「ヒマ」があるから酒量が増える

しかし、我々のような酒好きにとって、「飲むな」と言われても、それはもう蛇の生殺しでしかない。

先生、何かいい方法はないものでしょうか?

「お酒が好きな人にとって、お酒をやめることは難しいと思うので、まずは減らす方向で考えてみてはどうでしょう? いの一番にやることは、ヒマを作らないことです。ヒマな時間があると、ついたくさん飲んでしまいますから。散歩やヨガ、ドラマを見るなどして時間をつぶし、晩酌の時間を短くするだけでも違いますよ」(吉本さん)

なるほど。晩酌の前後に何か時間がつぶせる活動を入れることで、酒を飲む時間を減らすということか。吉本さんのアドバイスを受け、筆者も夕食後にウオーキングをすることにした。飲み過ぎるとウオーキングどころではなくなるので、自然と酒量が抑えられ、なかなかいい感じである。

「私の患者さんのなかには、お酒を飲む前にご飯を食べてお腹をいっぱいにするという方もいます。満腹だとお酒があまり入らなくなるそうです。またお酒を飲む際に水を飲むことも有効です。水でお腹が膨れるだけでなく、血中アルコール濃度も下げられますし、さらにはアルコールによる脱水も防ぐことができます」(吉本さん)

確かに、満腹のときはそんなにたくさん飲めなくなる。水同様、すぐに実践できそうだ。

“つながり”でアルコール依存症に陥るのを防ぐ

「この時期、注意してほしいのが“HALT”です。これはアルコール依存症をはじめとする依存症の分野で使われる言葉で、Hungry(空腹)、Angry(怒り)、Lonely(孤独)、Tired(疲労)の頭文字をとったもの。これらは、お酒を飲みたくなる因子のことなんですね。ガマンを強いられることが多く、人とのつながりを制限されるコロナ禍は、これらが重なりやすい状況にあります。それを避けるためにも、SNSなどで友人とゆるいつながりを持つようにしましょう」(吉本さん)

ああ、これは本当によく分かる。コロナの影響で仕事がどんどんキャンセルになり、落ち込んでいたとき、家族や仕事仲間からのLINEでどんなに救われたことか。もしこうしたつながりがなかったら、悔しさを紛らわすため、酒に走っていたかもしれない。

ほかには、Zoomなどのオンライン飲み会で、友人とつながるという方法も、コロナ禍で広まった。しかし吉本さんは「オンライン飲み会はほどほどに」と言う。

オンラインで飲み過ぎ注意!

オンライン飲み会は、終電の心配がないので、飲み過ぎてしまうという問題も。(c)satomi yokote-123RF

「緊急事態宣言のとき、政府が『飲み会はオンラインで』と言ったので、オンライン飲み会が一般的になりました。つながりを持つという点では非常にいいと思うのですが、何も飲み会にしなくてもいいんですよね。お酒抜きの“オンライン語らい”でいいのではないでしょうか?」(吉本さん)

確かに、オンライン飲み会をやると、終電を気にしなくていいので、だらだらと飲み続けてしまうという問題もある。酒を飲まなくても楽しくオンラインで語り合えばよいのだ。

日常が少しずつ戻ってきているとはいえ、以前と同じように外飲みを心底楽しめるようになるのはまだ先の話で、今しばらくは家飲みが中心になると予測される。酒量を一考し、家での飲み方を改善しよう。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト)

[日経Gooday2020年7月6日付記事を再構成]

吉本 尚さん
筑波大学医学医療系 地域総合診療医学 准教授/附属病院 総合診療科。2004年筑波大学医学専門学群(当時)卒業。北海道勤医協中央病院、岡山家庭医療センター、三重大学家庭医療学講座を経て、2014年から筑波大学で勤務。東日本大震災を契機に「WHO のアルコール関連問題のスクリーニングおよび介入に関する資料」を翻訳するなど、アルコール問題に本格的に取り組み始める。アルコール健康障害対策基本法推進ネットワークの幹事として、プライマリ・ケアを担当する立場からアルコール対策に関わる。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・家庭医療指導医。2014年10月、第3回「明日の象徴」医師部門を受賞。

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