野田和弘さん(10年地学五輪「金」)

野田和弘さん(本人提供)

野田和弘(のだ・かずひろ)さんは、天文や気象、地質などがテーマとなる地学五輪の日本初代金メダリスト。広島学院高校3年だった10年のインドネシア大会に出場した。東大から東大大学院に進み天文学を専攻。17年に修士号(理学)を取得した。「(地学五輪で)見聞きしたものへの興味がきっかけとなり、大学や大学院での研究につながった」という。現在は日立製作所の研究開発グループで「流体解析を生かした機械関係の研究開発」に取り組んでいる。

野田さんにとっての科学は「楽しみ」。「生きている中での疑問を解決していくことは、パズルを解くのに似た楽しさがある」。尊敬するのはドイツの天文学者、ヨハネス・ケプラー(1571~1630)。「現代のような道具もない時代に、不遇なときも地道に研究を続け、現代にも残る成果を残した」ことに驚く。愛読書「嫌われる勇気」では「人生の意味は、あなたが自分自身に与えるものだ」との一節が好きだ。

勉強に行き詰まったときは「席から立ちあがって歩きながら考えると、頭の中が整理される気がする」と、頭のために体を動かすことの効用を説く。過去の自分にアドバイスを送るなら「勉強や部活以外にも、世の中には面白いことが多くあるように感じる。気になったことはとりあえずやってみたほうが後悔しない」と伝える。若者が自分の可能性をせばめないための第1法則かもしれない。

平賀美沙さん(13年地理五輪「銅」)

平賀美沙さん(本人提供)

平賀美沙(ひらが・みさ)さんは、地形図や写真、グラフなどから情報を読み取り、分析する力が問われる地理五輪の銅メダリスト。桜蔭高校3年だった13年、日本初開催となった京都大会に出場した。生徒自身が英語の出題に英語で解答することが義務づけらた地理五輪は、引率者による翻訳が認められる他の分野に比べ、英語圏以外の代表にとってハードルが高い。暗記科目と思われがちな地理だが「(五輪挑戦で)手持ちの知識と現地での発見を組み合わせて総合的に考える力を鍛えられた。国際的な視野も広がった」という。

平賀さんは18年に東大工学部を卒業し、20年3月に東大大学院の社会基盤学専攻で修士号(工学)を取得。総合建設会社に入社し、技術部の新人として一歩を踏み出したばかりだ。

江戸期に全国を測量した伊能忠敬(1745~1818)を尊敬するのは「測量や地図の功績に加え、高齢になってからも学び続ける姿勢」があったから。医学部出身で「壁」「砂の女」などの作品で知られる作家、安部公房(1924~93)は「独特な世界観に没入できるのが魅力」だ。

大学では「受験の学力が高い人だけでなく、いろいろな分野で優秀な人がたくさんいる」と感じた。そのこともあって過去の自分には「あまり大学受験のことなど心配しすぎず、もっと好きなことを突き詰めて学んでほしかった」という。同じような悩みを抱えている今の高校生へのメッセージでもある。

林杏果さん(14年化学五輪「銅」)

林杏果さん(本人提供)

林杏果(はやし・きょうか)さんは豊島岡女子学園高校3年だった14年、化学五輪ベトナム大会で銅メダルに輝いた。20年春に早稲田大学先進理工学部を卒業し、京大大学院工学研究科に進学。専攻は合成・生物化学だ。化学以外の分野にも学びが広がるにつれ「別々の学問だと思っていたもの同士がつながっていくことが、学問の楽しさだと気づいた」と喜び、今は「学問の垣根をなくしていくことが科学を豊かな世界にする鍵だ」と考えている。

「日本の女性科学者の先駆的存在」として米沢富美子(1938~2019)にひかれる。自伝「まず歩きだそう 女性物理学者として生きる」を子どものころに読み、心を動かされた。「まだまだ女性の少ない科学の世界で、自分も逆境を感じることがしばしばある。そのようなとき、偉大な先輩がどのように世界を見ていたか、非常に参考になる」という。

学習法については「自分の学びやすい形で始めることが長く続ける秘訣ではないか」と指摘。解説が自分の頭に入りやすい本や専門家を、早い段階で見つけることを勧める。かつての自分に向け「他人によく教えられる・伝えられることこそが学びのゴール」と、的確なアウトプットを意識することを求めた言葉には、科学の面白さを人と分かち合うことへの希望も込められているようだ。

(天野豊文)

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次回から科学の学びを文化・スポーツ・ビジネスなど、さまざまな世界で生かしているサイエンスアスリートたちのインタビューをお届けします。


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