1本でアルコール36gも! ストロング系チューハイに要注意

さらに吉本さんは、ストロング系チューハイをはじめとする、高アルコール濃度で口当たりがよい酒の危険性についても注意を促した。

「ストロング系チューハイはフルーツ系の甘さで口当たりがよく、お酒の弱い人でも飲めてしまう危険性を備えています。口当たりのよさでごまかされがちなのですが、アルコール度数9%で、500mLの場合は、アルコール量は36gにもなります。これ1本だけで、1日の適量といわれる20gをはるかに超えてしまいます」(吉本さん)

36g! ジュースのようにすいすい飲めるのに、そんなにアルコールが入っていたとは驚きである。

しかし「ビールに毛が生えた」くらいに考えている人も多く、知人はこれを備蓄し、週末になると5本空けると話していた。以前は違う酒を飲んでいたのだが、コロナ禍におけるお財布事情から、「安く酔える」ため酒を替えたのだという。

「安いお酒を大量に飲んで酔うのは非常に危険です。ストロング系チューハイ500mLを5本飲めば、アルコール度数15%のワインのフルボトル2本分のアルコール量になります。安いお酒に替えるのではなく、今まで飲んでいたものを、量を減らして飲むことをお勧めします」(吉本さん)

確かに、ストロング系チューハイは、プライベートブランドなら100円ちょっとで買えてしまう。「安く酔う」ことを目的とするのはかなり危険だ。

「沖縄のオリオンビールが2020年1月にストロング系チューハイの生産を終了したのをご存じでしょうか? 生産終了の時期はコロナ禍とは関係がないそうですが、今後は『健康志向に配慮した商品にシフトする流れ』だそうです。やはり、家飲みでストロング系チューハイを飲み過ぎてしまう危険性は認識してほしいですね」(吉本さん)

コロナ禍の精神不安でDVや離婚が急増

コロナ禍で酒量が増えたのは、家飲みが中心だっただけでなく、精神的な不安も原因だった。頭では飲み過ぎてはいけないと思っていても、不安をかき消すために酔って忘れようとしていた人もいるだろう。その気持ちは痛いほど分かるし、その不安はまだ続いている。

「前回もお伝えしましたが、酒量が増え、罪悪感を持って飲むようになると、アルコール依存症に陥る危険性が高くなります。もし今、少しでも罪悪感があるなら、それはアルコール依存症に近い状態にあると考えたほうがいい。コロナ禍では、先が見えない不安や閉塞感もあいまって、いつも以上にメンタルに負担がかかっています。多量飲酒を続けることで、不安障害、うつ、気分の落ち込みが表れやすいのです」(吉本さん)

また、今後もテレワークが推奨され、家にいる時間が長くなったことで、「家庭内の人間関係にも変化が表れている」と吉本さんは話す。

「メンタルが不安定なところに、家族が長い時間家にいることで、DVや離婚が増えていると聞いています。例えば、いつもならスルーできるオヤジギャグにイラッとしたり、ちょっとした言葉に反応してケンカになったり、ということがあるでしょう。熟年離婚といえば定年退職後の問題ですが、それがコロナによって前倒しになっているのかもしれません」(吉本さん)

実際、DVや離婚は世界規模で増えている。フランスにおいては、外出禁止令が出された3日後に、DV対策を打ち出している。日本でも、全国の「配偶者暴力相談支援センター」に寄せられたDVの相談は1万3272件(2020年4月)で、前年同月に比べて約3割増えた。また中国の陝西省西安市では、2020年3月2日に再開された市内の離婚手続きの窓口が、予約でいっぱいになったという。 

飲酒で肺炎リスクが上昇!?

そして吉本さんは、アフター・コロナの酒との付き合い方について考えるうえで、とても重要なことを教えてくれた。

「実は、お酒を多く飲む人ほど肺炎にかかるリスクが高いという研究があるのです。それによると、1985年から2017年に発表された14の論文のデータを統合して分析したところ、1日当たりのアルコール摂取量が10~20g増えるごとに、市中肺炎[注1]のリスクが8%上がることが分かったそうです(BMJ Open. 2018; 8(8): e022344.)。飲酒量が増えると免疫力が下がり、肺炎にかかりやすくなると考えられます」(吉本さん)

[注1]病院の外で日常生活を送っているときにかかる肺炎のこと。

アルコール摂取量と市中肺炎のリスク

1日当たりのアルコール摂取量が10~20g増えるごとに、市中肺炎のリスクが8%増加する。(出典:BMJ Open. 2018; 8(8): e022344.)

ひー! 免疫が下がって、肺炎のリスクが増えるって、これはもう、アフター・コロナの酒との付き合い方を全面的に見直さなければならないだろう。

「さらに、こういう論文もあります。肺炎などがきっかけとなって重度の呼吸不全をきたす病気のことを、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)というのですが、慢性的な高アルコール摂取は、ARDSのリスクを1.89倍に増加させることが分かりました(Chest. 2018;154(1):58-68.)。ARDSのリスクが高いということは、新型コロナウイルスに感染した場合に、急速に呼吸不全に陥るリスクも高いといえるかもしれません」(吉本さん)

飲酒量が増えると免疫力が下がり、肺炎のリスクが上昇するという研究結果がある。(c)alexlmx-123RF

なんと…。報道などから、新型コロナウイルス感染症では、急に症状が悪化し、あっという間に亡くなってしまう場合があるという印象を持っていたが、飲酒量が多くなると、そのリスクも高まる恐れがあるというのか…。

「アルコールによる免疫力の低下によって、感染症や全身性炎症を含む、さまざまな疾患のリスクを高めるという報告もあるので注意が必要です。もともとアルコールは、がんをはじめとする多くの病気に罹患するリスクを高めることが分かっています。コロナをきっかけに多量飲酒が習慣になってしまうと、今は大丈夫でも、やがて何らかの病気にかかってしまう恐れがあるのです」(吉本さん)

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