女の父でもある。

(堀威彦)

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