先輩・同期に敬語を使われる漫才師・作家、山田ルイ53世さん

やまだるい53せい 1975年兵庫県生まれ。愛媛大学中退後に上京し、芸人の道へ。99年、ひぐち君と「髭男爵」結成。2018年には月刊誌連載の「一発屋芸人列伝」が「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞受賞。
やまだるい53せい 1975年兵庫県生まれ。愛媛大学中退後に上京し、芸人の道へ。99年、ひぐち君と「髭男爵」結成。2018年には月刊誌連載の「一発屋芸人列伝」が「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞受賞。

学生時代も社会人になってからも、先輩や同期から敬語を使われてしまいます。フランクに交流したいのに、相手との距離を感じます。尊大な態度を取らず、謙虚に接しているつもりですが……。(埼玉・30代・男性)

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ベンジャミン・バトンさながらの“老け顔”の持ち主なのか、内からにじみ出る徳の高さに、人々がひれ伏すのか。“フランクな交流”に憧れるも、同期や先輩からさえ敬語を使われてしまうとお嘆きの相談者。一つ引っ掛かるのは、「尊大にならぬよう、謙虚に接してきた」と仰る点でしょうか。よもやご自身が誰に対しても「敬語」だ、なんてことはないと信じますが、もしそうだとすると、「ああ、“そういうノリ”の人ね?」と周りは調子を合わせているだけ……「敬語」の正体は“山びこ”だったというオチになりかねない。いや、いずれにせよ、筆者は悪いことだとは思っていません。

「敬語」は、いわばボクシングのグローブ。お互いを不必要に傷付けぬための“社交ツール”です。漫画であれば、素手で殴り合っても、土手で夕日を眺めて和解成立ですが、現実にはそうもいかない。

大体、一見“和気あいあい”とした間柄でも、心の内までは分かりません。敬語以上によそよそしい気さくさというものもあるのです。

筆者が良い例かと。社交性が重視される芸人という仕事に就きながら、「今日は、○○さんと焼き肉!」とSNSに投稿するような、交友録はゼロ。“ざっくばらんな関係”など居心地が悪くむしろ負担に感じてしまう。そのくせ「この人、気さくだなー!」との印象を相手に与える技術だけは人一倍長けているから、ややこしい。

当然、「この後、一杯いきましょー!!」とお誘いを受けることも少なくありませんが、そうなると途端に“しんどく”なり、あれこれ言い訳して結局お断りしてしまう。先方からすれば、「いや、どういうこと!? さっきまであんなに……」と戸惑いしかない。“気さく”の弊害です。

幸い、同僚から疎まれているわけでもなさそうですし、職場の人間関係は“足湯”程度がベストだと筆者は思っていますが、どうしてもということであれば、「キャラ変」は慎重に。

“シルクハットを被った貴族の漫才師”……つまり筆者が、何の断りもなく、「俺は正統派だ!」とスーツ姿で舞台に上がれば、間違いなく客席(職場)は「変な空気」に包まれます。突然「気さく」になるというのは、それほどの「奇策」。……マジで気をつけた方がいいぜ!

[NIKKEIプラス1 2020年7月25日付]


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