――獺祭はデータを駆使しておいしさを追求してきました。これまでにない酒造りが誤解を招き、批判にさらされることも多かったと聞きました。

「フランス人に誤解されていることがくやしくて。この漫画でほんものの酒造りを伝えたい」と桜井さん

桜井 それが漫画化のきっかけでもありました。16年ほど前に獺祭をフランスで発売し、ロブションさんが「獺祭と恋に落ちた」とおっしゃるほど、現地で認めていただいた。初めて商業ベースで売れる日本酒ブランドになったわけですが、それを面白くないと思う人もいて、いろいろな問題が起こりました。特にこたえたのは、獺祭は大量生産だ、コンピューターで造っている、といわれたことでした。

フランスには食の工業化に対する反感があります。獺祭はこれだけ努力して技を磨いて手を掛けているのに、あたかも工業製品のように言われるのはつらかったです。とはいえ世界の食文化の中心であるフランスでおいしさを理解してもらえなければ先はない。そんな悩みを弘兼先生に打ち明けたところ漫画化の話をいただいた。漫画の情報伝達力はむちゃくちゃ高い。ぜひやりましょう、となりました。

弘兼 ほかの酒蔵さんにはやっかみと感謝の両方があるのではないでしょうか。日本中においしいお酒がたくさんあります。でも世界で一番有名な日本酒が獺祭。日本酒が世界で認められるきっかけをつくったのも獺祭です。それも漫画で知らせたいと思ったところなんです。

――業界のやっかみはもう影をひそめましたか。

桜井 いえいえ。今でも足を引っ張られることはありますし。相変わらずですよ。

弘兼 改革者はどうしてもたたかれますから。僕も、島耕作のようなサラリーマンをリアルに描いた漫画を最初に出し、中高年のラブストーリーの漫画(『黄昏流星群』)も最初に描いた。業界の常識にとらわれない、という点は共通しているかもしれません。

――旭酒造に続けとばかりに、データサイエンスを取り入れる酒蔵がありますよね。

桜井 そう、出てきましたね。うちの酒造りは手作りでもないし、機械化でもありません。藤井聡太棋聖じゃないですが、AI(人工知能)を相手に伸びてきました。出稼ぎではない社内杜氏を育て、データをいかに使いこなすかを考えてきました。そして大量生産といわれますが、ある程度の数量がないと酒の品質はよくならないのです。

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