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生態系まとめるヨーロッパハムスター 30年で絶滅か

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ナショナルジオグラフィック日本版

丸いほお、辺りを探る小さな足、人間の手のひらにちょうど収まるふわふわの体。家畜化されたハムスターは、人気の高いペットだ。しかし、ヨーロッパやアジア、中東の一部に野生のハムスターが26種もいることは、あまり知られていない。どの種も皆愛らしいが、必ずしも人懐こいとは限らない。

例えば、ヨーロッパハムスター(Cricetus cricetus、クロハラハムスターとも)は攻撃的で、人が触ろうとすると飛びついて噛みつく、とウクライナのキエフ動物園の研究者ミハイル・ルーシン氏は言う。「飼育下で生まれた個体でも、成長したら人には懐きません」

このように凶暴でも、体重450グラムほどのヨーロッパハムスターは、気候変動や農業、光害などの脅威に対して非常に弱い。おそらくそのせいで、野生では数が減っており、国際自然保護連合(IUCN)は2020年7月9日にヨーロッパハムスターを近絶滅種(critically endangered)に指定した。

ヨーロッパハムスターは、かつてはヨーロッパおよび西アジア全域の草原で見られたが、その生息域は劇的に縮小してしまった。フランスの生息地は94%も失われ、今やアルザス地方を残すのみとなった。また、東欧(特にウクライナとロシア)でも75%以上減少した。IUCNによれば、何の対策も取らなければ、ヨーロッパハムスターは30年以内に絶滅するという。

非常に危機的な状況を受け、今回の指定を決めたメンバーの1人であるルーシン氏は、新たな保護活動に拍車がかかるとみる。同氏らのチームは、すでに行動を起こしており、今週、飼育下で育てられた11匹のヨーロッパハムスターをウクライナのホティン国立公園に再導入した。ウクライナでは、史上初の試みだ。

ヨーロッパハムスターの保護が重要なのは、アカギツネの仲間からユーラシアワシミミズクのような大型鳥類まで、多くの捕食者にとって彼らが極めて重要な獲物としての「中枢種」だからだ。中枢種とは、生物量が少ないにもかかわらず、生息域に多大な影響を与え、生態系を1つにまとめる種をさす。

「この種を失うと、現在の生態系が崩壊する危険があります」とルーシン氏は話す。ひいては、人間社会にも害が及ぶかもしれない。人は、食料や水、その他の資源を生態系に依存している。「自然とは関係がないと考える人もいますが、そうではないのです」

また、ヨーロッパハムスターが絶滅すれば、世界からまた少し色が失われることになる、と同氏は付け加える。その黒い腹、白のまだら模様、栗色の背中によって、ヨーロッパハムスターは「おそらくヨーロッパで最も美しいげっ歯類の1つ」だと言えるのだという。

複合するさまざまな脅威

ヨーロッパハムスターは、速いサイクルで生きるように進化した。妊娠期間はわずか18日、寿命も短く、およそ2年だ。とりわけこの100年ほどで、繁殖率と寿命が大幅に低下した。20世紀のほとんどの期間で、メスが1年に産む子どもの数は平均で20匹だったが、今では5~6匹だ。さらに、現在の平均寿命は約2年だが、かつてはその3倍はあった。

低下の理由は、わかっていない。だが、1つの作物のみ(通常は小麦かトウモロコシ)を栽培する単一栽培の拡大をはじめ、様々な要因が組み合わさった結果である可能性が高い。

草原性のハムスターは、主に農地で暮らし、農作物を食べている。しかし、トウモロコシか小麦だけでは栄養が不足し、タンパク質欠乏症やビタミンB3欠乏症などの健康上の問題を引き起こす可能性がある。例えば、ビタミンB3が不足すると、母親の子殺しなどの異常行動につながることがある、と話すのは、フランスの国立科学研究センターおよびストラスブール大学の生態生理学者キャロライン・ハボルド氏だ。

また、母親のハムスターが小麦だけを食べ、母乳にタンパク質が不足すると、子どもの発育を妨げる可能性がある。さらに、農家が作物を収穫すれば、ハムスターは突然食料を奪われることになる上、捕食者に対してより無防備になる。

地球の気候変動により、冬が暖かくなって雨が増えたこともマイナス要素だ。ハムスターは、冬には1.8メートルを超える深さの穴を掘って冬眠する。降り積もった雪が断熱材の役割を果たし、暖かい穴の中で体を寄せ合って丸くなり、ぬくぬくと冬を過ごすのだ。この雪の毛布がなければ、死に直結するような寒さや雨などにさらされるようになる。

ハボルド氏が共著者として発表した、フランスのアルザス地方でのある研究では、トウモロコシの栽培と冬の降雨量の増加といった要素が合わさり、1937年以降、ハムスターの体重が最大21%も減少した可能性が示唆された。体重の減少は、生殖能力の低下にも関係する。

ハムスターが減った要因として、もう1つあり得るのは光害だ。これが、ハムスターの概日リズム(約24時間周期の生体リズム)を乱しているのかもしれない。例えば、冬眠中のハムスターは、昼の長さを頼りに、巣穴から出る時期を判断する。だが、人工の光源が、その境界をますます曖昧にしている可能性がある、と言うのは、ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの医療心理学者ステファニー・モネッケ氏だ。

光害や気候変動がヨーロッパハムスターに及ぼす影響は、「すべて仮説にすぎないが、あらゆることがその傾向を示している」と同氏は強調する。

ハムスターを野生に帰す

幸い、ヨーロッパハムスターは飼育下でもよく繁殖する、とルーシン氏は言う。ベルギー、フランス、ポーランド、ドイツ、ウクライナなどで繁殖プログラムが実施されている。

同氏によれば、難しいのは再導入だ。野生に適応しておらず、捕食者に簡単に捕まってしまうからだ。新たな生息地の周りにフェンスやネットを設置することで、数カ月間保護しながら順応させることができるという。

ハボルド氏がアルザスで行なったように、一部の科学者は、農家と協力して、ハムスターに優しい農地を作ろうとしている。例えば、小さな区画では、主要作物と、ハムスターにとってより健康的な別の作物(タンパク質が豊富な大豆など)の混合栽培ができ、農家は区画の空いている所で、ヒマワリやアルファルファ、ナタネなど、様々な作物を育てられる。また、ハボルド氏は、耕作や農薬の頻度を減らすことを農家に勧めている。

全体として見れば、作物の多様性が、農地や周辺の生態系の健康にとって有益だというメッセージを、同氏は広めている。植物の種類が多いほど、花粉媒介者など、より多くの種類の野生生物を支えられるからだ。

「農地や農業の慣行を改善し、生物多様性を回復させることを、世界全体で考えるべきなのです」と同氏は話す。「ハムスターは、ほんの一例にすぎません」

絶滅したリョコウバトとの類似点

少なくともフランスでは、保護活動を行っても、生息数を横ばいにするのが精一杯で、増加に転じさせることはできなかった。だからこそ、IUCNの決定は極めて重要だ、とハボルド氏は言う。

今回、ハムスターの危険度が上がったことで、特に気がかりな繁殖障害に関する研究資金が増やされるかもしれない。

「例えば、リョコウバトは、史上最多の数を誇る鳥でしたが、わずか100年で絶滅してしまいました」と同氏は語る。「問題は、もう繁殖できなかった点にありました。これは、今のハムスターの状況に酷似しています。あまりに多くの点が、似ているのです」

(文 CHRISTINE DELL'AMORE、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年7月21日付]

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