この3つの要素はいずれもデジタル化がもたらす「取引コストの削減」という共通の要因によってもたらされる変化です。デフレーミングはすでに世界中で始まっている大きな変化の潮流をとらえる概念です。そこには、革新的な顧客体験を持つサービスを実現して利便性の高い社会を実現したり、個人個人が自らの能力や意思を存分に発揮できる社会へと導いたりできる可能性があります。

その一方で、課題も多くあります。分解と組み換えにより、既存の事業には大きな影響が出るため、業界の再編成等で仕事が大きく変わったり、業界構造が変わったりすることもあるでしょう。また、個人化が進む中で、収入の安定化・保障をどのように担保するか、個人のプライバシーをどのように守るかという点も重要です。

デジタル化がもたらす変化にどのように対応していくか、ビジネスと社会の両面から、考えていく必要があります。

アフターコロナの都市をデフレーミングから考える

新型コロナウイルスの感染拡大もあって、リモートワークが多くの職場で普及した現在、都市に住み、働くことの意義を問い直す動きが出ています。アフターコロナの世界において、都市はどのような役割を果たすのでしょうか。

リモートワークが普及する中、オフィスを解約する企業が出てきています。特に新興企業で動きが出ているようです。背景には大企業と比べて最先端のツールの導入が早いこと、セキュリティー対策が比較的フレキシブルであること、そしてオフィス賃料の負担がコストに占める割合が高いから、といった要因があると思われます。

気軽な立ち話などデフレーミングで置き換えにくいことにオフィスの価値を再考するヒントがある可能性も(写真はイメージ=PIXTA)

こうした中、混雑した都市部に住むのではなく、地方に移住してもよいのではないかと考える人も増えてきているようです。脱・大都市、脱オフィスのライフスタイルは確かに魅力的に思えますが、それでは、今後は都心に集積するメリットはなくなるのでしょうか。

日本では高度経済成長以来、都市部への人口集中が一貫して進んできました。しかし新型コロナによって急激にリモートワークが普及したことで、集積のメリットについて改めて議論する必要が出てきています。将来の都市がどのようになるかは、対面を置き換えるテクノロジーの進化、コロナ問題に起因するソーシャルディスタンスの期間、人々のリスク回避の度合いなど様々な変数に依存するため、すぐに答えを出すことは難しいですが、ここではデフレーミングの概念から少し考えてみたいと思います。

ビジネスパーソンがオフィスに出勤し、帰ってくるまでの生活を想定して、簡易的に分解してみると以下のようになります。

・オフィスの設備、資源を利用する(デスク、PC、プリンター、書類など)
・同僚と会う、相談する(気軽な相談・立ち話、会議、雑談など)
・取引先と会う、相談する(商談、相談、議論など)
・外食する(おいしい食事、雰囲気)
・買い物をする(実物を見て選ぶ、スタッフと相談、気分転換)
・エンターテインメントを楽しむ(音楽、演劇、映画、景色など)

これらを見ると、働きに行って帰ってくるまでの間にも、純粋に作業をするだけでなく、雑談や買い物、エンターテインメントなど様々な要素が含まれていることがわかります。これをリモート化するサービスの観点で組み替えると、以下のようにサービス化することができそうです。

(1)自宅設備の拡充(デスク、PC、プリンターなど)
(2)コンテンツのデジタル化(書類、音楽、演劇など)
(3)コミュニケーションのデジタル化(会議、商談、相談)
(4)「行く」から「来る」への変革(書籍、買い物、食事などのデリバリー)
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