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アイス、おいしさの決め手は空気の量 歴史をひもとく

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NIKKEI STYLE

新型コロナウイルスの影響で、自宅での食事が増え、手作りする人が増えている。本格的なスイーツなどにも挑戦する向きも多いという。ここで思い出すのが、子供の頃に科学雑誌に紹介されていたアイスクリームの手作り方法だ。

ミックス(乳、乳製品、糖類などを混ぜ合わせたもの)を注いだ金属のカップをボウルの中央に置いて、カップの周りに氷を敷き詰め、その氷に塩をふって寒剤(周りを氷点下まで下げる)とする。そしてミックスをかき混ぜるのだが、これが面倒で手が疲れたのを覚えている。

それに対して、ミックスを製氷皿に流し込んで手作りアイスを作ったことなども思い出すのだが、そのようにして作るアイスはシャリシャリしていたり、硬すぎたりして、市販のアイスクリーム類のようにはならない。その秘密は何だろうと思っていたのだが、その秘密を「オーバーラン」というのだと、最近知った。

オーバーランと言えば、着陸した飛行機が滑走路を飛び出してしまうことだと思うのだが、アイスクリーム製造では、もちろん違うものを指す。アイスクリーム製造は、家庭で作る場合と同じく、最初にミックスを作るのだが、これを静置したまま一気に凍らせるのではなく、撹拌(かくはん)しながら凍らせていく。

すると、ミックスの中に空気が抱き込まれる。このとき、出来上がった製品の量が元のミックスの量に対して増えた分の比率をオーバーランと呼んでいるという。オーバーランは、アイスクリームで90~120%というから、アイスクリームというものは実は半分ぐらいは空気でできているというわけだ。

ここで空気を食べさせられた、損をしたなどと思うなかれ。ふんわりおいしいパンやスポンジケーキも、泡で膨らんでいる。アイスクリームも、気体部分がおいしさの決め手だったのだ。

最近は家庭用のアイスクリームメーカーも通販サイトなどでよく見かけ、SNS(交流サイト)で話題にしている人も見かける。もちろん、それならば手間なく、上手にオーバーランさせることができるだろう。

アイスクリームといえば、筆者は最近、コンビニエンスストアで1000ミリリットルサイズのアイスクリーム(正確にはラクトアイス)を見かけて、一瞬意外に感じながらすぐに納得した。以前、そのアイスクリーム用ショーケースには、食べきりサイズのカップタイプとバータイプが並んでいたが、最近は大容量のものをよく見かけるようになった。

食品関連のメディアが伝えるところでも、新型コロナウイルスの影響で外出自粛と内食化の動きがある中、アイスもファミリータイプ(スーパーでよく見るのは2000ミリリットルタイプ)やマルチパックが例年よりも売れているのだという。

さて、普段の生活ではシャーベットやアイスキャンディーなども「アイスクリーム」、あるいはその略称として「アイス」と呼んでいることが多いと思うが、実は法令ではこれらを明確に分けて扱っている。そこをちょっとチェックしておきたい。

通常、「アイス」と呼んでいるものは、まずアイスクリーム類と氷菓に別れる。氷菓は果汁などを凍らせたアイスキャンディーやシャーベットなど。

氷菓は法令では一般食品という扱いになっているが、それに対してアイスクリーム類は乳製品に分類されている。やや専門的な話ではあるが、この乳製品というくくりは、呼称、そのための規格などが厳格に定められていて、一般に衛生基準も厳しい。それは、乳製品が一般に商品価値が高く虚偽の表示を排除しなければならないということと、傷みやすく取り扱いに注意しなければならないという、2つの特徴が背景となっている。

そのアイスクリーム類は、さらに「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」の3つに分類される。イメージとしては、アイスクリームはクリームを凍らせたもの、アイスミルクはミルクを凍らせたもの、ラクトアイスは乳製品が材料に含まれたものとなるが、製品中の乳固形分と乳脂肪分の比率によって分類されている。

牛乳や生クリームというのは食品原料としては高価なものの部類に入るので、アイスクリーム類の分類でも乳固形分と乳脂肪分の多さで、ラクトアイスよりはアイスミルクが、アイスミルクよりもアイスクリームが、いわゆる「原価がかかってる」として価値あるものとみなされてきた。

ところが、そうした価値基準を変えてしまう二段階の出来事が、1990年代のバブル崩壊後に起こった。

まず、94年に明治がラクトアイス「明治エッセル スーパーカップ超バニラ」(以下「明治エッセル」)を発売した。それまでカップタイプのバニラアイスの主流は150ミリリットル入りで100円だったが、この商品は200ミリリットル入りで一気に1.3倍の大容量ながら価格は同じく100円というもので、そのお値打ち感から大ヒットとなった。

カップの蓋も、かつては紙蓋がカップ内側に沈んでいるのが普通だったが、フィルムでシールした上でカップを外側から覆うタイプを採用。これは大容量で食べる分だけスクープして残りは保存するファミリータイプの商品では見られたが、1食分の商品では珍しかった。その狙いも、商品を大きく見せるためだったという。

このヒットを受けて、ほかのメーカーも同様の商品で追随したが、そこで困ったのがロッテだった。「明治エッセル」とこれに追随した各社の商品の多くは、原価を下げながらアイスクリームに近い風味・食感を出すために乳脂肪の代わりに植物性脂肪を採用したのだ。それでも乳製品を使う商品であることにかわりはない。

明治など乳業系のメーカーであれば、乳製品は量・価格ともに比較的自由に調達できるのだが、ロッテにとって乳製品はあくまで他社・他グループから仕入れるものであり、「明治エッセル」と同じタイプの商品を同じ価格で販売することは難しかった。

それに対してロッテが考えたことは、微細な氷の粒を混ぜ込んで独特の食感を出しながら増量し、乳固形分の比率を抑えることだった。しかし、ただそうするだけでは水増しと見なされるだけだ。そこでロッテは発想を転換し、乳固形分・乳脂肪分の多さ=こってりとした濃厚な味わいがアイスクリーム類の価値という従来の価値観に対して、爽=「すっきりとした味わい」を新しい価値として打ち出した。

現在でも、「明治エッセル」とロッテ「爽」はたいていの店で必ずそろえている人気商品だ。これらは、アイスクリーム類の価格、ボリューム、風味の出し方に新しい流れを作り、アイスクリーム類を多様化させたと言えるだろう。特に、氷のすっきり感を打ち出した「爽」は、猛暑でもおいしいアイスとして食べるシーンを増やしたと言える。

例年より長引いた今年の梅雨もようやく明けた。コロナ禍の外出自粛生活はさらに続くだろうが、アイスを食べて元気に乗り切りたい。

(香雪社 斎藤訓之)

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