powered by 大人のレストランガイド

塩とオイルの組み合わせにポイントがある

にぎりずしをしょうゆで食べると、シャリの甘味と酸味、魚介類のうまみや、しょうゆの香りが付加され、より濃厚で華やかな味わいになる。わさびを使えば辛味も加わり、おいしさの厚みや味わいの豊かさが一段と増す。一方で、ネタがしょうゆの味に覆われてしまい、魚の個性や繊細な味を感じることが難しくなる側面は否めない。

では、塩で食べる場合はどうだろうか。塩はしょうゆほど明確なうまみを付加することはない。しょうゆのようなアミノ酸由来のうまみ成分を含んでいないからである。磯の香りがする塩は一部にすぎず、基本的に香りもない。では、あえて塩を使うのはなぜか――。それは、塩が名脇役として素材が持つ性格を強調し、引き出す働きをするからである。同じマグロのすしでも、マグロに含まれるうまみや甘味を強調したり、鉄由来の酸味を強調したりする。使う塩を変えることで、マグロに隠された様々な性格の一つひとつにスポットライトが当たり、違った味わいが楽しめるというわけだ。

では、オイルの役割とは何だろう。すしには魚に本来含まれている脂以外の脂肪分がないため、全般にあっさりとした印象となる。酢飯に含まれる糖分と酸味、塩のしょっぱさ、ネタのうまみに、オイルという油脂分が加わることで、人間が本能的においしいと感じる「糖分、油脂分、塩分、うまみ」が含まれたすしに変身する。オイルにもさまざまな香りや辛味がある。オリーブオイルだけでも爽やかな風味のものから重い風味のものまでバラエティーに富む。オイルは油脂分以外にも香りの付加という点でもしっかり役割を果たすことになる。

複数の食材を組み合わせ、それに合わせた塩とオイルを付加すれば、素材本来の味を生かしながら、1貫のすしが1皿の料理に変わる。それこそがオイル寿しの魅力といえるだろう。

脂肪分の少ない従来のすしは、ワインとのマリアージュも難しかった。オイルを加えればワインの持つ酸味を受け止めることができ、ワインとの相性も向上する。

メールマガジン登録
大人のレストランガイド