均整とれた姿に 地域の愛着深く

「郷土富士」「ふるさと富士」は400以上あるといわれる。今回選ばれた山々は、いずれも地域の人が特別な親しみを寄せている点でも「富士」の愛称を冠するにふさわしい名峰ぞろい。すべて火山である点も共通している。噴火と美しさは裏腹なのだ。

1位の羊蹄山と、2位の開聞岳はともに10人の専門家が選び、3位以下を引き離した。日本のほぼ中央に富士山がそびえ、南北の両端に郷土富士の代表格が位置する構図は興味深い。

フィリピン政府観光省

郷土富士は海外にもある。「世界の『富士山』」の著書がある田代博さんによるとその数は54。代表格はフィリピン・ルソン島のマヨン山=写真=だ。完璧な円すい形で、日本からの移民は「ルソン富士」と呼んだ。均整のとれた雄大な山に富士を重ねる郷愁は、異国の地ではとりわけ強かったに違いない。

■ランキングの見方 山の正式名称と○○富士の名前(所在地)。数字は専門家の評価(点数)の総計。(1)標高(2)情報サイト。写真は1、2、3、4位が佐藤孝三氏、5位(岩木山)はofficeたけぐみ代表竹浪正顕氏提供、5位(岩手山)浦田晃之介、10位大久保潤撮影。7位会津若松市、8位利尻町観光協会、9位日光市観光協会提供。マヨン山はフィリピン政府観光省提供。

■調査の方法 「○○富士」の別称がある全国の山から専門家の協力で27をリスト化。(1)富士山のように雄大で均整のとれたフォトジェニックな姿(2)周囲の環境を含めた観光地としての魅力--の観点で11人の専門家に1~10位まで選んでもらい、編集部で集計した。

■今週の専門家 ▽王麗華(いこーよ)▽小塩稲之(日本観光文化協会会長)▽小林政能(月刊「地図中心」編集長)▽佐藤孝三(山岳写真家)▽城市奈那(観光Reデザイン編集部)▽田代博(富士山遠望鑑定士)▽千葉達朗(日本火山学会副会長)▽萩原浩司(「山と渓谷社」特別編集主幹)▽服部文祥(登山家・作家、「岳人」編集部)▽森順子(地理女net代表)▽横倉和子(日本旅行総研研究員)=敬称略、五十音順

(大久保潤)

[NIKKEIプラス1 2020年7月25日付]