弘兼 桜井会長の手法は失敗しない酒造り。手作りはよくて、大量生産はまずいというような、変な既成概念がまだありますが、そんなことはない。漫画で誤解を解いていきたいですね。

――弘兼さんは多くの経営者を取材されてきましたが、経営者としての桜井さんの魅力をどこに感じましたか。

「山口のうまい酒だとみなにすすめてきました。だけど最初は『獺祭』って読めなかったんですよね」と弘兼さん

弘兼 プライドを捨て、ほかのおいしいお酒を手本にしたということに驚きました。静岡の「開運」(掛川市の土井酒造場)とか「磯自慢」(焼津市の磯自慢酒造)とか。まず1回勉強して改良を加えていく。僕も最初は手塚治虫さんの漫画を完璧に模写しました。模写から始めて、少しずつ自分の個性を出していく。そこが似ていますよね。桜井会長はどん底もみています。大勝負もするし、早とちりもある。面白い人生ですよね。

――桜井さんの最大の失敗は何でしょう。

桜井 対外的には漫画にも出てくる地ビールレストランへの投資で大損したこと。でもね、ほんとうの失敗は酒蔵を継いだこと。こんな収益率の悪いビジネスをなぜやるのかなって思います。

弘兼 それを言ったら身も蓋もない。

――外食産業がコロナショックで打撃を受け酒業界にも多大な影響があります。これからの展開は。

桜井 2月に海外輸出が止まり国内の免税店がストップ。飲食店の休業で4月から5月はじめの売り上げは7割減となりましたが、5月末から中国で売れ行きが戻り、国内も立ち直ってきました。もっと広く世界で売れるお酒にするため、2021年末にはニューヨーク工場が竣工する予定です。酒米である山田錦をアメリカで生産し、そのコメを使った獺祭を現地で造ることも考えています。

弘兼 そのときはニューヨークに取材に行き、日本酒を海外で売る島耕作として登場させたいですね。ニューヨークで苦戦する物語とか。海外で伸びていく日本酒の物語は描き続けていきたいテーマです。

(聞き手は松本和佳)

「獺祭」の挑戦 山奥から世界へ

著者 : 弘兼憲史
出版 : サンマーク出版
価格 : 1,320円 (税込み)

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